冷酒が好き 日本酒
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・店・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
え?似たメニューを知ってる?それは偶然です。偶然ですってば。
今日は何を飲もうかな。
うん。今日は日本酒にしよう。
上野駅から南側のアメ横沿いに御徒町方向に向かって徒歩3分。
呑める魚屋 ○草だ。
しかしいつ来てもアメ横は観光客でごった返してるから歩くのも大変だ。
半分以上外国人と言っても過言では無いのではなかろうか。
いつもはJR高架下の東側にある飲み屋街をうろついてるので西側に位置するアメ横は新鮮に感じる。昔は海産物や乾物、肉などの食料品の他、服カバンその他雑多な店がところ狭しと並んでおり、ダミ声のおっちゃんが威勢よく売り文句を大声で通行人に呼び掛けてる姿が印象的だったが、今や半分以上飲食店というか立ち飲みや飲める屋台のような感じのアジアン屋台街となっており、時代の流れを感じさせる。わざわざ海外に行かなくても気軽に異国情緒を味わえるスポットと言って良いだろう。
ちなみに日本酒にしようとか言ったけど実は二次会なのだ。エビスビール飲み放題の店を予約したのだが、前日飲み過ぎたせいでほとんど飲めず欲求不満が溜まったので、逆に考えたら日本酒をゆっくり味わうには丁度良いのではないか?ということで来たワケだ。せっかく飲みに来たのに酔っ払わず帰宅する選択肢など有り得ない。呑んだくれの風上にも置けないというヤツだ。うん?意味不明?安心しろ。私自身もちょっと何言ってるか良く分からない。
この店の特徴としてまず挙げられるのが店舗の狭さだろう。横幅と奥行が約4mx2m。そんな狭いスペースにお客さんがひしめき合っている。コロナ禍の真っ只中にぎゅうぎゅう詰めで立ち飲みしてる様子を見たら正気を疑うレベルだ。とあるサイトにこのお店へのインタビュー記事が載ってたのだが、コロナ禍では実際大変だったらしい。営業時間が12時~19時30分だったので休業要請に従っても協力金を得られず、その上アメ横のテナント料は銀座の一等地並みに高いとのこと。マジか。こんなドヤ街のような場所なのに良くそんな強気な値段設定を出来るものだ。人が多いだけで価値が高いということか。勉強になる。また良くそんな危機的状況を乗り越えたものだ。私だったらストレスで胃に穴が開いたことだろう。店主の決断と覚悟には賞賛の念を禁じ得ない。
元々このお店は鮮魚店としてスタートしたとのこと。だがその頃のアメ横は鮮魚の買い出しに来るお客さんが減少傾向だったらしく、厳しい状況だったそうだ。そこで当時としては珍しい、店頭で刺身を食べられる体験型の鮮魚店なら大きな差別化を図れると考え、店頭で食べられることを売りにした店舗にした、と。確かにただの鮮魚店だったらスルーしちゃうけど、店頭で生牡蠣の殻を剥くパフォーマンスとその場で美味しそうに食べてる姿を見せられたらついつい足を止めて興味深く見てしまう自信がある。そりゃもう日本酒一択というヤツだ。店主の狙いはズバリ的中し、店頭で食べられるサービスの方が鮮魚の売り上げを超えるようになったことから現在の形態に変えていったらしい。人生万事塞翁が馬というヤツか。
このお店は鮮魚店を営んでいただけあり、魚介類が他店と段違いレベルの新鮮さで脂も載っており何を食べても美味い。仕入は日によって変わるのでその日のオススメを試して欲しい。
本日頼んだメニューはこちら。
・かつお塩たたき
・イカの肝和え
・肝なめろう
そして忘れてはいけない。メインとなる日本酒はこちら。(すべて冷酒)
・月山(がっさん)
・生酛(きもと)
・田酒(でんしゅ)
・千代(ちよ)むすび
・雪の茅舎(ぼうしゃ)
いつも思うけど日本酒って難読漢字多くないか?有名な田酒とかは読めるけど、よほど有名じゃないと日本酒って知らない銘柄の方が多いと言っても過言ではない。銘柄を決める人たちに共通して厨二病っぽさを感じるのは私だけだろうか。
なおこの店は注文ごとに現金を払っていくスタイルだ。明朗会計でよろしい。一部例外はあるもののほぼ全商品ワンコイン。日本酒に至っては例外なくワンコイン。激安すぎる。どんぶり勘定にも程がある。しかも提供されてる酒が軒並みラインナップが良い。ただの客なのに原価率を心配してしまうレベルだ。
またここはツマミも酒も提供がメチャクチャ早い。
サクッと飲みにも最適なお店と言えるだろう。乾杯!(終わりの始まり)
