第十二話 説得
クリスマスパーティは、12月24日のクリスマスイヴに催される実質的にはクリスマスパーティと銘打った合コンだった。
俺は年の瀬も押し詰まった時期に、のんびりと遊んでいる気分にはなれず返事を渋っていた。
「なあ、尚哉。お前が仕事をこよなく愛していることは、俺も良く分かっている。だがな、どんなに愛したところで、仕事はお前に抱かれてはくれないだろう。あんまり御無沙汰ばかりして、いざとなった時、がっつきすぎて三分で終わってみろ。男としての面目が丸潰れだぞ」
「……いや、三分は、ないだろう……」
渋る俺をその気にさせようと、きつい冗談交じりに説得をしてくる達樹に、俺は弱々しく反論しながら頭の中では別のことを考えていた。
その日の朝、俺は直属の上司である佐伯課長から休暇を取るようにと注意を受けていた。
プロジェクトチームのメンバーとなった春頃から、俺は深夜までの残業は当然のこと、休日も返上で出勤することが多くなっていた。
営業という仕事柄、それまでにも休日と出張が重なったり、取引先への対応に出勤したりすることはあったのだが、その分の代休は消化できていた。しかし、今年は代休を消化することができず溜まる一方だった。
そのため、総務部の方から佐伯課長に対し、年内中に溜まりに溜まった代休のいくらかでも消費させるようにとの要望が上がってきたらしい。
「新井。仕事熱心なのはいいがな、熱心すぎるのも考え物だぞ。思い切ってクリスマスに休みを取って、心身ともにスッキリしてきたらどうだ。お前なら、その辺に立っているだけで女が放っておかないだろう」
佐伯課長から冗談とも本気とも取れない話をされた俺は、それでも休むことは考えられず、『考えておきます』と返事をしてその場を離れた。
だが、身近な二人に同じようなことを言われ
“今の俺には、休むことも必要なのかもしれないな”
と思い直した俺は、佐伯課長の言葉に甘えることにした。
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