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第二十一話 データ消失

「何を、している」




頭が何かを考えるより先に、身体が動いていた。


大股で美咲に歩み寄り声を掛けると、一瞬、肩がビクッと震え手が止まったが、美咲は何事もなかったかのように無言のまま再び携帯電話を操作し始めた。




「何をしていると、聞いている」




樫山専務のお嬢様ということで、初めのうちは美咲に対しても敬語を使って話していたのだか、美咲の厚顔無恥こうがんむちな振る舞いにいつしか敬語を使うことを止めてしまっていた俺は、口調を強めてもう一度美咲に問い掛けた。




「あなたも失礼な人ね。私を選んでおきながら、捨てた女のことを今も引きっているなんて」


一瞬だけ目線を上げて俺を見た美咲はすぐに手元の携帯電話に視線を落とし、指を動かして携帯電話の操作を続けながら言葉を返した。




美咲の言葉に嫌な想像が頭に浮かび、俺は慌てて美咲の手から携帯電話を取り上げた。


驚いた美咲が顔を上げ携帯電話を握り締めて見下ろす俺の目と目が合うと、俺の心中の焦りを見透みすかすように口の端を持ち上げて冷笑した。




美咲の表情に嫌な想像が俺の中で確信へと変わりはやる気持ちに後押しされて携帯電話を操作し、電話の送信履歴、受信履歴、メールの送信トレイ、受信トレイと次々に表示させていった。




だが、そこにあるはずの梨奈とやり取りをした記録が一件もなかった。


俺は歯噛はがみしながら急いでアドレス帳を呼び出し登録してあった梨奈の情報を探したが、そこからも梨奈の情報は消え失せていた。




「尚哉さん。あなたにとって本当に必要なのは、この私よ。何の役にも立たない女を、いつまでも抱え込んでいてはあなたの為にならないわ」




美咲の言い分を聞いてハッとした俺は画像を呼び出し梨奈の写真を探したが、ただの一枚も残されていなかった。




“くそっ”


俺の目の前で美咲が堂々と梨奈に関する情報を次々と消去し続けていたのだと悟り、感情のたがが弾け飛びそうになった。




『尚哉』


“梨奈……”


その時、聞こえるはずのない梨奈が俺を呼ぶ声が聞こえ俺は我に返った。


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