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魔女が帰る森  作者: 月森みのり


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1/1

魔女と少年の出会い

やがて二つの影は、誰も知らない森の奥へ消えていくーーー

 朝露をまとった森は、まだ眠っているように静かだった。

 木々の梢から差し込む光が細い帯となって地面へ落ち、濡れた苔をきらきらと照らしている。


「こっちだ」


 父が肩越しに振り返る。

 束ねた薪を背負い、右手には長年使い込まれた斧が握られていた。

 アッシュは慌てて駆け寄る。


「待ってよ、父さん」


「森は急がない者に道を教えてくれる。慌てると転ぶぞ」


 父は笑って、アッシュの頭をぽんと叩いた。

 その手は大きく、ごつごつとしていて、樹皮のように硬かった。

 木こりとして毎日斧を握り、木を切り、薪を運ぶ。

 アッシュはその手が好きだった。


 森の奥へ進むと、父は一本の木の前で立ち止まる。


「この木は……まだ切らないでおこう」


「どうして?」


「まだ若い。あと何十年も生きられる」


 父は別の木へ歩いていく。


「森は宝箱じゃない。借り物なんだ。必要な分だけいただいて、また返す」


 これは父の口癖で、アッシュはもう何度も聞かされていた。


 木々の影から、鹿が一頭、こちらを見ていた。

 父は斧を肩へ担ぎ、鹿へ小さく会釈する。

 鹿は逃げることなく、しばらく父を見つめると、静かに森の奥へ消えていった。

 アッシュは不思議そうに笑う。


「父さん、鹿とも話せるの?」


「話せないさ」


 父は照れくさそうに笑った。

 その笑顔を見て、アッシュも笑う。


 二人しかいない森の暮らしは、決して裕福ではなかった。

 けれど森は広く、一日とて同じ日はない。


 その日も、いつもと変わらない一日になるはずだった。


 梢がざわり、と揺れた。

 風が冷たい。

 空を見上げると、厚い雲が、山の向こうから音もなく押し寄せてきていた。


「……帰るぞ、アッシュ」


 父の声が少しだけ低くなる。

 まだ昼だというのに、周囲は夕暮れのように薄暗い。

 

 やがて、頬に冷たい雫が落ちた。

 その一滴を合図にしたように、雨は一気に降り始めた。

 森が、轟音に包まれる。



 雨は、瞬く間に森の音を塗りつぶした。

 木々を打つ音。

 葉を裂く音。

 地面を叩く音。

 そのすべてが重なり合い、まるで空そのものが崩れ落ちてくるようだった。


「走るぞ!」


 父がアッシュの手を強く握り、二人は来た道を引き返す。

 雨は目を開けていられないほど激しく、足元は瞬く間にぬかるみへ変わっていく。

 いつも歩き慣れた森が、まるで別の場所になっていた。

 枝が折れ、風に舞い、木々が大きくうなり声を上げる。


 背後で、どこか大きなものが砕ける音が響いた。

 振り返ると、一本の大木が根ごと倒れていた。


「父さん……!」


「前だけ見ろ!」


 父はアッシュの肩を押す。

 木々の向こうに、小さく小屋が見えた。


 ゴォォォォッ――。


 地の底から響くような轟音が森を揺らした。

 父が立ち止まり、息を呑む。


「まずい……!」


 山肌から、濁流が押し寄せてきていた。

 木も岩も土も飲み込みながら、巨大な濁った波となって森を駆け下りてくる。


 父はアッシュを抱え上げると、一気に駆け出した。

 泥が跳ね、息が切れる。

 轟音は、すぐ背後まで迫っていた。


 木々の間を抜け、小屋がはっきりと見えた。


「もう少しだ……!」


 小屋の中まではあと数十歩程度、というところで、足元が崩れた。

 父の身体が大きく傾く。

 瞬く間に、濁流が二人を飲み込んだ。


 アッシュは何度も水の中で回転し、上下もわからなくなる。

 流木が肩を打ち、岩が足をかすめる。


「アッシュ!」


 水面の向こうに、父の手が見えた。

 伸ばされた大きな手に、アッシュも必死に手を伸ばす。


 指先が触れそうになった、その時。

 再び激流が二人を引き裂いた。


「──父さん!!」


 叫びは濁流に飲まれ、届くことはなかった。

 流木に叩きつけられた衝撃で、意識が遠のいていく。

 



