手負いの獣ほど怖いものは無い
「離れる前に目にでも刺しておけばよかった。何であんなに血を流してるのにまだ諦めてないんだ。」
両前足に小さい無数の傷、喉元に大きな致命傷になりそうな傷。横倒しになったサーベルタイガー型だったが、諦めることなく血を流しながら立ち上がる。
「もう絶対に逃がさないって目をしてんな。逃げる気ないけど。」
『なんか怒った感じが小さくなってるね。冷静になったのか集中したのか。』
餌って言う認識から敵になったという事か。牙二本とも折られたらそうなるか。怒ってたから何とかこちら有利に進めてられていたのに、冷静になったらどうなるか。攻撃パターンも殴り合いから変わるかもだし、要注意だな。
「防御は任せてるぞ。」
『任せろー!』
立ち上がったサーベルタイガー型はその傷をものともしない様子で走り出す。先ほどまでの殴り合いから一転スピード勝負に持ち込んできた。
「チーター型より遅いのに早さ勝負とは、最初の作戦が使えるか?」
『アスール達に足止めしてもらう?』
「重さが足りなくて駄目だったが、今度はあいつが走ってるから有効的に使えそうだな。」
だけど、この牙をこのまま手放すのももったいない。
「アスール達はあいつの足を掴んだ時この牙を突き刺すことはできるか?出来るなら、さっきのように飛ばされても牙が残るからより万全な足止めになるんだが。」
『足に刺すことはできるかもー?でも、深く刺すのは難しいんじゃない?それこそ重さが足りないよー。』
牙を使って地面に縫い留めることは出来ないか。それでも傷を付ける遊撃が出来るなら攻撃の手が増えるってことでいいのか?でもそうなると、殴りで対抗するのが出来なくなるし。
『…守りは僕がいれば万全だよ!』
迷ってるのが思考で伝わったか。だが、ありがたい!
「アスール達はこの牙をもって最初の作戦だ!走り回ってるあいつに追いつけとは言わないから、適当なところで罠を張っておけ。ヴァイスがいるところの反対辺りに待機だ。振り払われてもいいようにその牙を突き刺してやれ!」
僕の言葉を聞いたアスール達が跳ねていく。意味は無いかもしれないけど姿は『隠して』おくか。
「ヴァイスは僕の近くに。アスール達の方にあいつが留まるようにどうにかするぞ。」
『僕に考えがある!』
そう言ったヴァイスはさっそく僕から離れて宝石を纏う。僕の守りはどうするつもりなのか。…とりあえず空間に『擬態』して、匂いを『隠して』おこうかな。これでいきなり僕に攻撃が来たらヴァイスのせいだ。
宝石を纏ったヴァイスは光が反射してキラキラしている。洞窟なのにどこから光が注がれているのかは考えないものとする。たぶんヒカリゴケがあるんだよ。その反射している光を表面に纏った宝石を動かすことで一点に集中させ、今もなお走り回るサーベルタイガー型に焦点を合わせる。さすがに発火はしないが熱は高くなっていたのか、光の発射点であるヴァイスに突っ込んでくる。足を振り上げ爪で切り裂こうとしたとき、ヴァイスも勢いを付け爪に向かって体当たりをする。
当然勢いを付けたところで重さが足りずヴァイスが弾き飛ばされるが、思っていたところよりも速い接触だったためかサーベルタイガー型の足も止まる。そこがちょうど待機していたアスール達の近くだったのは狙ったことなのか。
「アスール!ルージュ!後足に牙を突き刺せ!ヴァイスは高く投げるから宝石纏って顔にぶつかって足止め頼む。下がり始める時に合図をくれたら『自重軽減』を切って重さを戻す。足止め出来てる間にアスール達も宝石を纏って杭打ちしろ!」
弾き飛ばされたヴァイスを回収してサーベルタイガー型の方に向かって高く投げる。多少ずれてもヴァイスが修正してくるだろう。たぶん大丈夫!
その間にアスール達は牙を突き刺すのに成功。まだまあ切れ味が落ちてないのは流石だな。
『そろそろ落ちるよ!』
「了解!」
ヴァイスに掛けた『自重軽減』を解く。そして、牙を刺して飛び跳ねようとしてるアスール達に『自重軽減』を使用。助走もなく跳ねるからそこまで高くはならないだろうが、掛けないよりはマシだろう。
ヴァイスが顔に当たるのとアスール達が牙を打ち込むのは同時になった。上手い事足止め出来て良かった。
これであいつの足止めは完璧だろう。あとはこいつの危険性を排除するだけ。
「といってもあいつの牙は足止めに使ってるし、とどめを刺す方法をどうするか。」
アスール達を手に装備して殴り殺す?『格闘術』もないのに難しいか。『爪術』じゃ攻撃を弾くならまだしもとどめはさせないだろう。
「ヴァイス。あいつの動きを完全に止めることはできるか?」
『後足の拘束にアスール達が必要ないから、頑張れば行けるかも?』
「それなら完全に動きを止めてくれ。これからやることがどれくらいの時間かかるか分からないし、やった後に暴れられても困るからな。」
『君を守るという事なら万全を期してやらせてもらうよ!』
ヴァイス達が三匹がかりで動きを止めさせたサーベルタイガー型に近づき手を額に置く。
「『噛み砕く』」
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