第0話 ─ プロローグ
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
滋賀のガバガババイばあちゃんこと、まさこ(117歳)には野望がある。
それは、小説家デビューを果たし、ベストセラー作家となり、日本で、いや、世界中で自分の書いたものが、自分の死後も読まれ続ける……というものだ。直ぐ目の前にある避け得ることが出来ない自分の死に対しての、最後の抵抗。世界に対する、爪あと残しである。
しかし、ガバガババイばあちゃんは知っている。
例え世界で1番面白い小説が書けたとしても、ベストセラー作家はおろか、デビュー出来る可能性さえも恐ろしく低いということを。人気商売というものは、まずたくさんの人に触れてもらわなければ、人気を博しようが無いのである。
そこで、ガバガババイばあちゃんが目をつけたのが、数年前から読者として利用しているweb小説サイトである。最近、ここからの書籍化が数多くなされており、波に乗っていることに加え、彼女には1つのアイデアがあった。
ポイントは、このサイトの特徴である画面の見難さにある。
このサイトの運営は、更新するたびに、とにかく、ひたすら画面を見難くする。邪魔でしょうがない機能をつける。十中八九、少し前のG00GLEを手本としているのだろう。そういった嫌がらせを徹底して行うことによって、日々話題を提供しているのだ。
この見難さを、ユーザーCSSにより解消する。そして、真に役立つ機能をつける。それを投稿することにより、自分の名前を売り、後に本命の小説の投稿に移る。運営がこのままダウングレードをし続けることを考えれば、そのたびにCSSはランキングに浮上し、結果、本命小説の方も人の目に止まることが多くなる。
まさに完璧な計画だとガバガババイばあちゃんはダビルピースしながら高笑いした。
さっそくガバガババイばあちゃんは作成に取り掛かった。付ける機能は既に決まっている。
旧0peraのウィンドウ幅で表示。
ようするに、拡大縮小に伴う自動改行機能だ。
ctrl+マウスホイール上下等の操作により、自分が読みやすいように表示を簡単に調整できる。勿論、作者が入力した改行に影響を与えることは無い非常に優れた機能といえる。
これに加え、余計なものを消したり、動かなくしたりすれば快適な読書が約束されることとなる。
ガバガババイばあちゃん = 旧0peraユーザー = 情弱にとってcssを書くことは困難を極めたが、そこはエクステンションなどないころから使用していた生粋の旧0peraユーザー。検索しながらなんとか書き上げ、ジャンルをその他にし、短編として投稿。
翌日、以前のものを消さずにちょくちょく直せるように、連載へ移行し、短編を消去。
このような気遣いが自分をベストセラー作家へと押し上げる。舌を唇の横から出し、横ピースをしながらのガバガババイばあちゃんの高笑いが、夜空の風の上で腰を振った。
翌日、意気揚々とログインしたガバガババイばあちゃんは、画面を見て、今まで味わったどのソーセージよりもカチンコチンポに硬直した。
投稿した文章が消えている。そして運営からメールが2通送られてきている。
それらのメールを要約すると
1通目(短編に対して)
小説でもなければエッセイでもないので消せ。後、お前のようなババアがweb小説なんて読むか。プロフィール直しとけ。期日までにやんなきゃ垢バンな。
2通目(連載に対して)
警告したのにまたやりやがったな悪質ユーザーめ!とりあえずお前が送ってきた糞みたいな文字列は削除な、垢消すぞマジで、カスが!
自分の存在に対する否定と、実質の1発削除によりガバガババイばあちゃんはの心は激情と消沈の狭間に挟まれ2本挿し状態だ。もう何も考えられない。分けがわからない。「もう何も考えられないぃぃぃいい」状態だ。分けがわからない。
ガバガババイばあちゃんは、気を落ち着かせて、なんとか脳のメモリーを捻出しようと試みる。……確かに。確かにユーザーcssは小説でもエッセイでもなんでもない。ユーザーcssだ。
0peraに掛けて、ハーレム無し、チート無し、擬人化有りなどとタグ付けして、上手いこと言った気になっていた自分がやたらと恥ずかしい……。
でも、「でも」という単語が口をついて出るのを止められない。「その他」ジャンルに挿入れてくれても、と考えずにはいられない。それでもなお、運営に逆らえないということは分かっている。とりあえず、プロフィールを泣く泣く17歳に変えようとして気づく。この年齢では18禁の小説をお気に入りにしている自分はまずいこととなる。そして、ことは単純ではなく、アカウント作成時から逆算せねばならなくなり……。
面倒くさい。
なにもかも。