 濁流の唸りと、傷ついた森を吹き抜ける風の音が入り混じる。

 その中を、澄んだ鈴のような音が響く。


 ちりん――。

 ちりん――。


 高い空を、黒いローブの人影が飛んでいた。

 裾を風になびかせ、長い箒に腰掛けている。


 その胸元に下げられた二つの聖具が風に揺れて触れ合い、鈴のような音を鳴らしていた。


 魔女は荒れ果てた森を見渡し、静かに目を伏せる。

 ローブの袖から白い指先が伸びた。

 薬指にはめられた銀の指輪が、淡く光を宿す。

 そして、ゆっくりと空へ手をかざした。

 指輪の輝きは細い光となって空へ昇り、厚く垂れ込めた雲へ吸い込まれていく。


 次の瞬間、雲が大きく波打った。

 渦を巻くように裂け目が広がり、灰色の空に青がのぞく。

 やがて激しく降り続いていた雨は、糸を断たれたように止んだ。


 魔女は箒を降ろし、森を見渡す。

 地面には倒木が折り重なり、土砂が谷を埋め、森の至るところに災害の爪痕が残っていた。


 かすかな鳴き声が聞こえた。

 泥に埋もれた野兎。

 折れた枝に羽を挟まれた小鳥。

 濁流から逃げ遅れた子鹿。

 魔女は一匹ずつ、その傍らへ膝をつく。


 倒木へ手をかざせば、それは音もなく脇へ退き、土砂は生き物を避けるように静かに崩れていく。

 小鳥の裂けた皮膚に指先が触れると、淡い光が傷を包み、ゆっくりと塞がっていった。

 やがて小鳥は、小さく羽を震わせる。

 魔女は何も言わず、そっと手を差し出した。

 小鳥はその指先へ一度だけ止まり、すぐに青空へ飛び立っていく。

 その姿を見送り、魔女も再び立ち上がった。


 不意に、下流の方から、流木が岩へぶつかる鈍い音が響いた。

 魔女は顔を上げる。


 一本の大木が濁流に流され、遠ざかっていくのが見える。

 その幹に、小さな人影がしがみついていた。

 今にも力尽き、濁流へ飲み込まれそうになっている。


 魔女はすぐさま箒に腰掛け、飛び上がる。

 黒いローブが風をはらみ、音もなく川へ向かって駆けた。


 濁流はなお激しく、折れた木々を巻き込みながら森を走っている。

 魔女は箒を川面すれすれまで降ろす。

 流木にしがみつく少年は、濡れた指先が少しずつ滑り、今にも離れそうだった。


 静かに右手を差し出すと、薬指の指輪が淡く輝く。

 その光は細い糸となって川面を走り、流木へ絡みついた。

 激しく流されていた流木が、目には見えない手で支えられたように速度を緩める。


 箒を寄せ、少年の体を抱き寄せた。

 そして態勢を整えると、光の糸はゆっくりと霧散していく。

 支えを失った流木は再び濁流へ飲み込まれ、あっという間に下流へ消えていく。




 岸へ降り立つと、静かに少年を寝かせた。

 頬は青白く、唇には血の気がない。

 胸もほとんど上下していなかった。


 魔女は袖から小さな革袋を取り出し、中から透明な小瓶を一本取り出す。

 淡い金色の雫を一滴、少年の唇へ落とす。

 続いて胸へ手を重ねると、指輪の光が静かにその身を包んだ。


「……っ、ごほっ!」


 やがて少年は激しく咳き込み、大量の水を吐き出した。

 何度も荒く息を吸い、肩で呼吸を繰り返す。

 ゆっくりと瞼が開く。


 最初に少年の目に入ったのは、木漏れ日を背に立つ黒いローブだった。

 裾は風に揺れ、深く被られたフードから影が落ち、その奥の顔立ちはよく見えない。


 アッシュは息を整えながら、かすれた声を絞り出す。


「……あんたが……助けてくれたの?」


 魔女は小さく頷く。

 言葉はない。

 けれど、その仕草だけで十分だった。


 アッシュは礼を言おうと口を開きかけ――その瞬間、途切れていた記憶が一気によみがえる。


 黒い雨。

 山を裂く濁流。

 伸ばされた父の手。


「父さん……!」


 勢いよく身を起こした途端、全身に痛みが走る。

 それでも構わず辺りを見回した。


「父さん!父さんは、どこ!?」


 魔女からの返事はない。

 すぐ近くで、濁流だけが低く唸っている。


 アッシュは泥だらけのまま立ち上がる。

 魔女は箒を手に取り、少年の後ろを静かに歩き始める。




 アッシュは泥を蹴り上げながら駆けた。

