第三十一話 夢うつつ
今回のお話の中間部分に、性的内容のものが出てきます。
前回同様、直接的な表現は用いず、抽象的な表現にとどめているためR15の表示はしていませんが、苦手な方はご注意ください。
「……や。……おや。……なおや。……尚哉」
深い眠りについていた俺を、梨奈が呼んでいる。
“……りな……”
僅かに浮上した意識を、強い睡魔が刈り取ろうとする。
「……尚哉……」
悲しそうな梨奈の呼び掛けに、再び眠りの中に引きずり込まれそうになっていた俺は、睡魔に抗い瞼を持ち上げて梨奈を探した。
見つけた梨奈は、俺から少し距離を置いたところにいて、見る見るうちにその目から涙を溢れ出させた。
「梨奈。どうした」
慌てた俺は、梨奈に声を掛けようとしたが、喉に声が張り付き言葉を発することができなかった。
その間も梨奈の涙は流れ続け、はらはらと零れ落ちていた。
そんな梨奈の姿など今まで一度も見たことがなかった俺は、急いで梨奈を抱き留めなければと身体を動かそうとした。
だが、その場に縫い止められたように指一本動かせなかった。
“俺は、いったいどうしたんだ”
と梨奈に目を向けたが、梨奈は忽然と消え失せていた。
得体の知れない不安が胸の内に沸き上がり、とにかく自分の状態を確かめなければと良く回らない頭で考え始めた時、耳元で荒い息遣いが繰り返され、耳たぶを熱い吐息が掠めた感覚があった。
不安に混乱が交じり合い、自分の身体に意識を向けると下腹部の上に何かが載っている重みと、腰を両脇から押さえ付けられている感じがした。
しかも、どうしたことか身体の中心に熱が集まり、屹立しているものが柔らかなものに隙間なく覆われ擦れているようだった。
混乱に拍車がかかり、俺は回転の鈍い頭を無理やり働かせ、何故こんな状況に自分が陥っているのか直前の自分の行動を思い出そうとした。
美咲に連れられてホテルのバーへ行くと、夜景が良く見える美咲のお気に入りらしいボックス席に座らせられた。
隣に座った美咲が、当然のようにしなだれかかってきたのを見た俺は、一刻も早く美咲を送り届けなければと美咲が興ざめするように美咲の身体を押し返し、席を立ってトイレへ向かった。
戻って来た俺は、美咲と向かい合うように席に着き、アルコールを勧めた美咲に車の運転があるからと断りを入れ、テーブルの上に置かれたウーロン茶を飲みながら美咲の話に相槌を打っていた。
それから幾らもしないうちに、突然、強烈な眠気に襲われ意識が途切れた。
その後、どうなったのか思い出そうと懸命に頭を働かせていると、俺の胸を撫で上げる感触が剥き出しの素肌に直接伝わり、その湿った感触に悪寒が走り身体がビクッと震えた。
それを合図に俺を覆っていたものがきつく締まり、俺の大事なものを搾り取ろうとでもするように扱くような動きに変わった。
そして、それと同時に俺の名前を呼ぶ美咲の声が聞こえた。
「尚哉さん……」
その声に、夢と現実の狭間にいた俺は一気に覚醒した。
目を開けて見てみると、肌をさらした美咲が俺の上に乗っていた。
それを認識した途端、身体に力が漲り俺は美咲を払い除けた。
美咲は呆然として俺を見ていたが、俺には美咲にかまっていられるだけの余裕はなくふらつく身体に喝を入れ、床に散乱していた衣服を拾い集めて身繕いを始めた。
「ここを出て行くことは、できないわ」
思うように動かない手足にイラつきながら、何とか身支度を終えた俺の耳に美咲の声が聞こえ視線だけを向けると、バスローブを身に纏った美咲が出口へと続く場所に立っていた。
「二人の夜を、存分に楽しみましょう」
一分一秒でも早くこの場から去らなければと焦りながら、よろよろと出口を目指して歩き出した俺に媚びるような笑みを浮かべ、俺に見せ付けるようにバスローブを留めてあった紐をゆっくり解き美咲は俺を誘った。
そんな美咲の様子に、沸々と怒りが沸いた。
「どけっ」
怒りの感情をぶつけるように怒鳴りつけた俺に、美咲は気圧され後ずさりながら道を開けた。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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来週も楽しんで読んでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします。




