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第三十七話 突飛な告白

 幸いにもお盆休み明けから十月の初め頃まで、海外の支社へ研修に行く予定になっていた俺は、美咲を置き去りにしてから一度も接触することなく本社から離れることができた。


海外の支社では樫山専務と美咲の動向を気にする必要もなく、美咲との忌まわしい出来事を思い出す回数も少しずつ減っていった。


そうして、心の平静を取り戻すのと同時に、俺を悩まし続けた記憶も遠いものとなりつつあった。




 だが、気持ちを立て直し予定通りに帰国した次の日、美咲から連絡が入った。


大事な話があると言われて呼び出された俺は、もう二度とかかわりたくないと美咲を忌避きひする気持ちが強く最初は断った。


しかし、俺が会いに行かないのなら美咲の方からマンション『ベルフラワー』の自宅を訪ねると言われ、俺は仕方なく美咲が指定した創作料理を提供してくれるレストランへ出向いた。




 俺がレストランに到着した時には、美咲はすでに席に着いて俺を待っていた。


レストランの従業員に美咲の待つテーブルへ案内され、美咲の姿が視界に入った途端、嫌悪感が込み上げこの場に来たことを後悔しそうになった。




俺はできるだけ急いで用事を済ませてしまおうと密かに決意し、美咲に挨拶をして従業員に案内された美咲の正面の席に腰を下ろした。


俺が席に落ち着いたのを見計らったように料理が運ばれて来たが、俺は仕事があるからと断りを入れコーヒーだけを持って来てくれるように頼んだ。




「相変わらず、女性の気持ちが分からないようね。これからは、少しずつでも理解できるように努めてちょうだい」


俺の態度が気に障ったらしい美咲がそれを隠そうともせず、表情に表したまま小言を言ってきたが、可能な限り美咲とは関わるつもりがなかった俺はそれを無視して本題に入った。




「それで、話というのは……」


「私、妊娠したの。あなたの子よ」


美咲は一度俺を見た後、運ばれて来た料理を口にしながら何でもないことのように告げた。




俺には美咲が何を言ったのか理解できなかった。


だが、頭の中では『ガンガン』と耳障りな音が鳴り響いていた。




「……どういうことでしょうか」


「言葉の通りよ。私たちが愛し合った結果、子供ができた。自然の成り行きでしょ。おかしなことなど何もないわ」




当たり前のことだと言い放った美咲の言葉は、俺には到底、受け入れられるものではなかった。


「何を言っているのか、私には理解できないのですが……」




俺には美咲と愛し合った記憶など微塵みじんもなく、それ以前に、これまで美咲に対して好意の類の感情を持ち合わせたことさえ一度としてないというのに、自然の成り行きなど美咲との間で起こるはずもなかった。


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