 倒れた木をよじ登り、崩れた斜面を滑り下りる。

 見慣れたはずの森は、もうどこにもなかった。

 道は土砂に埋まり、小川は濁流へ姿を変え、何百年もそこに立っていたような巨木が根こそぎ倒れている。


 魔女は少し後ろを歩いていた。

 急かすことも、止めることもせず、ただ一定の距離を保っている。


 やがてアッシュの足が止まる。


「……そんな」


 小屋があるはずだったその場所には、山肌が崩れ落ち、大量の土砂が谷を埋め尽くしていた。

 折れた梁がわずかに顔を覗かせているだけで、それが家だったことを知らなければ、ただの瓦礫にしか見えない。


 父と二人で暮らした、小さな家。

 薪を積み、暖炉を囲み、雨の日には屋根を叩く音を聞きながら眠った場所。

 その面影は、どこにもなかった。


 アッシュはゆっくりと歩み寄る。

 震える手で、土の中から木片を拾い上げた。

 それは、父が自分のために削ってくれた木の皿だった。

 半分に割れ、泥にまみれている。


「父さん……」


 喉が震えた。

 アッシュは割れた木皿を放り投げ、土砂へ飛び込んだ。

 素手で泥を掻く。

 爪の間に石が食い込み、皮が剥け、血が滲む。

 それでも構わず掘り続けた。


 アッシュは息を大きく吸い、掠れる声で叫んだ。


「父さん!」


 答えは返ってこない。

 泥が指の間をこぼれ落ちていく。

 アッシュの両手は血と泥で見分けがつかなくなっていた。


 その背中を、魔女は静かに見つめていた。

 やがて彼女は、泥だらけになった少年の肩へ、そっと手を置いた。

 アッシュは振り返る。

 涙と泥で汚れた顔が、小さく首を振った。


「まだ……まだ父さんはいるんだ……」


 魔女は何も言わない。

 ただ、薬指にはめられた銀の指輪へ、もう片方の手を静かに添えた。


 淡い光が、指輪から零れ落ちる。

 一本の細い光は地面を滑るように走り、土砂の上をゆっくりと進んでいく。

 そして、ある一点で止まった。


 アッシュは目を見開き、光の止まった場所へ駆け寄った。

 震える手で土を掻く。


 魔女も膝をつき、静かに地面へ手を添えた。

 指輪が淡く輝く。

 すると土砂は、生き物のようにゆっくりと左右へ流れ始めた。

 無理に押しのけず、埋もれていたものを傷つけぬよう、そっと道を開けていく。


 やがて、泥にまみれた男の腕が現れた。


 魔女は小さく目を伏せる。

 アッシュは夢中で駆け寄り、男の肩を抱き起こそうとする。

 それを魔女が引き止め、静かに首を横へ振った。


 土砂がさらに退いていく。

 やがて父の全身が姿を現した。

 服は破れ、全身に無数の傷が走っている。

 硬く閉じられた瞼は、もう開くことはない。


 アッシュは父の胸へ耳を当てた。

 何も聞こえない。

 何度確かめても、鼓動は戻らなかった。


 唇が震え、堪えていたものが崩れた。

 アッシュは父の胸へ額を押し当て、声を殺して泣く。

 魔女は少し離れた場所で、その姿を静かに見守っていた。


 やがて、アッシュが顔を上げる。

 涙で濡れた瞳が、魔女を見た。

 魔女はゆっくりと父の傍らへ歩み寄る。


 彼女が両手を胸の前で重ねると、指輪が再び光を帯びた。

 淡い光が父の体を包む。

 裂けた皮膚が閉じていく。

 折れた腕が元の形へ戻る。

 泥に汚れた衣服も、少しずつ土が払い落とされていく。

 血の跡が消え、父は眠っているような穏やかな姿になった。


「……傷が、消えてる」


 アッシュは息を呑んだ。

 そして傷ひとつない父の体を、確かめるように触れていく。


 魔女はその様子をしばらく見つめていた。




 やがて彼女は近くに倒れていた一本の大木へ視線を向け、そちらに手をかざす。

 幹は静かに浮かび上がり、音もなく形を変え始めた。

 木肌がひとりでに削られ、木片が音もなく組み合わさっていく。


 やがて一つの棺が組み上がった。

 そこへ風に乗って草花が集まり、棺の中へ降り積もる。

 柔らかな香りが辺りを包んだ。


 魔女は父の亡骸をゆっくりと浮かべ、静かに棺の中へ下ろした。

 そして花を胸元へ添える。


 アッシュは溢れる涙で視界がわずかに滲む中、その光景をただ見つめていた。

 

