黒豹狩り
「ウェアウルフが持ってた『爪術』をお勧めしないってなんでだ?それを使えれば僕も多少は戦闘が出来るようになってヴァイス達も楽になるだろう?」
『君が『爪術』使うと、最悪体爆散するかもしれないけど、使いたい?僕は君にまだ死んでほしくないんだけど?』
「体が爆散?それはどういうことだ?」
よく話を聞くと、ウェアウルフが持っていた『爪術』はウェアウルフに合うようになっているため、あのウェアウルフと同様の速さや力が無いと、動きに矛盾が大きく出過ぎて『爪術』と体が合わず、爆散するらしい。
ウェアウルフの速さは目で追えないほどだったけど、あの速さを出そうと『爪術』が無理を始めるんだって。能力って意思あるんだな。
『能力は成長するんだよ。持ち主に合うように最適化されていくみたいね。』
同じ能力でも、発現直後と長年使ってきた人なら、長年使ってる方が強いでしょ?とヴァイスの言。それを聞いて納得。ウェアウルフに最適化された能力を使うには、最低でも動きが目で見えて、防ごうと体が動き出さないと、あの速さには耐えられそうにないな。
「『爪術』はしばらく封印しておこうか。もっと強くならないと、解析した能力も満足に使えないとはね。」
現状出来ることは把握できたので、ヴァイスと雑談しながらアスール達を待つ。
「そういえば、駄目そうだったら帰っておいでと言ったけど、捕まえられたときの事を伝え忘れたな。探しに行った方が良いか?」
『僕たちは敵意と魔力で見てるって言ったでしょ?あの子たちの魔力は見えてるから、心配しないでいいよ。それにそろそろ帰ってきそうだし。…もっと壁に近づいて、座ってた方が安全かも。』
「そろそろ帰ってくるか。どっちが帰ってくるんだ?アスールとルージュで行った方向違うだろ?そちらを正面にしておいた方が良いと思うんだけど。それに座ったら即行動に移せなくなるが大丈夫か?」
ヴァイスが座っておいた方が良いというなら座るが、さっきの背を向けた途端襲ってきたのもあるし、正面は向いておきたいんだが。
『どっちが帰ってくるってー、どっちも?それぞれが追われてちょうどに帰ってきそう。だから、ガブリといかれない様に、僕が守りやすいように小さくなってて。それと『隠れる』も使うとより安全かも。』
駄目そうだったら帰っておいでとは言ったけど、二匹同時に帰って来たのか。さすがのヴァイスも二匹同時に帰ってくるとは思わなくてちょっと焦ったか?いつもなら、どんな攻撃でも問題無ーい!って言って、僕に指示なんて出してこなかったのに。まぁ、言われたらその通りにするけど。僕は弱いからね。
壁を背にしてヴァイスの後ろで小さく座っていると、アスールが右側から、ルージュが左側から同時に森から飛び出してきた。そのあとを覆うように、アスールの方はさっきのより全体的に大きく、牙の鋭さが増したような真っ黒の豹が。ルージュの方は逆に小柄で素早さが増し、爪の鋭さが増したような真っ黒な豹が。狙う魔物に個性が出てきたね。
『ルージュの方が速くここにつきそうだし、そっち先にするかなー。アスールはそのまま逃げておいてー。』
「アスール達で捕まえられなかったから逃げてきたんだろう?逃げ続けるなんてできるのか?」
『それは問題ないよー。捕まえられなかったから君の言う通り戻って来ただけだし。黒い猫の爪や牙くらいじゃあの子たちだって傷つかないよー。それに、見つけたところからここまで逃げてきたんだから、続けることだって出来る出来る!』
そのわりにアスールと黒豹型の距離縮まってるけど、あれは遊びなの?
遊びだわ。ぎりぎりで牙の当たらないところで遊んでるわ。僕と追いかけっこしたときと似た感じだし。アスールは問題ないね。そのままがんばれー。
『ルージュはそのままこっち来てー。そして僕の手前で地面で伸びて。僕が猫の動き止めたら前脚捕まえてねー。』
ルージュは言われた通りヴァイスがいるこちらに、僕の方に逃げてくる。黒豹がルージュ目がけて爪を振るう瞬間、出鼻を挫くようにヴァイスが前脚付け根に体当たりをする。
突然の衝撃に動きを止めた黒豹の爪を覆うようにルージュが前脚を拘束していく。体伸ばして両前脚を拘束するのは大変そうだけど、捕まえた後の縮みは見てると面白い動きをするね。
ヴァイスが後ろ脚を拘束し動けなくなった黒豹は体を横たえる。
『もう大丈夫だよー。顔の方は牙が危ないから、僕の方から近寄って食べちゃってー。』
今も逃げてるアスールを早く助けるために食べるか。
ちらっとアスールの方を見ると、遊びが悪化していた。飽きてきたのか知らないけど、頭の上に乗るのはやめてあげようよ。
『アスール!そのまま倒しちゃってもいいけどー?』
ヴァイスにそう声を掛けられると途端に真面目に逃げ始めるアスール。倒せるなら倒しちゃってもいいけど?
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