広島で 保命酒
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・店・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
え?似たメニューを知ってる?それは偶然です。偶然ですってば。
今日は何を飲もうかな。
うん。今日は広島県の保命酒にしよう。
心身の体調を崩したため長期休暇をいただくこととなり、気分転換の一端として広島旅行をすることにしたのだ。
事の始まりは糖質制限ダイエットだった。当時は極端な糖質制限ダイエットにハマっており、ほぼ炭水化物系を摂取しないダイエットを進めていた。
やったことのある方であれば分かると思うが外食産業で出てくる料理はほぼ全て炭水化物である。特にラーメンが大好きな私は地獄のようなダイエットで今となっては何故自ら辛い道に足を踏み入れたのか謎としか言いようがないが、とにかく当時は糖質を目の敵として摂取制限に勤しんでいた。
しかしながら糖質を制限しつつ必要カロリーを摂取するのは並大抵のことではない。いかに炭水化物からカロリーを摂取してるのかを噛み締めながら過ごす日々だった。スープカレー屋さんに行ってもライス無しで食べるというストイックぶりだったが今考えると勿体ないことをしたものだと改めて思う今日この頃だ。
当然万年カロリー不足となるのだから体重は徐々に減っていくがとても健康的とは言い難い。そんな状態の中、窓が無い部屋でストレスに晒されながら細かい仕様書を読んでいたところ、ある日突然部屋が眩しすぎて目を開けてられない状態となったのだ。
とても仕事してられる状態ではなかったので早退させて頂いたのだが、屋外はもっと眩しくて仕方ない。当時は自転車通勤してたのだが危険すぎて乗るワケにもいかず押し歩いて帰宅するハメとなった。
その他にも動悸がしたり諸々の身体の不調が出るようになり医者で診察して貰うも異常なし。しかしながら眩しく感じる症状をはじめ不調を訴える諸症状は未だに発生する。何故なのだ?と思うも通常の医者では解決できず、かと言って日常生活には支障が出まくる状況。これらの状況を同僚に伝えたところ、精神疾患のひとつなのでは?とのこと。
藁にも縋る思いで精神科医を受診したところ正確な病名は失念したが精神科の症状であるとのこと。それから長期休暇が始まった。
自分の意思と無関係に瞳孔が開く現象は落ち着いたものの、どうにも気分が落ち込んで全てにやる気が出ない。せっかくの休みだというのに漫画や動画を見るといった受動的な行為すらしようという気力が湧いて来ない。コレは確かにおかしい。しかしながらずっと家にこもりきりというのも精神的に良くない気がしたのでコンビニまで気分転換に出掛けようと思ったがゆっくりとしか歩けない。自分の中ではスタスタ歩こうと思ってるのだが身体が思ったように動かないのだ。
何だろう。ゲームコントローラーで自身を機敏に動かそうとするのだがデバフか何かが掛かって鈍重にしか動けないとでも言えば良いだろうか。目の前を買い物用のガラガラ(名称不明)を押しながら歩く腰の曲がったおばあさんがいるのだが、それより遅くしか歩けないのだ。コレは地味にショックだった。
ようやくコンビニに辿り着き、さて買い物をしようと何気なく柱に沿って貼ってある鏡を見たところ光と感情を一切感じさせない漆黒の瞳を宿す自分が映り「あ、コレはヤバいヤツだ」と自覚せざるを得なかった。ただゆっくりとしか動けないとは言えコンビニで買い物すること自体は良い気分転換となったので定期的にリハビリとして通うようになった。
そのような一番酷い状態を抜け出した頃、一度は行ってみたかった広島旅行にいくことに。本当はしまなみ海道を自転車で渡ってみたかったが言うても療養中なので、途中で何かあった場合周囲に多大な迷惑を掛けることになるかも知れない。サイクリングは完全復活してからのお楽しみとすることにして全て公共交通機関での移動とすることにした。
広島と言えばお好み焼き。ということでランキング上位のお店を三店舗ほどお邪魔したがどこで食べても旨かった。さすが本場というところだろう。上位なだけあってどこも行列が出来てたのでゆっくりビールを飲むワケにもいかずそそくさと退散するしか無かったのが残念な次第だ。もう少し寂れたお店の方がゆっくり飲めて良かったのかも知れない。
そして広島と言えば外せないのが厳島神社だろう。瀬戸内海に浮かぶ赤い鳥居が有名だが、神社自体も満潮時は海に浮かんでるかのような建築となっており幻想郷と言っても過言ではない。そら平清盛も「平家にあらずんば人にあらず」と驕り高ぶっても仕方ないと思ったがこの台詞は平清盛本人のものではないらしいし何なら後世の創作だそうだ。混乱させるのは止めて欲しいと切に願うばかりだ。
厳島神社の海に浮かぶ赤い鳥居を眺めながらフェリーで宮島に到着。奈良ほどではないが鹿が堂々と闊歩しており自然との共生を感じさせた。
宮島のホテルも予約していたので満潮、干潮どちらも楽しめたうえ牡蠣料理も満喫することができ大満足。更にはロープウェイで山頂付近まで楽しむこともでき最高の一日だった。
しまなみ海道をバスで往復したり尾道ラーメンを食べに行ったり大満喫していたが、鞆の浦(とものうら)というところにも観光に行った。
なぜそこに観光に行ったのか全く覚えてないがおそらく広島観光のひとつとして紹介されていたのだろう。歴史も何も知らないまま訪問したのが正直なところだ。
実際に訪れてみると確かにひなびた昔ながらの雰囲気を残しており、コレは確かにロケ地として採用されるだろうなと納得のいく景色だった。何も知らずに訪れたので見るもの全てが新鮮で写真を撮りまくりながら観光してたのだが、その中で見つけたのがこちらの岡本亀太郎本店だ。
保命酒(ほうめいしゅ)と呼ばれるお酒を取り扱っており、万治2年(1659年)に歴史がスタート。福山藩の御用酒として代々中村家が独占的に製造・販売を行っていたが、江戸幕府崩壊に伴い暖簾分けされたとのこと。ペリー来航した際は食前酒として供されたという。それは是非味わってみるしかない。
店員さんの説明によるとどうやらこちらはみりんをベースに16種類の薬味を漬け込むことで造り込んだお酒とのこと。みりんベースのお酒は初めてなので驚いたが試飲してみるとまろやかで飲みやすい。
どうやら元々医師が考案した薬用酒のようで、現代で言う養命酒の元祖と言えば良いだろうか。嗜好品として飲んでも良いが薬用として嗜んでも良しとのこと。まさに今の自分にピッタリなお酒ではなかろうか。
かなりもったりとした甘味が強めな印象だったので少量ずつ楽しむようなお酒なのだろう。梅、杏子、生姜の三種類セットを購入することにした。
こちらの保命酒が効いたのか広島旅行でリフレッシュ出来たのが良かったのかは不明だがその後徐々に症状は快方に向かい無事復帰することが出来たのは有難かった。心身ともに健康なことが一番だと改めて感じた次第だ。
しまなみ海道を自転車で走れなかったのとオタフクソースの工場見学が出来なかった点が悔やまれるが次回の楽しみが出来たと思えば良いだろう。総じて大満足な広島旅行だった。気になる方は是非チェックして欲しい。また来ます!
ごちそうさまでした。