かつお塩たたき。普通かつおのたたきと言えば皮付近が焙られて独特の風味と一緒にしっかりとした身を楽しむあの形を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。私もそのひとりだ。だがここのたたきは違う。まずほとんど焙られた形跡を感じない。実際には焙っているのだろうが見た目はほとんど生の刺身に近い。また身も淡いピンクに近い赤身から中心部になるに従い濃いめの深紅のグラデーションとなっている様が非常に美しく、まさにレベルが違うと言わざるを得ないビジュアルだ。一緒に提供される苦みを感じる薬味と一緒にポン酢で頂く。なんだこれは。旨すぎる。今まで食ってきたかつおのたたきは一体なんだったのかと自問するレベル。日本酒を飲む際の最高のアテと言って良いだろう。
イカの肝和え。最初食べた時「あれ?ほとんど味が付いてない?」と思ったが、皿に振り掛けられている細かい岩塩と少量の陳皮のようなスパイスに付けて食べるようだ。うん。優しい珍味。これも美味い。やはり酒飲みにはこーゆー珍味が欠かせない。
肝なめろう。なめろうと言えばアジが定番だと思うが肝のなめろうは初めて見た。肝も酒の肴としては定番だから間違いないだろう。パッと見はアジのなめろうというかネギトロのような見た目に万能ねぎと白髪ネギが散らしてある。うん。これは味付けされてるからそのまま食べられて旨い。間違いない美味さだ。
さすが元鮮魚店。仕入れに絶対の自信を持っていることが伺える。
この店の良いところは仕入先もメニューと同様に並べているところだ。私が訪問した時は10社の仲卸業者や水産加工会社の短冊が掲示されていた。出自の明確な食材を扱っていることをアピールすると共に、お客さんが鮮魚料理を口にするまでの間に、様々な業者の方が関わっていることを知ってもらいたいとの思いがあるらしい。このような信念を持ったお店と知ったらますます応援したくなる。大いに飲食して応援せねば。
そして日本酒の数々。
月山(がっさん)。日本酒では珍しい島根県 吉田酒造のお酒。日本酒が初めての人にも美味しいと思わせるお酒。日本酒なのにぐびぐび飲めてしまう。これは危険だ。(満面の笑み)
生酛(きもと)。福島県 大七酒造のお酒。こちらも美味い。1杯ホントにワンコイン(500円)で良いの?経営大丈夫?と心配になるレベルだ。
田酒(でんしゅ)。青森県 西田酒造のお酒。言わずと知れた銘酒。美味い。こうやって飲み比べると上手い表現は出来ないが、それぞれに特徴がありどれもハイレベルな美味しさを提供してくれることが分かる。良質なお酒を造ってる皆様方およびこれらを流通してる人々、そして美味い酒を厳選して提供してくれるお店の皆々様。全員に感謝しかない(合掌)
千代(ちよ)むすび。こちらも鳥取県 千代むすび酒造のお酒。慶応元年(1865年)創業なのに公式インスタアカウントがあるのが面白い(笑)時代の流れを感じさせる。こちらも美味い。
雪の茅舎(ぼうしゃ)。秋田県 齋彌酒造のお酒。正直ここまで飲んだきた日本酒の中でダントツに好みの味だった。美味い。
日本酒のポテンシャルをとことん味わえるラインナップに大満足。田酒以外初めてだったがすべて美味しかった。おかげで好きな日本酒の種類が増えた。仕入れ担当の人には感謝しかない。
本当はもっと飲んでいたかったが、ひっきりなしに新規のお客さんが来店するため、基本的に30分、2杯までで退店してもらってるとのこと。なるほど。長居させるのではなく回転率を上げて色々なお客さんに楽しんで欲しいという方針か。知らないとは言え時間も杯数も超過してしまって申し訳ない。あとこちらも知らなかったがテレビでも紹介されたことのある有名店らしい。なおこのお店にインタビューしてるサイトを後日見たところ、コロナ禍で感染防止策として立案した制限らしいが、飲み過ぎ防止にも役立つし回転率アップにも繋がる良い施策なのでそのまま残すことにしたとのこと。うん。それで良いと思う。これからも頑張って欲しいと心底思う良店だった。
ひとつ言うことがあるとしたらトイレが無いことくらいだ。この近辺には飲み屋はたくさんあるのにトイレはほとんど見当たらない。トイレだけの利用者が多く辟易としたのか、近隣のゲームセンターは常に故障中となってるし、最近はパチンコ屋さんも潰れてる店が多いので気軽に借りることが出来ずトイレ難民となりかねない。まぁそのような状況になるまで深酒するなということなのだろう。フリーライダーを防止する意味で言うと有料トイレのサービスがあっても不思議ではないと思うが立地上ペイ出来ないのかも知れない。次回来店する際は二次会ではなく一次会でなおかつトイレで充分に排出した後に訪問しようと思う。物凄い良店なので是非チェックして欲しい。
また来ます!
ごちそうさまでした。