非日常を感じる ベトナム料理
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・店・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
え?似たメニューを知ってる?それは偶然です。偶然ですってば。
今日は何を飲もうかな。
うん。今日はベトナム料理にしよう。
札幌市営地下鉄南北線すすきの駅から狸小路を西側に向かって徒歩6分。
ベトナム屋台 アジア飯 suEzou パ○チョスだ。
昨今インドだけでなく韓国やタイ、台湾など様々なアジア系料理の専門店が増えたことは認識されてるだろう。それこそ昭和の時代だと和風、洋風、中華の他はインド料理くらいしか無かったと記憶している。インド料理も長年掛けてじわじわ浸透していったから、その時代から比べると隔世の感を覚える。異文化が馴染むのには時間が掛かるということだろう。
異文化と言えばスーパーマーケットで取り扱う食材も長年掛けて変化があった。例えば昔はエリンギなど置いて無かったしパプリカは海外を紹介するテレビに映る色鮮やかな食材という印象しか無かった。ピーマンって見た目地味だなと思ったものだ。ジンギスカンは北海道にでも行かない限り縁が無い食材だったしパクチーに至っては苦手云々以前に存在すら知られていなかった。スパイスも昔はテーブル胡椒と七味唐辛子、山椒程度だったのに今やカレー専門店に置いてあるような様々なスパイスが当たり前のようにそこらのスーパーで見かけることが出来る。時代というものは移り変わるものなのだと感じさせる一幕だ。
アジア系の中でも個人的に馴染みが薄いのがベトナム料理だ。
正直ベトナム料理で有名なメニューって何?と聞かれて思い浮かぶのは「フォー」と「生春巻き」しか無い。試しにググってみたら結構色々な種類のメニューが紹介されていたが、ひとつもピンとくるメニューが無かった。雑誌なども含めたマスメディアでこれらのメニューに触れて来なかったので馴染みが無さすぎる。アジア系料理を食べたい気分なら中華で良くね?となる思考停止状態が良くないのだろう。とは言え最近タイ料理に関しては多少馴染みが出て来た。小さい一歩と言えるのではなかろうか。
ちなみにこの店はクラシックの飲み放題を提供している。
それはもう飲み放題一択でしょう。乾杯!(終わりの始まり)
さて今日は何を頼もうかな?
この店は店名に「屋台」を入れるだけあって、店外、店内ともに屋台風の印象を強く打ち出している。チープなテーブルに安そうなビニール製のテーブルカバー、そしてチープな椅子。店内にはベトナムらしい可愛らしい丸い電球カバーが店内を暖色系の色で染め上げ異国情緒を盛り立てる。わいわいがやがや雑然とした雰囲気。そうそう。こーゆーのが良いのだよこーゆーのが。
メニューを見てみると「グリーンカレー」や「トムヤムクン」「カオマンガイ」などタイ料理も混ざってる。やはりベトナム料理のみで勝負するのは難しいと店主さんも考えているのだろう。比較的一般的な日本人に馴染んで来たタイ料理も提供することでアジアン料理を楽しんで頂き、純粋なベトナム料理は時間を掛けて徐々に馴染ませていく。その方針には心底賛同する。私にはベトナム料理は分からないがきっと情熱を持って取り組んでいるのだろう。これからも頑張って欲しい。
メニューの書き方も工夫を凝らしていることが随所にみられる。
例えば「ダナン名物!パインチャン ヘオ」としか書かれていなかったらどう思うだろう?どのような料理が提供されるか想像できるだろうか?私には1ミリも想像出来ない。せいぜい「パイン」と書いてあるからパイナップルが入った料理かな?と思うレベルだ。焼く炒める揚げる煮るetc・・・調理方法も全く想像出来ない。
しかしメニューには続けて「焼き豚・玉子・ハーブ・なます・野菜をライスペーパーで巻いて食べる楽しい料理」と注記してくれている。なるほど。そのような料理なのか。やはり聞き馴染みが無い料理はきちんとした説明文が必要だと感じた次第だ。と言うか比較的馴染みのある「いわゆる生春巻きみたいな料理です」と書いて欲しいと思ったのは秘密だ。
引き続きメニューを見ていく。レモングラス。これは苦手だからパス。
冷やしきゅうりトムヤム。お、これは美味しそう。要チェック。
