ジュエルスライムとテイム
「数時間ぶりの日の光は眩しいね。宝石箱も結構眩しかったけど、人工と天然だとやっぱり天然の方がいい。」
『僕たちは初めて見たけど、一階の草原とあんまり変わらないね。』
両肩にルージュとアスール、頭の上にヴァイスを乗せた僕は結構目立つみたいで、ダンジョンに潜ろうとする冒険者や通り過ぎる人たちが足を止めて、ちょっとした騒ぎになってしまった。
「まずはギルドにお前たちの事話さないとな。何か起きたときにお前たちを他の冒険者に攻撃されたら大変だからな。」
『攻撃されたって僕たち大丈夫だと思うけどなー。こう見えて強いんだよ?』
「それでもだ。何も悪くないのに攻撃されるのも嫌だろ?それに、いちいち周りに言わなくても、テイマー用の装備を貰えば、冒険者に分かってもらえるからな。」
テイマーにはテイマーに従う獣魔用の装備というものがある。それを装備させておけばダンジョン外はもちろんダンジョンですれ違ったりしたときも誰かの従魔というのが一目でわかり、攻撃されずに済むというものだ。ただ、スライム用の装備があるのかという心配はあるけど…。
『君って人気者なんだねー。すれ違う人間みんな君の事見てるよー。』
「違うよ。これは僕を見てるんじゃなくて、君たちを見てるんだよ。なんせ君たちはあのダンジョンでしか現れないジュエルスライムだからね。その中でもヴァイスの色は珍しい白っぽい色だ。宝石の間にもヴァイス以外いなかっただろ?」
『僕以外いないの当然じゃないか!あのダンジョンの主しかダイヤモンドスライムになれないんだから。』
「それってあのでっかい青もいつかダイヤモンドスライムになるのか?あいつがあのサイズでなったら、誰も倒せなくなるなー。」
『それは無いよ。あの子は君がでっかい青という通り、ラピスラズリが主食だからね!ダイヤモンドスライムが生まれるとしたらあの子が倒されたときかな。今の主はあの子だしね。』
「主食で変わるのか。…という事はお前たちは何を食べるんだ?というか、食べないと死ぬのか?」
『僕はダイヤモンドでルージュがルビー、アスールがサファイアだね。くれるというならもちろん食べるけどね?僕たち魔物は魔力があれば生きていけるんだ。』
「お腹が減って動けなくなってたのに?」
『あれはしょうがないでしょ!僕たちは宝石が無くなると消滅しちゃうんだ。魔力を宝石に変換することも出来るんだけど、ダイヤモンドって魔力が大量に必要になるんだ。他の子たちも魔力を消費しすぎないように宝石を食べてたでしょ?だけど、ダイヤモンドの在庫が無くなっててね。本当に助かったんだよ!』
「今は宝石は必要ないってことでいいんだな?必要って言われても買えないんだが。」
ヴァイス達とのこれからを話していたらギルドに着いた。
初めて来たのも今日の出来事のはずなのに、何日か振りの感じがするのは、ダンジョン内での出来事が濃かったからか。
「魔物の登録はどこだったか…。」
『なんかあっちからすごい気配を感じるんだけど。』
ヴァイスが言う方を見ると、こちらを興奮したような目で見てくる人が。
「しっ!あっちを見てはいけません!ああいう人は変態という人間とはまた別の種。関わり合いになっちゃいけません!」
『そっかー。あれは人間じゃないのか―。』
ヴァイスにそう言い聞かせ受付の列に並ぼうとしたとき。
「ちょっとちょっとちょっと!そこのジュエルスライムを三匹連れた人!今こっち見ましたよね!何で無視して行こうとしてるんですか!こっちに来てくださいよ!従魔の登録なんでしょ!登録はこちらですよ!さぁはやく!早くこちらに来るんですよ!!!」
遅かったか…。
「聞こえてますか?無視ですか?無視するんですね!それならいいです!私の方から行きますから!動かないでくださいね!ガード!!!魔物を連れた人を逃がさないようにしてください!その魔物まだ従魔登録されてないので!」
「僕の方から行きますから!ガードを呼ばないでください!!!」
『あれ?あっちに行くの?あれは人間じゃないんでしょ?僕が倒そうか??』
「あれもギルドの関係者だからやめてくれ。従魔登録できなくなるかもしれん。」
『君が言うなら大人しくしておこうかな。』
ルージュやアスールも落ち着きなさい。たぶん危ない事にはならないと思うから。
「先ほどの命令全部キャンセルで!初めから来てくれたらこんな大ごとにならなかったんですよ?」
自分は悪くないと言いたげだな。あんたが普通の対応してれば逃げようと思わなかったんだけどな。
「従魔登録はあんたがしてくれるってことでいいのか?」
「私が担当しましょう!いやー私って魔物が好きでよくここに居るんですけどね?ジュエルスライムをテイムしてきた人は初めてですよ!それも三匹も一度に!あなたラッキーですねー!」
そうだよな。ギルドに魔物を連れてくるなんて、やっぱりテイム持ちだけだよな。
「僕テイム持ってないんだけど…。」
「………それじゃあどうしてジュエルスライムが大人しくあなたに着いて来てるんですか?」
「さぁ?」