第四話 自己紹介
会場となったイタリアンレストランの店内は、壁際に白い布を掛けた長テーブルが置かれ、その上に小分けされた数種類の料理やデザートの類が目を楽しませるように並べられていた。また、その横には各種の飲み物も用意されているのが見て取れた。
店の中央には、四人掛けのテーブルが五卓配置され、バイキング形式となっていた。
中沢さんがクリスマスパーティの始まりを告げると、自然に男性と女性とに分かれて向かい合うように立ったまま一列に並んだ。
初めに、中沢さんが参加している男性陣について進んだ大学は違うが、同じ高校の出身者だと紹介した後、自己紹介をした。
それだけで念入りに着飾った女性たちの期待が膨らんだ気配が、離れた場所に立っていた私にも伝わってきた。
それから、女性側の代表者として由実さんが挨拶を済ませた後、自己紹介をし、その後は男女交互に自己紹介をしていった。
そんな中、他の男性たちよりも身長が高く職業はモデルだと言っても誰も疑わないほど容姿の整った、隣り合わせに立っていた二人の男性が自己紹介をすると、先程の女性たちから軽いざわめきが起こった。
一人は、名前が森山達樹。年齢は二十八歳。地名と同じ名前の日本でトップクラスの国立大学出身。職業は弁護士。
もう一人は、名前が新井尚哉。年齢と出身大学は達樹さんと同じで、職業は四葉環境株式会社の本社営業マン。
四葉環境株式会社は日本を代表する大企業の一つで、世界中で水に関する事業を展開していた。日本国内だけではなく世界各地に支社を有し、創業以来、利益の額に幅はあるものの黒字を出し続けている企業としても有名で、優良企業としてその名を馳せていた。
私は二人の自己紹介を聞き、自分とは次元の異なる『異次元の住人』のように感じられ、どこか冷めた思いで聞き流していた。