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でっかい青

「洞窟の下に草原が広がってるなんて誰が想像できるんだ?」


『粘魔の宝石箱』は洞窟型の全十階層であり、出てくる魔物は粘魔種のスライムと低確率でジュエルスライム。それと十階層のボスのみ。スライムに種類はあれど、非敵対魔物であり、比較的安全なダンジョンとして知られているここに、こんな場所があるなんて情報はどこにもなかったはずだ。


「それを言うなら、ここに来た時に通ったジュエルスライムたちの巣も情報にはなかったか。」


 ルビーのジュエルスライムの赤とラピスラズリのジュエルスライムの青に落とされこの草原に来たが、今の所出てくる魔物はジュエルスライムのみ。


「こう牧歌的だと牛系や羊系の魔物だったり、鳥系の魔物がいてもよさそうだけど。」


 端が見えないほど広いこの場所は、青々とした草がの伸びる草原に、広々とした青空が広がっている。その青空の上にうっすらと天井のようなものが見えるため、本物の青空ではないことが分かる。


「ここを攻略していけばいいのか?腹減ったらここのジュエルスライムを食べることになるがお前たち的に問題はないか?」


 いつの間にか肩に乗っていた青と赤に問いかけると、器用に青が二回跳ねる。


「肯定か。それならいいんだが、とりあえずどこに進めばいいかくらい教えてくれよ。広すぎて、下への階段も見当たらないし。まっすぐでいいのか?」


 またしても青が跳ねる。

 それにしても肩で跳ねるなんて随分と器用なことするな。バランス変わるからやめてほしんだが。


 その後草原を歩いていく。たまに揺れる草の根元にいるジュエルスライムを食べながら、目的も分からないまま進んでと行くと、湖が見えてきた。


「お、ようやく変化が。ずっとスライム食べててお腹は減らなかったけど、水を見ると途端に喉が渇いて来た。よく何も飲まずに歩き続けてこれたな。」


 湖に近づき縁に膝を着く。


「気分的には沸騰させてからのみたいけど、『悪食王』で泥水でも飲めるからな。問題ないだろ。」


 魔物みたいな未知なものより、日常で食べちゃダメって言うものの方が口に入れにくいな。

 水を手ですくい飲んでいく。青と赤も肩から下りて湖の中に入っていく。あれは遊んでいるのか、飲んでいるのか。スライム種ってよくわからない。


「お前たちが案内したいのはここか?それともまだ先なのか?」


 ぷかぷか浮かんでいる二匹に問いかけると、青が跳ね、赤が跳ねる。

 この湖が目的地ってことで良さそうだ。…水に浮かんでるのに、どうやって跳ねたんだ?


 ただ浮かんでいるだけだと思っていた二匹が、中心近くを漂った時、勢いよく飛んだ。


「高く飛んだなー!二匹同時に吹っ飛んでどうしたんだろ。」


 飛んで行った二匹の行方を眺めていると、地響きが来た。それと同時に湖の中心が泡立ち、湖全体に広がっていく。湖から離れ、二匹が飛んで行った方に迎えに行く。


「なんか地響き来たと思ったら、湖が凄いことになってるんだが、お前たちなにかしたか?」


 赤が跳ねた後、抗議するかのように二匹が激しく跳ねる。


「分かった分かった違うんだな。お前たちは何もしてないと。それじゃああれについて何か知ってるか?」


 またしても赤が跳ねる。


「お前たちが連れてきたのにお前たちが知らないことがあるのか。だけど、あそこが目的地なんだろ?」


 青が跳ねる。


「うーん。あれは何だろうな。」


 二匹と共に湖の変化を眺めていると、中心部から噴水のように高く水しぶきが上がった。

 雨のように降りしきる水しぶきの奥に大きな影が見える。


「でっかいスライムだなー。表面キラキラしてるし、青色だし、あれってお前の親だったりする?」


 青に聞くと、青は震え、赤が激しく跳ねまわる。


「違うかー。ちなみにあれが目的だったりする?あれを何とかすればいいのか?」


 赤が二度跳ね、二匹揃ってでかい青のもとに跳ねていく。

 スライム種に変わりはないから、近づく程度じゃ敵対されないはずだけど、でかすぎて躊躇われるな。


「青ー、赤ー。僕はそいつに近づいても大丈夫なのか?急に取り込まれたりしないよな?」


 視線をでかい青から外すことなく二匹に問いかける。急に動き出してもすぐに逃げられるように身構えるのは許してほしい。

 青と赤はでかい青の下に行きたいようで、何度も体当たりをしている。スライム同士は敵対判定が無いのいいよな。一緒にいた僕にも敵対判定しないでくれよ!


 覚悟を決めて青と赤に近づいてみる。その際、でっかい青の体内が良く見えるようになり、体の中に青い宝石が入っていることが分かる。


「もしかして宝石をどこかに採りに行った帰りなのか、このでっかい青は。」


 もしそうならこの二匹が知らないのにも納得する。他のスライムたちの動向を気にするような奴じゃないよな。細かいことを気にするような奴は僕を突き落とすはずないし。


「それこの下に行きたいという事は、この下に階段があるという事でいいのか?」


 青が跳ね、お前も手伝えとばかりにぶつかってくる。


「この大きさにぶつかりに行っても動かせるわけないだろ?」


 でっかい青に対して湖だった場所から移動するように話し掛けてみる。

 ………動かない。


 二匹が僕に近づき遊んでじゃねぇとタックルしてくる。


「お前たちは僕の言ってること分かるじゃないか。」


 何とかでっかい青の下に潜り込み階層を移動する。


 ちょっとかじりたい欲もあったけど、なんとか我慢した。潰されたくないし。

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