本当の宝石箱
「湖の下に洞窟か。水が浸かってないのが不思議なんだが。」
でっかい青の下を通り、湖の底から下の階層に出ると、白っぽい壁が続く洞窟に出た。
さっき見たでっかい青が交叉出来るほどの大きさがあると言えば、どれくらいの大きさの洞窟か分かってもらえるだろうか。
「草原の次が洞窟か。さっきのでっかい青の中にあった青い宝石はここで採ったものか?」
大小さまざまな宝石が体の中に浮かんでいたけど、上の宝石部屋に持っていくのか?ここからじゃどこにも宝石なんて見当たらないけど。
「お前たち。ここが目的地か?それともまだ下の階層があったりするのか?」
青が跳ねたあと赤が跳ねる。
という事は、ここに上の小さい奴を助ける何かがあって、持ち帰ればいいという事だな。
「目的のものがどこにあるか、なんてのは分かるのか?」
青が跳ね、二匹揃ってどんどん洞窟を進んでいく。
「とりあえずついて行くか。」
デカい通路進む間観察してみると、下の方に宝石の原石らしきものは無いけど、上の方にはキラキラ輝くものが見えた。特に頂上、真ん中てっぺん辺りは手つかずみたいで、青や赤、黄色に緑と言ったカラフルさだった。
「こういう宝石ってあんな感じに密集して採れる事あるのか?それともダンジョンだから?」
ダンジョンの不思議を考えながら二匹について行くこと十分ほど。
小さな輝きが見える壁際に案内された。
「この光ってるのが目的のものでいいのか?」
青が跳ね、二匹がその宝石に群がる。
周りに石部分を溶かしているようで、露出してるところが増えたようだが、全体像が分からないけど、時間かかりそうだ。
「その宝石が欲しいんだな?僕も手伝おうか?食べることしかできないけど、鶴嘴とかあれば大きく削れると思うぞ?」
もちろんそんなものがあるはずもなく、二匹揃った体当たりを喰らう。
「おいしく食べれるのは良いんだけど、食べる体勢がきついんだよな。」
二匹の間に挟まりながら鉱石の周りを食べていく。
「『悪食王』が手で発動出来ればもっと楽になるんだけどなー。」
そう思いながら、体勢を変えるために手をつくと、食べていないのに口の中に甘みが広がる。
「食べてないのにチョコの味が!もしかして手で発動できるのかコレ!!」
試しに壁に手をついてみる。
『悪食王』は発動しない。
「しないか。スライムを持った時も別に発動しなかったし、さっきのは口の中に残ってただけだったのか?」
手で発動来たらいいなと思いながら壁に手をつく。
口に甘みが広がる。
「やっぱり勘違いじゃない!発動には意思が必要なんだ!」
そこに気づいてからは楽になった。なんせ寝そべる必要もないければ、噛むために口を動かす必要もなくなったから。だけど、デメリットとして口で直接食べるよりも狭い範囲しか食べることが出来ず、食べ進めるのに倍くらいの時間が掛かる。
「お前ら―。これがどれくらいの大きさか分かるのか?結構食べ進めてきたが、ぜんぜん掘り終わりそうにないんだけど。」
露出した鉱石は既に僕の膝くらいの高さ。たぶん40㎝~50cmくらいは食べ進めたと思う。それでも揺れることなくしっかりと壁に埋まっている。
まだ動かないってことは僕より大きい可能性もあるんだけど。掘れても持ち帰る手段がないんだけど。
たまに通るジュエルスライムを見ながら食べ進めること、30分ほど。
いきなり鉱石がぐらついた。
「あぶねっ!」
座りながら鉱石の周りの壁を食べていた僕に倒れてきそうなった鉱石を、青と赤が受けてめてくれた。
「急に来たな。さっきまで全く動かなかったのに。助けてくれてありがとうな。」
二匹に礼を言い、二匹が受けてめている鉱石を見る。
「でっかいな。1mは優に超えてるよ。でっかい青みたいにお前たちのどちらかが飲み込んで戻るのか?さすがに僕はこの大きさの鉱石をもって帰れないぞ。食べていいなら食べれそうだけど。」
掘りぬいた鉱石は赤が体の中に仕舞うようだ。鉱石の大きさぶん赤も大きくなり、僕の腰程度の大きさになった。その赤のうえに青が乗り、意気揚々と帰り道に着く。
「帰るのは良いんだが、結構落ちてきただろ。お前たちは帰れたとしても、僕は上がれそうにないぞ。どうするんだ?」
二匹は答えることなく、落ちてきたと思われる穴を通り過ぎ、さらに奥に進む。二匹ついて行くと、見たことあるような箱が見えてきた。
「これって完全にエレベーター。何でダンジョンの中にエレベーター?」
あの宝石箱を見つけた人がここまで来て、エレベーターを作った?皮は現代的だけど、中身は完全に魔術的だから違うよな。
中に入ると勝手に扉が閉まり、階層を選択していないのに動き出す。選択する階層もなかったんだが。
あのでっかい青がこれを使わなかったのは、大きさ的にここに入れなかったからみたいだな。
エレベーター内の広さは僕と赤が入ってちょうどくらいの大きさで、でっかい青は完全にはみ出すサイズ。
「やっと帰ってこれたー。その鉱石あの小さい子に渡すんだろ?それが何の宝石か分からないけど、それであの子は何とかなるのか?」
エレベーターが着いたところは宝石部屋の僕が落とされた穴の奥の壁だった。ここから洞窟までつながってるなら、行きも使わせてくれたらよかったのに。そう思いながらエレベーターを出ると、エレベーターが閉まり、隙間の無い壁になってしまった。
「帰り専用なのね。」
僕がエレベーターを振り返っている間に、二匹は小さい子に採って来た鉱石を渡しているようだ。
小さい子は取り込んだ鉱石を他のジュエルスライムと同じように食べているようで、どんどん鉱石が小さくなっていく。と同時に、小さい子は大きくなっていく。
「そいつは腹が減ってたのか?どんどん大きくなってくんだな。それがそいつの本来の大きさってことか。」
小さい子が青や赤と同じくらいの大きさになったとき、僕の頭に響いた。
『君のおかげで助かったよ。』