第67話 決勝に向けて
「決勝進出チームが出そろったな」
「ふむふむ」
世界ダンジョンバスター競技大会のフィナーレとなるダンバストーナメント決勝。
決勝の舞台に立つ4チームが、昨日決定した。
チーム・ウィンストン、チーム・陣、チーム・ドーン、そしてチーム・アカシア。
「あいつら、結局尻尾を出さなかったのよね。
決勝ではじっくり調べさせてもらうけど」
優勝候補筆頭はもちろんチーム・ウィンストン。
もぐもぐとみかんを頬張りながら、コタツの主となっているブレンダとルークさんのチームだ。
「……ていうか、何でブレンダは毎日俺んちに入り浸ってんだよ?」
「あら」
「数々の番狂わせを起こして我がUKの某ブックメーカーが5000倍のオッズを付けたことを後悔しているという、噂のユウさんを偵察するために決まってるでしょ?
胴元のマフィアに消されないように気を付ける事ね」
「おいおい……」
クールな眼差しでそう言われると少し気になってしまう。
「…………冗談よ」
「いまの間はなんだよ!?」
彼女のブリティッシュジョークは、たまにマジな事もあるので油断ならない。
「本当は魔王の監視だけれどね」
……目的は立派だが、朝から晩までコタツでゴロゴロしながらミアとゲームで対戦しているようにしか見えないんだが。
「……魔王ミアライーズの手の内を暴くことも大切な仕事よ」
口の端にカステラの欠片を付けながら目を逸らすブレンダ。
絶対ただ遊びに来てるだけだな。
「んご~♪」
昼飯の牛丼を腹いっぱい詰め込んだあと、ドレイクを枕にしてお腹を出しながら豪快にいびきをかいているミア。
「魔王様はこんなだぞ?」
むき出しのお腹が冷えないよう、毛布を掛けてやる。
魔王様が風邪をひくのかは知らないが。
「うぐっ!?
……貴方の家が快適過ぎるのが悪いのよ。
コタツのヤバさはアニメで知ってたつもりだったけど……反則よこれ」
結局コタツの魔力に負けただけだと白状したブレンダは、降参だとばかりにテーブルに突っ伏す。
艶やかな蒼髪から覗く尖り耳が赤く染まっている。
「わたしはブレンダおねーちゃんが遊びに来てくれて嬉しいよ!!」
「……ありがと」
隣に座ったリーサの頭を撫でるブレンダ。
フェリナも含めて4姉妹のようでとても微笑ましい。
「まさかの決勝進出を果たしたダークホースの偵察、という目的は本当よ?
なんなのあの”戦技リンク”ってスキルは」
リーサからカステラのおかわりを受け取ったブレンダは体を起こすと座椅子に座りなおす。
「俺とリーサとミアのマナを完全に同調させることでスキルを完全同期させる技……リーサがちょっと改造してくれて、俺の武器に魔法スキルを”溜められる”ようにしてくれたんだ」
「むふ~」
「……こともなげに言わないでくれる?」
まあこちらには元の世界最高の魔導士と魔王が揃っているのだ。
少々のチートは朝飯前だ。
「もしかして、”リアルスキル”でも使えるの?」
ブレンダの探るような言葉に、思わずリーサと顔を見合わせる。
「試したことはないけど……」
「行けるような気がする」
ダンジョン内に比べ、使えるスキルは大きく劣るが、俺たち3人は現実世界でもスキルを使うことが出来る。
「まあ、スキルポイントを馬鹿食いするだろうから、使うことはないだろうが」
ミアの”食事”にそなえ、スキルポイントを20万ほど口座に入れてあるが、リアルで戦技リンクを使ったらこれが全部吹っ飛ぶと思う。
いくら配信の成功で収入に余裕が出来たとはいえ、試す気にはならない。
「なるほど……つくづく規格外ね貴方たち」
ため息をつきながら、ミアに負けず劣らず爆睡するフェリナをジト目で見るブレンダ。
「すぴ~♪」
ぷっ
「って!! コタツの中で屁こくんじゃないわよ!!」
「まあフェリナだし」
「家ではこんなもんだよ?」
「私を手玉に取った特級オペレーターの姿がコレ!?」
だらしなくくつろぐフェリナの姿に、頭を抱えるブレンダ。
「まあまあ。
そろそろ晩ご飯の準備しよ、ブレンダおねーちゃん」
「こたつむりたち、おきろ~!!」
どかーん!!
「「ぎゃ~!?」」
決勝を控えているというのに、いつも通りな明石家なのだった。
*** ***
「さて」
「ごくっ」
俺はルークさんの隣に立ち、生唾を飲み込んでいた。
『いよいよ始まります! 第1回ダンジョンバスタートーナメント決勝戦!!
栄光を掴むのは、どのチームか!!』
「…………」
こっちを見て意味深な笑みを浮かべる陣さん。
我関せずと言ったチーム・ドーン。
『思わぬ番狂わせもあった今大会、やはり初代チャンピオンは世界ランク1位のチーム・ウィンストンか!
はたまた、堅実にランクを上げて来たチーム・ドーンが逆転するのか。
Bランクの2チームが嵐を巻き起こすのか。
この戦いは、絶対に見逃せません!!』
わあああああああああああっ!!
ドームを埋め尽くした5万人近い大観衆から、大歓声が上がる。
「それでは出場選手の皆様は、所定の位置についてください」
レフェリーの指示に従い、転移用魔法陣の前に立つ。
「にひ、がんばろーね!」
「余らが世界一じゃな!」
自信満々な様子のリーサとミアの頭を撫でると、不思議と気持ちが落ち着いた。
いよいよ、決勝戦が始まる。