 棺の中で、父は静かに眠っている。

 まるで仕事の合間に目を閉じているだけのように、穏やかな表情だった。

 アッシュはその顔を見つめたまま、言葉を失っていた。


 泥に汚れていた服も、裂けていた皮膚も、何事もなかったかのように元へ戻っている。

 アッシュはゆっくりと立ち上がり、揺れる瞳で魔女を見た。


「……お願い。父さんを、生き返らせて」


 魔女はアッシュへ視線を向け、しばらく動かなかった。

 やがて彼女は背中に背負っていた小さな革鞄から、黒いローブを取り出し、それをアッシュの肩へ掛けた。

 大きすぎるローブが少年の体を包み込む。

 フードが深く頭へ落ち、視界が少し暗くなる。


 不意に、フードの中から声が響いた。


『……傷を癒やし、骨を繋ぎ、』


 穏やかで、どこか遠くから聞こえるような声だった。

 アッシュは目を瞬いた。

 目の前の魔女は口を開いていない。

 それでも声は、たしかに聞こえていた。


『血を巡らせて、止まった心臓を動かすこともできる……けれど、それで戻るのは器だけだ』


 魔女は棺の中で眠る男へ目を向けた。


『そこに、彼の意志はない。記憶もない。笑うことも、お前の名前を呼んで抱きしめることも……できない』


 淡々と続く言葉に、アッシュは唇を噛んだ。


『それは、お前の“父さん”ではないだろう』


 魔女の声が、胸の奥へ静かに落ちる。


「……そんな」


 震える声が漏れた。

 アッシュは棺へ歩み寄り、父の手を握る。

 その手は傷一つなく、数刻前と同じ形をしている。

 なのに、握り返してはくれなかった。


 再び、アッシュの瞳から涙が溢れた。


「父さん……!」


 アッシュは棺へ顔を伏せ、声を上げて泣いた。

 森には、少年の嗚咽だけが響いていた。




 アッシュの泣き声は、やがて静かな嗚咽へと変わっていった。

 魔女は棺の傍らへ歩み寄ると、ゆっくりと膝をついた。

 胸元に下げた二つの聖具へ、そっと手を添える。


 一つは枝葉を広げた森の神。

 一つは波を抱く海の神。


 その二つを静かに握り締め、目を閉じた。


 風だけが吹き抜け、梢を揺らす。

 木漏れ日が柔らかく差し込み、棺の上へ小さな光を落とした。


 アッシュは涙を拭い、顔を上げる。

 魔女はまだ祈り続けていた。




 どれほどの時間が過ぎただろう。

 魔女はゆっくりと目を開き、聖具から手を離した。


 そして立ち上がると、近くに落ちていた一本の枝を拾う。

 指先でなぞると、枝は音もなく形を変え、一本の木製の墓標となった。

 魔女はそれを棺の前へ静かに立てる。


 続いて両手を地面へかざした。

 柔らかな光が土へ染み込んでいく。

 棺はゆっくりと土へ包まれ、その上を新しい土が静かに覆っていく。

 まるで森そのものが、亡き木こりを抱き留めるようだった。


 最後に小さな白い花が一輪、土の上へ、そっと咲いた。

 アッシュはその墓の前に膝をつき、しばらく黙ったまま手を合わせる。


 やがて立ち上がると、振り返って魔女を見た。

 黒いローブは風に揺れ、その表情は深いフードの影に隠れている。

 アッシュは言葉を探しながら、彼女に尋ねた。


