第三話 会場
この物語は、すべてフィクションです。
登場する人物・団体等は架空のものです。
クリスマスパーティは、小さなイタリアンレストランを借り切って行われた。
主催者は、真衣が勤めている会社の取引先の中沢という若手男性社員だった。
真衣は大学を卒業後、営業職を希望し、主に輸入化粧品を扱う会社に就職した。
仕事の内容は既存の取引先に対するサポートのようだったが、社交的で面倒見が良い上に目鼻立ちがはっきりしていてお化粧をすると艶やかさが増す真衣は、取引先の評判も上々で自社の先輩社員にも可愛がられていた。
中沢さんは進学校として有名な私立の高校を卒業後、同系列の大学へ進み今の会社へ就職したとのことだった。
働き始めてみると、仕事の都合で自社以外の女性と知り合う機会になかなか恵まれなかったため、クリスマスに乗じてパーティを企画し、参加する男性陣を揃えたと聞かされていた。
女性の参加者は中沢さんから話を持ち掛けられた真衣の職場の先輩で、賑やかなことが大好きな由実さんが中心になって集められていた。
由実さんとは、真衣と一緒に何度か食事をして楽しい時間を過ごしていた。そこで、今回のクリスマスパーティへの参加も真衣を通して声を掛けられたのだった。
クリスマスパーティは金曜日の夜に行われたため、私は仕事を終えた後、真衣と待ち合わせをして一緒に会場に入った。
「みんな、気合が入ってるわねぇ」
会場となったイタリアンレストランに初めて入った私は、店内の様子に気を取られ、特に電飾と可愛いオーナメントを飾り付けて入口の近くに置いてあったクリスマスツリーに見入っていると、真衣が感心したように話しかけてきた。
誰のことを言っているのかと思い、真衣が見ていた視線の先に目をやると、そこには仕事帰りとは思えないくらいに着飾った女性の一団がいた。
私は、思わず場違いな所へ来てしまったように感じ、気後れしそうになっていた。