第十九話 思わぬ提案
この回の冒頭部分に性的内容のものが出てきます。
直接的な表現はなく抽象的な表現を用いているため、R15の表示はしていませんが、苦手な方は冒頭部分を読み飛ばしてください。
徐々に深まっていく口づけに身体が熱を帯び始め、慈しむように素肌に触れる尚哉の手に心が震えた。
気が付くと、身に着けていた衣服をすべて剥ぎ取られ、部屋の隅に置いてあったベッドに横たえられていた。
「愛している」
下着まで取り去った尚哉とお互いを確かめ合うように肌を絡ませ、幾度となく『愛している』と囁かれる毎に、収まりきれない尚哉への思いが溢れ出た。
全身、余すところなく尚哉の印を刻まれ、熱で昂ぶった尚哉を迎え入れた瞬間、幸せすぎて涙が零れそうになった。
尚哉は終始、私を気遣い、猛々しい熱を放つ時でさえ私の様子を気に掛けていた。
「なあ、梨奈。俺と一緒に住まないか」
「……一緒に、……住むの」
一時の激情が去り、尚哉の胸に抱かれてまどろむ私の髪を指で梳いていた尚哉からの突然の提案に、胸から頬を離し尚哉の顔を見ようとした私を、尚哉は柔らかく抱き込んでできた隙間を埋めた。
「もう、会えないのを我慢するのは嫌なんだ。俺は、梨奈の温もりを感じられない冷たい毎日を過ごすのは、もう限界なんだ」
「……尚哉……」
尚哉の告白は、私にとってこの上もなく嬉しいものだった。
私たちはその日の内に不動産屋さんに足を運び、尚哉も私も気に入った十階建ての賃貸マンション『ベルフラワー』の七階の角部屋を借りる契約を済ませた。
『今、どこにいるの』
もう、何通目になるか覚えてさえいないメールを尚哉に送る。たぶん、このメールも届かないのだろう。
尚哉が帰って来なくなって五日も過ぎると、私は居ても立ってもいられなくなって尚哉の携帯電話に電話を入れた。
でも、電話はつながらなかった。
時間をおいて二度三度と掛け直してみても結果は同じだった。
つながらない電話に嫌な胸騒ぎがしてメールを送ってみたものの、尚哉には届いていないみたいだった。
何が起こっているのかさっぱり分からず、頭に浮かぶのは出掛けたきり帰って来なくなった日の前日、七日の夜の尚哉が何か言い掛けて止めた時の様子だった。
あの時、尚哉は私に何かを伝えようとしていた。けれど、迷った末に口を閉ざしてしまった。
“いったい、何を話そうとしていたのだろう……”
帰って来なくなって、今日で一週間。
どんなに思い返してみても『なぜ』『どうして』という言葉だけが、ぐるぐると頭の中を駆け巡るだけだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
初めてづくしの一ヶ月でしたが、たくさんの方に読んでもらえて嬉しく思っています。また、ブックマーク登録をしてくれた方もいたようで、本当にありがとうございます。
今月の投稿は今日で最後になります。
来月からは毎週月曜日から木曜日まで毎日投稿し、週末はお休みする予定です。
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