「あんたは……これから、どこへ行くの?」


 魔女はゆっくりと振り返る。

 風が揺らす梢の向こうには、雨雲の消えた青空が広がっている。


『……森へ帰る』


 短い沈黙のあと、声は続く。


『お前も、一緒に来る?』


 アッシュはすぐには答えなかった。

 ただ、墓標へ目を向ける。

 そして墓の前へ歩み寄ると、ゆっくりと膝をついた。


「父さん」


 その声は、不思議なくらい穏やかだった。


「……行ってくる」


 返事はない。

 けれど風が吹き抜け、木々が静かに葉を鳴らした。

 

 アッシュは立ち上がり、魔女の方へ向く。


 魔女は小さく頷くと革鞄を開き、一枚の大きな布を取り出した。

 古びた生成り色の布だった。

 地面へ広げると、複雑な紋様が幾重にも描かれている。


 次に、小瓶を一本取り出した。

 中には月明かりを溶かしたような銀色の液体が満ちている。


 布の中央へ、一滴。

 雫が落ちた瞬間、紋様全体が淡く光り始めた。

 光は静かに広がり、やがて一つの輪を描く。

 その中心で空間がゆらりと揺れた。


 何もなかった場所に、一本の古い木の扉が現れる。

 苔むした木枠。

 蔦が絡みつき、長い年月をそこに立ち続けていたような佇まいだった。


 魔女は取っ手へ手を掛ける。

 軋む音とともに扉がゆっくりと開いた。

 その向こうに広がっていたのは、アッシュの知る森ではなかった。


 陽の光は届いているのに、どこか薄暗い。

 幹はねじれ、枝は空を覆い隠すように伸びている。

 青や白に淡く光る茸が根元に群生し、見たこともない花々が静かに咲いていた。

 遠くでは、名も知らぬ獣の鳴き声が響く。


 不気味なのに、恐ろしいだけではない。

 森そのものが、静かに息づいている。


 魔女は一歩、その森へ踏み入れる。

 そして振り返り、アッシュを待った。

 アッシュはもう一度だけ、父の墓を見た。


 小さな墓標に木漏れ日が落ち、その傍らで、白い花が揺れている。


 アッシュは静かに息を吸い、一歩を踏み出した。

 扉をくぐる。

 数歩足を進めると、背後で木の扉が静かに閉じた。


 黒いローブの魔女は歩き出す。

 アッシュも、少し大きいローブの裾を揺らして、その背中を追った。





お読みくださり、ありがとうございます!

感想コメントや、レビュー、ブクマをいただけると跳ねて喜びます!!


ちなみに、魔女が持つ二つの聖具について。

この世界では2つの神を同時に信仰する者は少ないですが、魔女曰く「海は森を育み、森は海を浄化するもの。どちらか一方だけでは意味がない」そうです。

彼女なりのこだわりを感じます。

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― 新着の感想 ―
父との悲しい再開、そして魔女との出会い、旅立ち…… 何よりも父を生き返らせてほしいという願いと、できるがそれは望むことではないという言葉……アッシュにとっては辛い言葉ですが、彼が前を向くために必要な一…
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