もう27で良い。カブだし。ついでに性別も男にしようかと思ったが、未選択があるのでそれにしておく。もしかしてあのメールは117歳の女などこの世に存在しない。つまり、"お前は女ではなくただの汚らしい老人だ!"という意図によるものかもしれない。だとすれば27歳の女も、女ではなく中年だとされ、今度こそ垢バンされる危険性がある。ここの運営は、十中八九、ザキミヤ監督を手本としている。
何もかも信じられなくなり、ガバガババイばあちゃんは目の前が真っ暗になった。決して、彼女が自分の股間を凝視しているのではない。
気を落ち着けようと、田舎を舞台にした癒し系アニメのDVDをセットしながら、ガバガババイばあちゃんは、内に篭もった。マンクロクロ女出て行かない。
……どれだけそうしていただろうか。どこからか歩き出せといった内容の歌が聞こえる。ガバガババイばあちゃんはやっと現実に帰ってきた。おそらく2時間ほどだ。
多少なりとも冷静になった頭で考える。 「こんなの書いてみた」という1文を添えて、エッセイとして投稿すれば良いだろうか……。普通に削除され、垢バンされそうなパルメザン臭がまんまんだ。
このサイトの運営の素晴しさは、二次小説の廃止時に嫌というほど理解している。
そもそも、どんなものを書いたとしても、向こうが、小説でも、エッセイでもないと見做したならば、それは正しいのだ。世界はいつだって強者達が輪姦しており、その彼らが、白といえば、コクジン・ティンポーだろうと白いのだ。香港映画のDVDをセットしながら、ガバガババイばあちゃんは打ちひしがれた。
……どれだけそう(略)。おそらく2時間ほどだ。
2本ずつ短い紐でつながれた4本のバイブ、及びディルドーを振り回しながら、ガバガババイばあちゃんは考える。下手なことをすれば即効で垢バンである。思いでもろとも容赦なく消されてしまうだろう。
ここの運営は、十中八九、アメリカン黒ねずみを手本にしている。DVDは持っていない。
もう自分には、亀のように縮こまって生きるすべしか残されていないのだ……。
悲観にくれたガバガババイばあちゃんは目の前が(略)。決して彼女が自分の乳首を(略)。
そのように、闇にとらわれている彼女の頭脳に突如、衝撃が走る。
チンは無くとも常にビンビン。
縮こまり、皮に篭もった真性-HO-KAYな生き方が、OKなはずがない。
そんな、逃げる気マンマンな年のとり方はしてこなかった。いつだって挿れる気チンチンで生きてきたじゃないか。
また衝撃が走る。股に走ったのではない。
チンは無くとも二刀流。
ヤラれるのではない。ヤルのだ。
相手が男であろうと、女であろうと、いつだって攻めて、攻めて、攻めて、時に甘え、その甘美を十分にマンキツキツし、相手を油断させた所で、やはり攻めに転じ、汗汁垂らし、ガバガバになるまでアソコすり切らし、すり減らし……そして、今のバイまさこという存在があるのだ。
ここで受けに回るわけにはいかない。そんなことをするぐらいならカンボジア人になって、陸上でもやっていた方がマシだ。
決意を新たにしたガバガババイばあちゃんは、顎を突き出した鬼気迫る表情で、本命の小説である「乳首転生~ぼっちが異世界でポッチに~」の第1章──「隣にいつも君がいる悦び」の推敲を終え、更に、第2章──「新たな仲間、体育会系少女クリトリちゃん」の執筆に入った。新キャラの口癖は語尾に"っス"だ。当然である。
今なら最高の小説を書ける。そして、全てはそこからだと、ガバガババイばあちゃんは、ほぼ徹夜で第2章を書き終えた。
明けて翌日、ガバガババイばあちゃんは床にふせっていた。そして、彼女はもう2度と起き上がれることはないと確信していた。精神へ受けた攻撃は、肉体に行き着く。今次の運営による対応は、自分の年老いた体にとっては、致命傷となったようだと、ガバガババイばあちゃんは一人嘆き、涙した。
ガバガババイばあちゃんは考える。
何人もの人間を、老若男女、見境無くヤってきた。返り汁でべっとりと染まったこの身が、天国へと導かれることは無いだろう。
そう思いつつも、彼女は諦めない。
彼女は、もう、攻めることを止めようとしたりはしないのだ。文字通り死ぬまで。
気力を振り絞り、武器へと手を伸ばす。昨夜、映画を見た後に振り回し、そのまま枕元に放置された4本のバイブとディルドーへと。
"このまま地獄へ落ちてなるものか……。"
ガバガババイばあちゃんの最後の戦いが始まった。
15分後。
ガバガババイばあちゃん、まさこ(旧年27歳)(仮)。───────昇天。
第0.5話(都合により省略)
ヌンチャク失敗による頭部への複数回の打撃により、ロケンローな死に方をしたガバガババイばあちゃんは無事に天国に行った。ついでに天国でもイった。
そこで神様に、ある世界が醜い雲影というものによって見難くされているので何とかしてくれと頼まれて、CSS(栗取りスペシャルスペルマ法)という呪文を習って、その異世界(みんな長寿)に、27歳男としてTSショタ転生して、火に包まれ見難くされている狐に出会って、それに向かって、いざ呪文を唱えようとして、次回へ