焼きナス~カーティムヌンヤオン。焼きナスしか分からん。カーティムヌンヤオン。何だコレは、呪文か?食の保守派である私としては冒険は出来ない。パス。
オクラのスパイス和え~ゴイダウパプ。「オクラのスパイス和え」までだったら美味しそうだけど、同様にカタカナ部分が分からない。パス。
そんな感じでメニューを見て行くこと約10分。カタカナが混ざったメニューはほとんど弾かれることとなった。ベトナム料理屋さんに来た意味とは。
結局注文したのはこちら。
・生春巻き(海老+グリーンハーブ+アボカド)
・空心菜のにんにく炒め
・エビと鶏肉のグリーンカレー炒め
中華かタイ料理屋行けば良かったじゃないかって?私もそう思う。
辛うじてベトナムを感じるのは生春巻きくらいか。まぁ徐々にで良いだろう。
ちなみにアボカドも今では食卓に馴染みがある食材だけど、これも認知度と普及率が高くなったのは昭和後期以降のひとつだ。何なら「アボガド?アボカド?」と呼称も曖昧だったレベル。私は未だに「アボカド」と言う度に違和感を覚えている。
アボカドは女性に人気だが正直私には何が良いのか分からない不思議な食材のひとつだ。食べればまぁ美味しいとは思うけどわざわざ好んで食べようとは思わない。「森のバター」と呼ばれているそうだが、そもそも私自身がバターを好んで食べないことが最大の要因だろう。にんにくバターのように風味付けで調理してるものは大好きだがバターそのものを直接食べたいと思わない。それがアボカドに食指が動かない理由なのではないかと思う。
空心菜も認知度と普及率が高くなったのは昭和後期以降ではなかろうか。ガチの中華料理屋さんには置いてあったのかも知れないが、いわゆる町中華と呼ばれる店ではメジャーな食材では無かったと記憶している。これも日本人がアジアン料理に抵抗が薄くなったから普及した食材のひとつだろう。空心菜自体にはそんなに味は付いていないが、シャキシャキ食感がごま油と相性が良く最高の酒のつまみとなる。空心菜炒めが提供されてる場合注文一択だ。
グリーンカレーも同様に昭和後期以降にメジャーとなった料理だ。1980年代後半のバブル期に海外旅行に行く人が増えた結果、ブームが起きたらしい。考えてみたら昭和後期以降にメジャーになった料理が多いがバブルも影響してたのだろうか。
学生時代は歴史に全く興味が持てなかったが、歴史は地続きであることを知って以降、面白いと感じてる。友人の話によると今の子供たちは歴史を年号の暗記で覚えるのではなく、こちらで何が起きた結果あちらで何が起きた。という関連性で学んでるらしい。昔は「日本史」「世界史」に分かれていたが、今では人類の歴史という感じで、海外を含め日本の歴史もひとまとめで学んでいるとのこと。ある国の歴史が他国の歴史にも影響してるというヤツだ。何それ面白そう。もっと知りたい。
盛大に脱線した。元に戻ろう。
飲みながら待ってるうちに料理が到着。
生春巻き。美味い。ただコレは酒のつまみという感じではなく、おやつに食べるサラダという印象。軽いのでいくらでも食べられるよう錯覚してしまう。散々アボカドについて色々言ったが美味いものは旨い。正直すまんかった。
空心菜のにんにく炒め。間違いなく美味い。一緒に飲んだ長年の飲み仲間は初めて食べたらしいが、その旨さに感動して箸が止まらなかった。ふふふ。空心菜炒めが美味しいことを布教出来たようで何よりだ(笑)
エビと鶏肉のグリーンカレー炒め。コレも美味い。グリーンカレーは辛いのが苦手な人には厳しい料理だが、辛いのが得意であれば是非挑戦して欲しいメニューのひとつだ。若干クセがあるので好みが分かれるが、一旦好きになるとクセになる旨さがある。私も正直初めて食べた時は普通のカレーと違いすぎて受け付けなかったが、しばらく経つとまた味わいたくなる不思議な魅力がある味だった。そんなグリーンカレーがぷりっぷりのエビとゴロゴロした鶏肉と絡み合ってる。好きな人にはたまらない味だ。
そんなこんなで完食。料理の味は良いのだが残念ながら提供が遅い。
こちらは飲みながら待ってるからあまり気にならないが、飲んでないお客さんは待ちくたびれてるのではなかろうか。それさえ無ければ良店だと思う。個人的には美味しかったし屋台感を味わえたので満足。また来ます!
ごちそうさまでした。