警戒心と好奇心
さて、まだ見えてないこの敵にどう対応するか。
「襲ってきそうな気配はないんだよな?」
『この敵ー?殺気が大きくならないからまだ襲ってこないかなー。』
襲ってくればヴァイスに捕まえてもらう、或いは、攻撃を防ぐときに敵の姿が分かるんだが。ダンジョンの傾向から猫科だとは思うんだけど、膝下くらいの猫科って、今までよりだいぶ小さいよな?
「早いのか小さいのか分からないが、どうにかしてこいつを補足しないとな。」
『寝っ転がって草木に『擬態』してみる?あるいは、あっちにある木に登って、姿見せるまで『隠れる』?』
『擬態』に『隠れる』か。どっちも相手からの接触待ちか。姿が見えないならそれもしょうがないか。
「寝っ転がるのは流石に不意打ちを避けられなくなるから、しゃがむ程度にしておこうか。草木に擬態したうえで臭いを隠せば、出てくるかもしれん。」
ヴァイス達をそのままにその場でしゃがみ込み能力を使い敵が姿を現すまで待つこと五分ほど。警戒するように鼻をひくひくさせながら現れたのは、ひざ下なんかよりももっと小さく耳が尖っているのが特徴的で、鼻先から目頭を通り額まで通る黒い線が左右に二本ある。ぱっと見、短毛種の子猫みたいだけど、顔の野性味が凄いな。
こいつが周りを回っていたやつなのか?
『こいつで間違いないけど、魔力大きくならないねー。』
そういえば、魔力が膨れ上がって、草が揺れて、そっちを見たらいなかったの繰り返しだったか。今は小さいときってことか?
『そうなるー。今の大きさから三倍くらいになってたんだよー。姿見せたら大きくなるかな?』
こちらの攻撃距離は腕の長さまでだが、捕まえるとなるとヴァイス達の伸びる距離か。果たしてどこまで伸びるのか。
アスール達って網目状に広がったりって出来るか?上から投げて捕まえたいと思うんだが。
『網目状?ただのスライムなら出来たかもしれないけど、僕たちは出来ないかなー。宝石が邪魔しちゃうし。』
なるほど。確かにヴァイス達の宝石はそこそこの大きさがあるし、網目状は出来ないか。それでも、薄く広がって被さるようには出来るか?
『宝石の高さ分まで出来るけど、君が要求するほど薄くは出来ないかなー。』
自ら出るしかないか。しかし、ここで逃がすと、こちらが身を隠すことが出来ると学習してしまうかもしれないし、ここで倒したいな。届く距離に近づいたら一歩踏み出して初手『乱打』するか。小さいから当てにくそうだが、点ではなく面になるように心がけよう。
もう少し近づくまで待機だ。手の届く距離になったら、攻撃開始するからアスール達はグローブになっててくれ。ヴァイスは、不意打ち警戒で。
『了解ー。しばらく待機ねー。』
ヴァイスと念話している間も徐々に徐々に近づいてきている子猫。あと一歩ほどこちらに来たら、手の届く距離というところまで来たが、そこからこちらに寄ってこない。野生の感でも働いているのか、あとちょっとというところで周りをぐるぐる回りだす。
『来ないねー。攻撃しちゃえばー?この距離なら当たるんじゃない?』
あと五分待とう。あいつの逃げ足は速いからな。何せ、魔力の膨らみを見えるヴァイスが姿を見えなかったというほどだからな。出来れば、あと一歩を待ちたい。
しかし、五分経っても近づくことは無かった。ただし、逃げることもなかった。警戒心は強いが、好奇心も同じくらい強そうだ。
五分待っても来ないからこちらから攻撃をする。急襲になるはずだから、おそらく一方的になると思うんだが、反撃に注意してくれ。
『了解ー!でも、致命傷以外は、君も避けるんだよ?不意打ちにも対処できないと強くなれないからねー。』
もちろんだ。
覚悟を決めグローブになってくれているアスール達に『硬化』を掛け、一歩踏み出しながら『乱打』を発動する。急に姿を現した僕に驚いたのか子猫が体を大きく見せようとしてきた。というより、実際に大きくなった。膝下にも届かない大きさだったのが、確実に膝上の大きさになってるから、大きくなってる。
『魔力が一瞬で大きくなった!気をつけて!!』
「そんなこと言われても、ここから乱打は止められないぞ!」
大きさが変わり目算が誤ったものの、『乱打』の一打目が猫に当たりそうになった時、猫の姿が急に後ろ方向にぶれる。そして、そのまま離れていき、ある程度離れたところで小さくなったのか姿が見えなくなった。
「なっ!絶対に当てられたと思ったのに。」
『あれが見えない理由だったんだー。それに魔力の大きさが変わった理由もわかったねー。』
見えない理由が単純に速かったうえに、小さかったとはね。しかし、最初に近づいてきたのが本来の大きさだと考えたら、姿を見せてた時の周りを回ってた時にときどき大きくなってたのは何故なのか。
「見えなくなったし、あいつについてちょっと考えてみるか。」
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