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第三十二話 記念日

今週もよろしくお願いします。


この回からは梨奈の視点になります。

 今日は十二月二十五日。クリスマスの日。


二年前の今日、尚哉と私は恋人同士になった。


クリスマスの日は、私たちにとって大事な記念日でもあった。




 去年のクリスマスの日には、尚哉と二人でクリスマス用のケーキにろうそくを一本だけ立てて、クリスマスと一周年のお祝いをした。


今年もまた、ろうそくの数を一本増やし、クリスマス用のケーキに二本のろうそくを立てて、クリスマスと二周年のお祝いをしようというのが尚哉と私の約束事。




 尚哉とは相変わらず連絡がつかなかったけれど、尚哉にとっても大事な記念日の今日はきっと帰って来てくれる。


気を抜くと悪いことばかりが思い浮かび、頭の中に不安だけが詰め込まれ頭がどうにかなってしまいそうだった。




 だけど、特別な日の今日だけは、今日という日の記念日だけは尚哉も忘れずに帰って来ると信じて、私は尚哉の好きなものを中心に献立を考え心づくしのご馳走を作った。




いつも食事をする時に使っているテーブルには緑色のテーブルクロスを掛け、テーブルの真ん中に白いレースで作られた小さめのテーブルセンターを置き、その上に淡いピンク色のバラの花を数本生けた花瓶を飾った。


それから、尚哉と私の席には赤い地色に金糸で格子模様を織り込んだランチョンマットも敷いた。




出来上がった料理も綺麗に盛り付け、テーブルの上に並べて準備を整えた。


冷蔵庫の中ではシャンパンと尚哉の好きな銘柄のワインも冷え、いつでも飲める状態になっていた。


そして、今夜の主役とも言えるクリスマス用にデコレーションされたケーキも忘れずに用意した。


後は、尚哉が帰って来てくれれば完璧だった。




 私は、マグカップにコーヒーを淹れてリビングのソファに移動した。


ソファに座り両手でマグカップを持ち、コーヒーを飲みながら帰って来た尚哉がすっかり準備の整えられている様子を見て驚いている姿を想像していると、自然と楽しい気分になった。


「早く、帰って来ないかなぁ……」


思わず言葉が口から零れ落ちて、壁に掛けてあった時計に視線を走らせた。




 その時計はからくり時計と呼ばれている物で、一から十二の数字の外側に小窓を設けてあって、その小窓の中には十二種類の愛嬌のある動物たちが隠れていた。


時計の短針がそれぞれの数字を指し、長針が十二の数字と重なると短針が指している数字の小窓が開き、中から隠れていた動物が姿を現していろんな動きを見せてくれた。


それと同時に、それぞれの時間に割り当てられた異なるメロディが動物の動きに合わせて奏でられ、時刻を教えてくれるすぐれもので私のお気に入りの一品だった。




 その時計は、去年のクリスマスにいつも仕事で帰りが遅い尚哉が、部屋の中で独りで過ごすことの多い私が、少しでも楽しめるようにとプレゼントしてくれた物だった。


そのことをうちに遊びに来た真衣に話して聞かせると、呆れ混じりに冷やかされた。


「毎度毎度のことだけど、胸焼けしそうなくらい、ベタベタに愛されているのねぇ」




 その時のことを思い出しながら時計を見ていると、『カタッ』と音がして九の数字の小窓が開いた。


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