第61話 パーティバトル(後編)
「さあってっと……どこに隠れていますかねぇ?
暫定トップのユウさんたちは」
「「「…………」」」
俺たちが潜んでいるのは天然洞窟を模した部屋。
床から天井まで、たくさんの鍾乳石がそびえたっており、視界が悪い。
「このフロアにいるのは間違いないようだぜ? レイジ」
「了解だ。 Bランクダンジョンバスターがかくれんぼとか、情けないですなぁ!」
フロアの中心にはちょっとした広場があり、そこにやって来たレイジたちはフロアに響き渡るような大声でこちらを挑発している、
(レイジが前衛、トージが後衛か?)
俺は鍾乳石の影から慎重に二人の様子を観察する。
レイジは黒のボディスーツで全身を固め、警棒のような得物を持っている。
武器の形状は自由とはいえ、ダンジョン内のモンスターを相手にするのに適した武器には見えない。
(レイジの得物はグレートソードだったはずだが……)
武器を変えたのだろうか?
同じく後衛のトージも黒のボディスーツを身に着けており、身長が同じくらいなふたりの区別をつきにくくしている。
得物は銃なので後衛特化の装備だろう。
『やけに現代的な装備……妙ですね』
フェリナの言葉に頷く。
ダンジョン内に出現するのは、ゴブリンやオーク、ドラゴンなどファンタジー世界のモンスターだ。
奴らに”適した”武器という事で、ロングソードやグレートソード、ボウガンなどファンタジーRPGに出てくる武器を選択するダンバスが多い。
銃器は便利だが、速射性が高いというメリットはスキルポイントの消費が激しくなるというデメリットでもあるのであまり使われない。
(《《対人戦》》に特化させてるのかもな)
ノーツ財閥として、ダンバス競技大会で結果を残す……。
そのためにあのふたりが雇われたのなら、ありうることかもしれない。
「まあいい、ここで決めさせてもらう」
レイジとトージは前のギルド時代から素行不良で、半グレとつるんでいるという噂もあった。女癖も悪く……リーサとミアの教育上、非常によろしくない!
「お~い、がきんちょども?
隠れてないで出て来いよ!
おにーさんたちが、タノシイ事を教えてやるぜ?」
「あのネコミミの方は将来絶対エロくなるわ。
今のうちに調教しとくか! 俺の指テクでアンアン鳴かせてやるぜ?」
「「ギャハハハハ!」」
……言ってるそばからこれである。
さっさとコイツらから二人を引き離そう。
コンコンッ!
俺は鍾乳石を叩いてリーサとミアに合図を送る。
レイジとトージはフロアの中心にある広場におり、リーサとミアのオリジナル魔法を使えば一網打尽に出来るだろう。
コンッ
バキッ!
ふたりから了解の合図が返される。
広域魔法で殲滅すると獲得スコアは低くなるが、さっさと終わらせたほうがいいだろう。
「……甘いぜ、ガキ共!
”プリズン・ブレイク”!!」
カッ!
だが、リーサたちの魔法が発動するより一瞬早く、レイジがスキルを使う。
「……な!?」
『ダンジョン壁の破壊スキルです!』
ドガガガガガガガガッ!!
レイジの両手から衝撃波が放たれ、フロアを構成する鍾乳石を破壊していく。
今レイジが使った”プリズン・ブレイク”は、フェリナが言った通りダンジョンの壁を壊すためのスキルで迷宮系のダンジョンを探索する時に便利だ。
だが、Sランクダンジョンでもせいぜい数階層くらいの広さしかないので、スキルポイント消費量の割に使いどころがなく、あまり使われることはない。
それをわざわざ使ってきたという事は……。
「まずい!」
レイジの視線はリーサたちが隠れている方向を向いている。
レイジたちがすでに俺たちの居場所を把握していて、こちらの作戦を読んでいたのなら。
ドガガガガガッ!
「きゃあっ!?」
「くっ!!」
積み木のように崩れ落ちる鍾乳石。
リーサとミアの悲鳴が聞こえる。
「リーサ! ミア!」
レイジの狙いは、厄介なオリジナル魔法を使ってくるリーサとミアを足止めする事だ。慌ててダマスカスブレードを抜き、鍾乳石の影から飛び出るが、一足遅くトージが魔法を発動させてしまう。
「喰らいな! バーストLV5!!」
「な!?」
汎用魔法のLV5は、Aランクでないと使えないはずでは!?
ズッドオオオオオオオオオンッ!!
驚く間もなく、大爆発がリーサたちの隠れていた辺りを襲い……。
【チーム・アカシア、リーサ選手、ミア選手に致命的ダメージ】
【リスポーンまでの時間370秒】
「ふ、不覚……」
「きゅう」
崩壊する鍾乳石で動きを止められ、LV5の魔法まで喰らったのだ。
あっさりと戦闘不能にされてしまうふたり。
「レイジ、トージ、よくもっ!!」
いくら競技だと分かっていても、大事な二人を倒されて頭に血が上る。
「”攻撃強化技10%”!」
俺はバフスキルを剣に掛けるとレイジたちに向かってダッシュする。
「……へっ」
「実験成功だな、トージ」
プリズンブレイク、バーストLV5ともに、スキルポイント消費の激しいスキルだ。
スキルポイントの制限があるこのダンジョンでは、おそらくもう打ち止めだろう。
「くらえ!!」
ザンッ!
一応警棒で防御する姿勢をとって来たものの、バフスキルで威力を強化した俺の剣技はあっさりとレイジたちを戦闘不能にするのだった。
【チーム・レイジ全滅】
【リスポーンまでの時間、520秒】
ジャッジの声がレイジたちの全滅を告げ、スコア速報が更新される。
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■Bブロック1回戦第5試合スコア速報
チーム・アカシア 478
チーム・レイジ 421
チーム・グリューン 321
チーム・パイロン 73
チーム・レッド 32
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「大丈夫か? ふたりとも」
レイジたちがリスポーン地点に戻ったのを確認し、俺はがれきの下からリーサとミアを救出する。
一度のバトルで全滅しなかった場合はリスポーン地点に戻されず、パーティメンバーが復活するまでその場にとどまる必要がある。
「いたた……ごめんユウ。
わたしたちが隠れてた場所、バレてたみたい」
「おのれ、面妖な術を使いよるわ。
それに余に対する不埒な言動……今度は目にモノを見せてくれる」
ふたりとも土埃で汚れているものの、身体的なダメージはなさそうで安心する。
『……アイツらの言動については、本部に厳重に厳重に抗議しておきますので』
「……マジで頼むぞ?」
「ゆ、ユウとフェリナお姉ちゃんが怖いよ!?」
「ほほう」
過度な対戦相手に対する挑発という事で、レイジたちにはペナルティが課せられたものの。
その後順位は動かず、俺たちのチーム・アカシアとチーム・レイジが2回戦に進出する事になったのだった。




