離婚の話
離婚とかなんやの話。
両親は俺が物心ついた時から既にあまりいい関係を築けていなかった
(元かららしいが)
小学生のときには離婚の話しもあった。
ある日母は俺と姉を部屋に呼び
「これからお父さんが離婚しても良いかってきくと思うから、良いって答えなさい」
そう指示した。
俺は、やっぱりかと思う反面、ドラマみたいだなと少し笑ってしまった。
その直後、父親にリビングに呼ばれた。
もちろん姉も一緒だ。
「…離婚、してもいいか?
………パパが居なくなっても、……いいか?」
父親の言葉に、姉は言葉に詰まったのか俯いたきり顔をあげない。
だから
俺が答えた。
「いいよ、離婚しても全然構わない」
自分でも驚くくらいすんなりと出てきた言葉は、父親の瞳から涙を流させた。
今まで恐ろしいと思っていた父の顔が、一瞬にして情けない、弱々しいものへと変わった。
父親が泣いたのを見たのは、俺も姉もその一度きりだった。
感極まったのか、姉も泣き出した。
俺も、泣きそうではあった。
泣くのを堪えて、顔をあげると、姉と一緒に、父に抱き締められた。
抱き締められたのなんて下手したら初めてかもな
なんてことを考えながら、抱き返すことだけは絶対にしなかった。
次の日、父親は荷物をまとめ、家を出ていった。
母親にはもう離婚したと告げられ、父親が好きなら父親の元へ行ってもいいと言われた。
俺は、母親の所に残った。
どちらも同じくらい嫌いで
でも、
大切なのは母親だったから。
父親がいなくても特に変わったことはなかった。
あえて言うなら夕飯のとき、箸や灰皿が飛んでくることがなくなり、怒鳴り声と重苦しい空気が、3分の2ほど減った程度。
もとからあまり家にいなかったせいかおかげか、寂しいとはあまり思わなかった。
だから、父親が出ていったその日から、普通に学校に行って
いじめっ子たちと友達ごっこをして。
なにも変わらない日常をすごした。
しかし、
数週間後、父親は帰ってきた
母親が、父親のあまりの哀れさに、離婚を取り消しにしたのだとか。
意気揚々と帰ってきた父親が優しかったのは、2、3日程度のことだった
また、静かで恐ろしい夕飯が訪れるようになった。
母は、時々言う。
あの時しっかり離婚しておけばよかった と。
そして語る
父親の悪いところや、長年溜まってきた愚痴を。
そうして俺は父親を憎むふりをすることにした。
それが母が父のことを語る捌け口になるのなら。
俺があの人を憎めば憎むほど、母はあの人を庇う。
そうして、あの人は思い出していっている
結婚する前の、愛と言うものが存在した父の姿を。
最近、母は父のよかった所を弟に話している。
弟たちが父親を知るのに、いい話をされていてよかった。
悪い父親の姿なんて、知っても悲しいだけだからね。




