表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/312

第十八話 気晴らし

 尚哉を愛しているとはっきり自覚した私は、なかなか会えないこともあってあれこれと考えるようになった。


常に前を向き頑張っている尚哉の隣に立つ自分の姿を想像し、今の自分では足りないのではないかと思い至り、尚哉に対して恥ずかしくない自分でありたいと強く願うようになっていた。




 そこで、私は子供の頃から母に仕込まれて、今では一通りできる料理について専門的に学んでみようと思い立ち、それぞれの食材の持つ効能やカロリー計算の方法などを勉強し始めた。


そうすることで、いつか、仕事に追われていつも忙しい尚哉の役に立てるのではないかという密かな期待もあった。




だけど、尚哉に対する思いが深まれば深まるほど、会えない寂しさはつのっていった。


それでも、会えないながらも私を大切に思ってくれている尚哉とのつながりを断ち切りたくはなくて、気をまぎらわす方法を考えていると記憶の底にあった水泳が思い浮かんだ。




 私がまだ小学校に入ったばかりの頃、管理栄養士の資格を持つ母が地元のカルチャースクールの料理教室に講師として勤めるようになり、『大人の付き合い』で私はカルチャースクールの教室の一つであるキッズスイミングスクールに入会させられた。


通ってみると楽しくて、年齢制限ぎりぎりの中学校を卒業するまで通い通した。


そのことを思い出し、尚哉に相談すると尚哉が入会しているスポーツジムを紹介してくれ、私はそこのプールへ通うことにした。




 尚哉となかなか思うように会えないことをずっと心配してくれていた真衣にも、スポーツジムに入会して気晴らししようと思っていることを伝えたら、真衣も一緒に入会してくれた。


真衣はその頃、仕事で新規の顧客の開拓もし始めていたけれど、既存の顧客からの評判が良い真衣は順調に成績を伸ばしていた。


それにもかかわらず、仕事で溜まったストレスを発散するためと口にして、尚哉に会えない寂しさを紛らわせようとプールに通い詰めていた私に付き合ってくれていた。




そうして、真衣の協力もあって尚哉の忙しい時期を何とか乗り切った私は、ようやく落ち着いて会えるようになった尚哉からのリクエストで手料理を食べてもらうことにした。




 約束の日、途中で食材を買い揃え、お昼前に尚哉が一人で住んでいたワンルームマンションを訪ねた私の手を引いて、尚哉は部屋の中に置いてあったカウチに座らせた。


隣に座った尚哉に言葉もなく見つめられると、私はそれだけで胸がいっぱいになってしまった。


どちらからともなく顔を寄せ合った尚哉と私は、お互いに不足していたものを満たそうとするように何度も唇を重ね合わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