洞窟の下にあったもの
六匹に増えたジュエルスライムについて行く。
「おい、青、赤。僕をどこに連れて行きたいんだ?何か困ったことがあろうと、僕は食べる事しか出来なんだが。」
先頭を進む二匹は僕の問いかけを無視して進んでいく。
「さっきは僕の言葉聞いてこいつら食べさせようとしたのに、聞こえないふりか?」
仕方なく後ろをついて行くこと十分ほど。少し広い行き止まりに辿り着いた。
「ここはまたすごいな。さっきまでのジュエルスライムがいたところもすごいと思ったけど、お前たちの宝石部分ってここの宝石食って取り込んでるのか?」
その行き止まりは色とりどりの宝石の塊があり部屋が眩しいくらい。部屋の中には道中では見なかった金色のスライムや、銀色のスライム。紫色のジュエルスライムなんかもいる。
「ジュエルスライムを倒すと、たまに宝石がドロップするって話だけど、ここの宝石の影響か?赤がルビー、青がラピスラズリ。緑がエメラルドで黄色はトパーズとか?宝石に詳しいわけじゃないから曖昧だけど、そこらへんがこの色の宝石と言えばって感じのはず。金や銀はそのまま金、銀で、あっちの紫はアメジストか?」
それぞれの宝石にそれぞれのジュエルスライムたちがくっついている。ちょうど食事中だったのかな?この状況で宝石を持ち帰ろうとは思わないけど、ここにある宝石すべて持ち帰ったら億に行きそうだな…。
「お前たちの食事風景を見せて、僕に何をして欲しいんだ?さっきも言ったが、僕は食べる事しかできないぞ?お前たちを食べる気はないが。」
青と赤以外の四匹は食事向かったのか、既にばらけていて、目の前には最初に追いかけっこをした青と赤のみ。その二匹は僕の言葉を聞くと、部屋の一番奥にぽよぽよと移動し、僕にこっちに来いというように交互に弾む。
「そこに行けばいいのか?」
二匹が交互に弾むもとに行くと、今まで見た中で一番綺麗な、しかし、一番小さなジュエルスライムがいた。
「無色透明なスライムなんて見たことないけど、この子はジュエルスライムの子供か?」
小ささから思わず呟くが、赤が反応し一回跳ねる。
「それはどっちだ。肯定か、否定か。肯定なら一回、否定なら二回跳ねてくれ。」
そう言うと、青が一回、赤が二回跳ねた。
「それは…青が跳ねたときが肯定。赤が跳ねると否定ってことで合ってるか?」
そう言うと、青が一回跳ねる。
「それならもう一度問うが、この小さいスライムはジュエルスライムは子供か?」
赤が跳ねる。否定ってことで、この大きさだけど、子供じゃないってことだな。
「これでお前たちと同じ大人ってことでいいんだな?それじゃあ、この子はこれが普通なのか?この大きさが正常の大きさでいいのか?」
またしても赤が跳ねる。
「この子はなにか問題があるってことだな?それじゃあ、この子の問題は僕に解決できることなのか?」
今度は青が跳ねる。
「肯定か。つまりお前たちはこの子の問題を僕に解決してほしいってことだな?」
青が何回も跳ねる。
僕に何かを解決してほしいってことは分かったが。二択の質問でこの子がどんな問題を抱えてるのかを特定するのはさすがに難しいよな。
「この子の問題はどうすれば解決できるんだ?」
思い切って青と赤に解決方法を聞いてみると、二匹揃って部屋のさらに奥に弾んでいく。
二匹を追って奥に行くと、床に大人が二人ほど入れそうな穴が開いていた。
「この先に何も見えないが、まさかこの穴に飛び込めって言うのか?」
青が跳ねる。
「………穴の底が見えないんだが?」
青が跳ねる。
「………………なんでも食べられるだけのただの人間がこの穴を降りれるとは思えないんだが?」
青が激しく跳ねる。
「せめて命綱を…」
赤と青、揃って背中に体当たりを受ける。
「うおおおおおおぉぉぉ!死ぬって!この高さは死んじゃうって!!!」
突然の体当たりのため当然体制を整えることも出来ず、無様に落下していく僕を囲うように赤と青が包み込む。
着地の衝撃はぽよんといった感じ。
かなりの高さから落ちた気がするけど、無傷。ジュエルスライムの柔軟性と伸縮性。そして、衝撃吸収力は凄いな!
「助かったぁぁぁ!!!お前たちのおかげで無傷だが、お前たちのせいで寿命が5年は縮んだぞ!」
青と赤に文句を言うも無視して先に弾んでいく。
「おい!聞いてんのか!そもそもここはどこなんだ!!」
二匹を追いかけ進んでいくと突然視界が開ける。
そこは『粘魔の宝石箱』のどこの情報にもない新しい場所。
洞窟型の全十階層のはずのダンジョンではありえない場所。
「こんな場所があるなんてどこにも書いてなかったぞ。一体どうなってるんだよ、この青空は!」
下は青々とした草が伸びる草原。上は広々とした青空。左右に伸びる壁は端が見えないほど遠く、この空間の広さが分かる。
「ここで一体何をさせたいんだお前らは…。」
どんどん進んでいく青と赤を慌てて追いかける。