通路を抜けたら昭和 居酒屋
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・店・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
え?似たメニューを知ってる?それは偶然です。偶然ですってば。
今日は何を飲もうかな。
うん。今日は昭和を感じる居酒屋にしよう。
札幌市営地下鉄南北線すすきの駅から狸小路を西側に向かって徒歩6分。
狸小路6丁目の左側に位置する狭い路地裏の居酒屋だ。
ここは凄い。何が凄いかと言うとまず場所が見つけづらい。藤井フミヤが良く来店することでお馴染みのラーメン喜来登(きらいと)という店の斜め向かいくらいに入口があるのだがこれがまぁ狭くて見過ごしやすい。まるで視える人にしか視えない異界への入口という様相だ。
入口の看板には「歴史と伝統 狸小路市」と書いてある。確かに歴史はあるだろうが何故このような狭い路地なのだろう。狸小路の裏路地という立地から色々と勘ぐってしまうところだ。
その通路を辿っていくと2~3軒目右手にその店は存在する。店名は忘れた。ガラス戸の広いカウンター席が目立つお店だ。
本当に突然威勢の良い居酒屋がポツンと佇んでいるという印象なのだ。私も飲み仲間から紹介されなければ入らなかっただろう。狐に化かされたという話を昔話で聞くがまさにそのような様相を彷彿とさせる。入店してしまえば普通に昭和の香りを残した居酒屋で気軽にタイムスリップした気分を味わえるので、郷愁を味わいたい人もしくは普通の居酒屋には飽きたという人にオススメだ。
それにしても令和にこのような路地やお店が残っていることに驚愕する。
普通なら再開発の名の元に取り壊されて大規模で綺麗な複合商業施設になりそうなものだが、未だにひっそりと佇むその姿はまさに令和の時代にも連綿と残る奇譚のようではないか。
もしかしたら怪異に化かされてるのかも知れない。
想像を膨らませほくそ笑みながら来店するのも面白いのでオススメだ。
そう言えば昨今はいわゆる昔ながらの日本風の妖怪というか怪異奇譚が流行らなくなって久しく思う。
建物や服その他諸々が洗練されてきただけでなく、街に死角となる暗闇がほとんど無くなったことも原因のひとつなのだろう。昔は「薄暗くて怖い。気味悪い。」という感覚が多少なりともあったが昨今はほとんど無いのではなかろうか。セキュリティ面ではもちろん現在のように死角が少ない方が良いのは間違いないが、暗闇への恐怖に伴う見えないものへの畏怖、危険への警戒心など元来備わっていた感覚が鈍るのではないかと危惧する。
第六感とまで言わないが、五感で感じる事象から危険を察知する能力は日常生活にも役に立つ。分かりやすい例だと車の運転などにも応用でき安全な日常を送ることが出来る可能性が高まるので、危険を感じる能力はいつでも磨いて欲しいと思う今日この頃だ。
ちょっと何言ってるか分からなくなってきたので元に戻ろう。
そんな危険を感じる能力がある人間であれば近寄らないであろうこの店。
勇気を出して入店してしまえば何てことない普通の居酒屋だ。
魚介類は北海道なので間違いない。乾杯!(終わりの始まり)
マグロの刺身盛り。旨い。間違いない。切り方も盛り付けもお世辞にも美しいとは言えないが、ネタが新鮮でぷりっぷり。口に入れるととろける味わい。酒が進む。
タコぶつ。美味い。大雑把でデカめなサイズが良い。
ホッケ焼き。美味い。こちらも焼き加減は火を通しすぎて少しジューシーさに欠けるがこの店にそんな上等な料理を求めては行けない。昭和風のガヤガヤと一緒に味わうだけで美味しいのだ。
ということでここは昭和風のガヤガヤ感やお祭り感を味わうのに丁度良い。個人的には長居する店というより、少しだけ味わってメインの店に行くゼロ次会的なお店の印象。気になる方はチェックして欲しい。
また来ます!
ごちそうさまでした。