上野で 昭和が色濃く残る居酒屋
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・店・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
え?似たメニューを知ってる?それは偶然です。偶然ですってば。
今日は何を飲もうかな。
うん。今日は昭和な雰囲気が色濃く残る居酒屋にしよう。
上野駅の南側、JR高架下の「アメ横商店街」と線路を挟んで反対の東側。
飲み屋街を歩いて4分。酒蔵 神田○子だ。
レビュを見ると味は悪くないがお値段がそれなりにするので頻繁に来訪するのは難しいようなことが書かれており躊躇してたのだが勇気を出して訪問。
外観も昭和な雰囲気が色濃く残ってるが内装も渋い。飴色に変色した短冊型の手書きメニューが店内にずらりと飾られておりテンションも上がる。早速瓶ビールで乾杯!(終わりの始まり)
入店時に店員さんからお一人二品をご注文頂いておりますと説明されるので飲みながらじっくりとメニューを眺めることとする。さてさて何を注文しようかな。
焼き蛤がこちらの売りだそうだがメニューを見たら「時価」と書かれてるし快復して間もないので大丈夫だとは思うけど貝はちょっと怖いな。。ということで今回はスルー。どうやら九十九里のハマグリとのこと。
ハマグリと言えば江戸時代に流行った滑稽本「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」にも出てくるほど当時からメジャーな食材のひとつだったようで平安時代にはハマグリの貝殻内側にカラーの美しい絵を描いて神経衰弱のような遊びも流行ったのだとか。
またハマグリの貝殻はひとつとして同じ形が無いらしくピッタリ合うのが一対しかないことから良縁に巡り合えることや仲が良い夫婦となれる祈願用の縁起物としても使われるようになったらしい。
そんなことにも使われていたのかと驚くと同時に、ピッタリ合わないハマグリのことを「ぐりはま」と呼び、それが見込みが外れるとか正しい道を踏み外すという意味に転じて「グレる」という言葉に変化したとのこと。まさかハマグリから由来した言葉だとは1ミリも知らず驚いた。
東海道中膝栗毛も当初は箱根だか伊勢くらいまでの道中を出版予定だったらしいが予想より売上が良いので続編を出す形で京都も越えて大阪まで旅する形となったらしい。現代でも人気がある作品の引き伸ばしはよく聞く話なのでその辺りは昔から変わらないのだなと面白さを感じる次第だ。
それにしても私もつい最近まで知らなかったし特に興味がなかったのだが出版というのがどれだけ大変かお分かりだろうか。
現代であればコンピュータを使用するので当時とはまた違った苦労もあるのだろうが江戸時代にそんな便利なものなどあるわけがない。そう。木版画である。
小中学生の頃に彫刻刀で木版画を授業で習った方もおられるのではなかろうか。アレをページ数分準備するのである。
もちろん挿し絵だけでなく文字も全て手彫りという過酷さ。黒一色ですら大変なことは容易に想像できるのにカラーの場合、色別に異なる手彫りを行うのである。考えただけで気が遠くなりそうだが当時の職人たちは元となる絵や文字を書く人だけでなく木彫りや紙へ印刷する摺師も含め分業で作業してたとのこと。本の歴史というのは大変な苦労の上に成り立っているのだなと尊敬の念すら覚えるくらいだ。
江戸川橋駅の徒歩圏にある印刷博物館には葛飾北斎による有名な富嶽三十六景のひとつ「神奈川沖浪裏」の版木レプリカが色の数分展示されてるので興味のある方はチェックして欲しい。
脱線した。元に戻ろう。
頼んだメニューはこちら。
・厳選赤身馬刺し
・イカ姿焼き
厳選赤身馬刺し。馬刺し好きとしては頼まざるを得ない上に料理長お薦めとまで掛かれてたら注文せざるを得ないだろう。肉の周囲が少し灰色気味だったので初見では失敗したかな?と思ったがニンニクと辛味噌を付けて食べると今まで食べた中でも一~二を争うレベルに美味い。しかも冷凍モノを解凍したという感じがせず柔らかい熟成肉という印象。今まで九州の甘めな醤油と一緒に味わうばかりだったがほんの少し酸味のある辛味噌に実に合って旨い。コレはこちらの店に来訪したら是非食べて欲しい逸品と感じた。
イカ姿焼き。薄っすら醤油味が付いてるが個人的にはそのまま焼いた方が好み。だが旨い。馬刺しと共に日本酒が進む。
頼んだ日本酒はこちら。
・奥の松 純米吟醸原酒
奥の松 純米吟醸原酒。福島県 奥の松酒造のお酒。香りはほとんど無し。辛口らしいが口に含むと米の旨味が広がって旨い。甘口寄りと言っても良さげ。
総じて大満足。店員さんに料理二品の注文を急かされるのと上野近辺にしてはお値段高めなのが気になるところではあるが雰囲気および料理には満足。昭和の香りが色濃く残る居酒屋で飲みたい欲は充分満たされることは間違いないこちらのお店。気になる方はチェックして欲しい。また来ます!
ごちそうさまでした。