松ばあと聖一の自我崩壊まで!? 3
洗面所で歯磨きしたので俺と松ばあが部屋に戻ろうとしていた。俺は松ばあが部屋ではない場所に向かっているみたいなので不思議に思う。
「あれ? マツばあの部屋あっちだけど……? また物忘れ?」
俺はマツばあに指を進行方向へ向けて教えてあげた。
「寝る前のトイレじゃ!」
恥ずかしそうにマツばあが答える。
「?? さっきも行っていたのに?」
行ったばかりなのにと俺は謎に思う。
「~~っ」
マツばあが不服そうな表情をした。
「もうっ、年を取ると近くなるんじゃよ!」
「……あー……」
言わせるんじゃないといった感じでマツばあがそっぽを向く。
「もうその程度の老婆ステータスじゃ動じないって!」
俺は爽やかな笑顔で部屋に入る直前に『おやすみ』の挨拶をした。
(老婆ステータス?)
挨拶を返したマツばあが疑問に思ったのは言うまでもない。
◇
マツばあが聖一の親所有の家にやって来た次の日、マツばあがスズメの鳴く早朝から俺を誘いにやってくる。
「せーいちっ、起きなさい。一緒にラジオ体操するぞーっ!」
俺はまだ寒い日が続いているので寝床に転がったまま、わがままを言った。
「まだ布団から出たくない……けど! マツばあの体操姿は見たい!!」
「見たい!?」
俺が言った言葉をあまり気にしないようにしてマツばあがラジオ体操のラジカセスイッチを入れる。
「わかっとらんのー、せーいちは……いつまでも若く健康でいるにはラジオ体操が一番なんじゃぞ!」
マツばあのセリフを聞いた俺は真剣な表情をして生つばを飲み込んだ。
“成程……! だからこんなに若く……っ!!”
「何じゃ? 真面目な顔して」
せっかくマツばあがラジオ体操に誘ってくれたのだが、俺は眠気に勝てず二度寝してしまっていた。
「しかしせーいちの部屋は汚いのぅ……」
寝てしまった聖一を起こしてしまっては悪いのでマツばあはまず部屋の様子を見る。
散らかっていた机や床のゴミを片付けて簡単に机を拭いてあげたりするマツばあ、ベッドの下もキレイにしてあげた。
「ベッドの下の本もまとめて……と!」
思春期の少年なら誰もが隠し持っているであろう雑誌。それを、マツばあは机の上に置いた。聖一の読んでいるのは特殊だが。
「この片づいた状態を見たらせーいち、驚くじゃろうな!」
喜ぶ姿を想像しながマツばあは部屋を後にした。その日の朝、まず彼は絶叫したという。
◇
そんなことのあった朝、俺は母親に朝の挨拶をしてから少しビクビクした挙動でマツばあがどこにいるか聞く。
「えっと……マツばあは……?」
「おじいちゃんに挨拶ですって」
仏壇のある部屋にいると聞いた俺、母親に「朝の日課らしいからあんたも行ってきたら?」と言われたのでふすまを開けた。
「あのー……マツばあ……」
「それでなじいさん」
俺のじいさんにマツばあが良い報告をしているので聞いていて照れくさい。
「せーいちも良い子でのぅ。流石わしらの孫じゃろう」
俺が声をかけるタイミングを図っていると―――
「それからじいさんに似て一回りくらい年下の子が好きみたいじゃ、ベッドの下にそんな本が沢山」
その報告が聞き捨てならなかった俺はふすまを強く開けた。
「その話くわしく!!」
しかし……ラジオ体操だけで若すぎるように見えるはずもなく。
男性なら勝手に掃除されて、あれな本発掘で恥ずかしい思いをするって経験してもおかしくない(そういう本は見つけても黙っていてあげるのが優しさw)