アンリアル
学校の課題で描きました。お題がクリスマス、もしくはお正月なのですが、あんまり関係してません。
僕は小説を開いていた。クリスマス、近づいています。 ますます寒くなる気温、朝の鈍光、吐く息は白く、ホームにいるまだらの人々はコートのポケットに手を突っ込み、つっけんどん、身を縮めていた。小説の主人公も僕と同じように電車を待っていた。僕は小説を読み進める。電車はホームに到着し、巻き込む風でぼくを一層、さめざめとさむざむとさせた。電子音とともにドアが開く。広がる温風は外に逃げ、降車する人の背中を押すようだった。それに逆らい、ぼくは乗車、空いている車両の席、他人の領土を侵さぬようワンスペース余分に。気持ちは手狭に。席に座る。ドア閉まります、ご注意下さい。電子音、一度バウンドし、ドアが完全に閉まる。揺れる電車、浮かれる高校生。クリスマスの予定は野郎だけで過ごすだろうと笑い合っている三人組。ぼくは小説を読み進める。読みながらも、意識は時々、リアルへそれる。隣に座っている二十歳前後の女性は毛糸でマフラーを編んでいる。彼女が誰のために編んでいるか、容易に想像できる。横目にそれを確認して、ぼくは小説に戻る。言葉のリズムは心地よく僕の脳内を貫通する。ひょいと顔をあげると、もう五つも駅を通過した。まだマフラーは完成していない。停車していると乗ってきたのは、ほらあ、電車だよ、と子連れの夫婦。中吊り広告は週刊誌の目玉記事の宣伝をし、座れぬ人々の注目を一瞬、かすめとる。再び、小説に目を落とす。視界の端で吊り革を持つ人が、お疲れなのか、操り人形のように不安定な動きでお休み中である。不安になりながらも読み進めていく。東京に近づく旅、駅に停車する度に、乗車人数は増えていく平日朝の電車。コートの中はスーツ姿の人が大半で、終点上野では全員が降りて行った。ワンテンポ遅れてぼくも降車。
僕はまだホームに取り残されていた。