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ジュエルスライムの青と赤

「ちょ、ちょっと待ってって!少しお話したいだけだなんだ!…喋れるか知らないけど止まってお話ししよう!」


 ジュエルスライムを食べているところを二匹のジュエルスライムに見られ、咄嗟に手を伸ばすも左右に別れるように躱され、追いかけっこが始まった。


 幸いなことに、追いかけてる途中で他のジュエルスライムの近くを走るも、敵対されることもなく追いかけるのは二匹だけ。しかし、何度も手を伸ばすも惜しいところで届かず、逃したこちらを煽るように少し先で二匹並んで飛び跳ねるのは、遊ばれているのだろうか。


「君たちが敵対してないのは分かったから、僕は帰るよ。他の人にはここの事言わないから、安心してね。」


 何度も躱され、気づけば一階層に続く階段が見えるところまで戻ってきていたので、追いかけるのは諦め帰ることにする。


「さすがにずっと走りっぱなしだったから、休憩してから帰るけど、君たちもお仲間の所に帰りなー。」


 階段近くに座り込み、ジュエルスライムたちが戯れている光景を眺める。


「君たちも休憩か?」


 先ほどまで追いかけっこをしていた二匹が近くに来て、ぽよぽよ跳ねる。


「それにしても、ほかの奴らは敵対しなくとも近寄ってくるとはしないのに、お前らはからかうように寄ってくるんだなー。あいつらとお前らで、何が違うんだろうな。」


 ぽよぽよしている二匹を手繰り寄せ両手で撫でる。


 おー。スライムとはまた違った手触り。表面がキラキラしてるから一見固そうなのに、柔らかい。だけど、力を籠めるとしっかりとした硬さを感じる。………何でさっきは簡単に食べれたんだろう。


 ジュエルスライムたちで遊ぶこと十分ほど。


「それじゃあ帰るよ。僕が言えたことじゃないけど、冒険者に見つかって倒されないようにな。人になれたジュエルスライムたち。」


 二匹を通路の方に降ろし、階段を降りようと背を向ける。その時、背中に衝撃を受ける。


「うおっ!あぶなっ。もう少し前にいたら、階段を転げ落ちてぞ。」


 後ろにいるのはもちろん先ほど下したジュエルスライムたち。ここにきて初めての敵対かと身構えるも、どちらからも追撃は来ない。


「人はスライムみたいに、階段を転がっても大丈夫なようになってないの。簡単に怪我するし、最悪死んじゃうの。わかる?また今度来るから、こういうことはしないように。分かったな?」


 ジュエルスライムに言葉が通じるか分からないが、一応注意をし、背を向ける。

 そうするとまたしても背中に衝撃が。振り向くと、今度は二匹交互に跳ね、僕の注意を引くようにしている気がする。


「今日はもう疲れたし、また今度来るから。帰らせてくれ。な?」


 三度目の正直と背を向けぶつかられる前に帰ろうと足を出すと、今度はその足に絡みついて来た。右に赤、左に青が絡みつき、僕の足が眩しいことに。


「もうなんなんだよ!帰るって言ってるだろ?」


 足に絡みついて来たジュエルスライムたちは、先ほどの道とは反対の方向に引っ張ろうとしているみたいだ。力で負けることは無いから、体が引っ張られることは無いが、二匹揃って同じ方向に伸びているから、どうやらそちらに連れて行きたいらしい。


「この階層に来てから一匹しか食べてないし、お腹も減って来たんだよ。今度来るときはちゃんと準備してくるから、離してくれよ。」


 スライム相手に懇願という謎の状況になるが、後ろ脚に絡みついていた青が足から離れ、ほかのジュエルスライムに合流していく。


「ほら、青は離れてあっちに行ったぞ?お前もあっちに合流したほうがいいんじゃないのか?勝手だが仲良くなったお前たちを食べることはしたくないんだ。」


 残った赤を説得していると、先ほど離れた青が合流した他のジュエルスライムたちを連れてきた。


「青、連れてきたそいつらは何だ?」


 青が連れてきたのは青、赤、黄、緑が一体づつの最大グループ。青は再び左足に絡みつくも、追加された四体は目の前に並んでいるだけ。


「青?こいつらはなんだ?お前たちにみたいに足に絡みつくわけでも、敵対するわけでもなく、ただ見て来るだけなんだが?」


 そう言うと、青はまた足から離れ、四匹に近づき体を伸ばしたり縮めたり震えたりして何かを伝えているようだ。


「おい!青!こいつらに何を言った!口元目がけてよじ登ってくるんだが!!」


 青のボディーランゲージが終わると、四匹が一斉に跳ね体に纏わりつきどんどん顔の方に登ってくる。


「もしかして食べろってこと!?さっきお腹減ったって言ったから、食べられ役を連れてきたってことか!?」


 さすがに食べられないって!青がどう言ったのか知らないけど、自分から口に入ってくるなんて可哀そうすぎるだろ!


「分かった!分かったから!ついて行くから!こいつらをどけてくれ!」


 帰るのを諦め、赤と青にそう告げると足から離れ体によじ登っていた四体にボディーランゲージを繰り出す。


「はぁはぁ。それで?僕をどこに連れて行きたいんだ?」


 六匹に増えたジュエルスライムにそう問いかけると、赤と青を先頭にぽよぽよと行進を始めた。


「いったいどこに連れて行きたいんだ?」

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