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2話目 

あれ。話が進まないぞ?

 さて。白衣を脱いで部屋を出た僕は全部のエレベータの前にシャッターが閉まってるのを見ながら、トイレのほうに歩き出した。

ついでに今の自分の服装をチェック。

一応自分の目でもおかしい所が無いか確認しないと。それが例え自分がずれた常識しか持ってないとしても。まあ今さら気づいても、彼女を連れずに部屋に戻ったら負けの気がするけど。

自覚しているだけましだろうし。すぐリカバリできるようなものは歩きながら治せるだろうし。

常に前向き。それが僕。嘘。暇つぶし兼心を落ち着かせるため自分と会話しながら歩く。

「XXX~」

とりあえずヘッドセットは付けっぱなしだった。まあいいか。

「XXX~!!!」

ぶるぶるぶる ヘッドセットが振動する。そういえばXXXって僕の名前か。

「うるさい」

「返事しないからです。そもそもこのヘッドセットは」

「ある程度の音量を超えるとそのぶんをヘッドセットが震えることで代弁してくれるんだろ?」

「です。だからうるさくありませんし、XXXの鼓膜が破れることもありません」

「何、今のってそんな大音量で叫んだの」

「まあ…ほらつけてなかったらXXXの席周辺が揺れてヘッドセットつけてないって事になりますし(ストレス解消にもなりますし)」

「なるほど。で?」

「で、とは?」

「いや、呼んだ意味」

「ああ、彼女に会いに行くんですよね?」

「そうだな。面倒だな」

「どこにいるかわかってます?」

「トイレでしょ?」

よし腕時計はついてる。下は青いGパン。もっと下は靴下にスニーカー。上は青いデニム生地のGジャン。

変な格好ではないがちょっと年相応の格好ではない。それくらいの常識はある。ん?


「女性用のトイレ?」

「入った所だけで、中にカメラついてませんが」

「窓から出てるとかは?」

「ここ一応3階ですよ?ロックしてありますけど」

「じゃあまだそこにいるね」

「そうですね、「女性用」のトイレにいますね」

「なぜそこを強調する」

「だってXXXは男性ですよ?」

「そうだね、僕は男性ですね」

「男性が女性用トイレに入るっていうのはですね」

「うん」

「変態ってことですよ?」

「わお。いや入らんけど」

それはそうだ。っていうかこいつは堂々と入るとでも思ってたのか?だがよく考えたら出てくるのをただ待つのも虚しい。

「さてどうするかねワトスン君」

「そうですねここはホームズあなたが突入するしかないですね」

「僕が突入した場合どうなる?」

「もちろん私がこの建物全てのスピーカーでそのことを喋ります」

「よし、却下だ」

さーてどうしようかねー。こうした掛け合いをしながら僕は考えている。

「こういうのはどうだろう。まずスプリンクラーをだな」

「それの始末はもちろんXXXが一人で?」

「じゃあ却下」

「誰にやらせるつもりだったんですか?」

「アリス、君しかいないだろう」

「え?廊下にスプリンクラー?」

「ごめんなさい」

とかやってるうちに実はトイレ前だったりする。

「わかった。ここは無難な案でいこうかな」

「えー。そんなチキンだったんですか、見損ないました」

「まだ何も言ってないのに?!」

「とりあえずそのチキンな案を聞いてあげます」

「はぁー。まずは僕のパソコンに入ってる書類に目を通す」

「誰が?」

「君が」

「何の?」

「今井可奈とやらの人事ファイル」

「最初のうちに目を通しておけばいいのに…それで?」

「そこには連絡先が書いてあるはずだな?」

「はあ、まあ」

「それには携帯も含まれてる。つまり僕はここから会話という平和的解決の糸口をだな」

「無理です」

「……何で」

「知らなかったんですか?彼女、携帯電話持ってません」

「知るわけないでしょ」

「目を通さないからこういうことになるんですよ?」

「ぐう」

甘かった。僕の見通しが。いや色々と。


 僕はトイレ入り口の横の壁に寄りかかった。本当はベンチを置いておきたかったのだがトイレの前でくつろがれると嫌だということで今は休憩室に移されてた。あると便利だと思うんだけどなぁ。

「さて、どーっすかね」

喋ってたかと思ったらいつの間にか僕はトイレに引きずりこまれてた。

女性用の。

ごめんなさい。なんで出会うまでにこんなにかかるんだろう。

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