第60話 パーティバトル(前編)
「Los(行け!!)」
ガガガッ!
大剣の一撃をショートソードで辛うじて逸らす。
ひゅっ
同時に、障害物の影からの狙撃。
「ちっ!」
ドシュッ!
体をひねって鎧で受け止めたものの、防具の使用回数が1回減ってしまう。
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■ステータス
HP :140/200(-20)
MP :0/0
攻撃力 :100(+50)
防御力 :160(+50)
素早さ :20
魔力 :0
運の良さ:20
■装備/スキル
武器:ダマスカスブレード(50×3回)
防具:ダマスカスメイル(50×1回)(-1)
特殊スキル:攻撃強化技10%(100×3回)
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俺が相対しているのはドイツ代表のBランクダンジョンバスター。
転移した位置から近いパーティを狙ったのだが、運悪く一番の実力を持つパーティと当たってしまった。
「Angriff! Angriff!(攻撃しろ!)」
俺がパーティのリーダであることは把握しているのだろう。
前衛と狙撃手からの攻撃が激しくなる。
このままだと押し切られてしまうが……。
「ファイアLV2!」
「カーズLV2じゃ!」
ブオオオオッ!
「!?!?」
俺が攻撃を受け止め、少し距離を取ると同時にリーサたちの魔法が敵の前衛を襲う。
「Runter(伏せろ!!)」
障害物に隠れた狙撃手から注意が飛ぶ。
「ya!」
慌てて柱の陰に隠れる前衛。
この辺りは巨大な石の柱が何本も立っており、遮蔽物には事欠かない。
射線を塞げば魔法は来ないと考えたのだろう。
だが……!
「甘いな!」
「ユウ! 右から4つ目の柱の裏!」
「了解だっ!」
俺は前衛役が退避した隙を突き、一気にダッシュする。
リーサの指示に従い柱の陰に回り込むと……。
「!?」
そこには慌てた様子の狙撃手がいた。
「”攻撃強化技10%”!!」
「くらえっ!!」
バフスキルを使った俺は、躊躇なくダマスカスブレードを振り下ろす!
ザンッ!
モンスターに比べて軽い手ごたえ。
「Gyaaaa!?」
俺の剣を受けた狙撃手は、悲鳴と共に吹き飛ぶ。
【チームグリューン、ディルトに致命的ダメージ】
【行動を制限します。リスポーンまで546秒】
「ディルト!?」
チームリーダがやられたことに焦ったのか、回復役の女性ダンジョンバスターが障害物の影から姿を現す。
「Nein! Deckung!!(馬鹿、隠れろ!!)」
慌てて前衛が指示を飛ばすがもう遅い。
「にひ☆
フレア・バースト!!」
「トドメじゃ!
ダークバスター!!」
ズッドオオオオオオンッ!!
リーサとミアのオリジナル魔法が同時にさく裂し、相手の前衛と回復役を纏めて吹き飛ばしたのだった。
【チームグリューン全滅、リスポーン時間に90秒のペナルティ】
『広域破壊魔法によるマイナス補正がありましたが、獲得スコアは376、ユウさんたちがトップに立ちました』
「よし!!」
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■Bブロック1回戦第5試合スコア速報
チーム・アカシア 376
チーム・グリューン 301(リスポーンまで521秒)
チーム・レイジ 182
チーム・パイロン 73
チーム・レッド 32
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回復役のダンジョンバスターが強力な回復魔法を使ってきたため時間が掛かったが、
何とか倒すことが出来た。
「にひ、ドイツさんたち気付かなかったみたいだね」
「リーサも見事な隠密行動であったぞ?」
しゅたっ、と柱の上から飛び降りてくるリーサとミア。
ふたりは小さな体躯を生かして、柱と天井の間にある僅かな隙間に潜んでいたのだ。
『とはいえ、皆さんスキルの使用回数が多くなっていますね。
むかって右側の通路奥に”エイドステーション”を確認……手早い確保を!』
「了解だ」
試合時間の制限は120分だが、何度も戦っているとスキルポイント切れになってしまう。
そのため、スキルポイントを補充できる”エイドステーション”と呼ばれるオーブがダンジョン内に設置されているのだが、それをいち早く発見するのがオペレーターの腕の見せ所である。
「リーサ、ミア。
いったん回復するぞ」
「は~い!」
「うむ、案内するがよい!」
俺たちはフェリナのガイドに従い、手近なエイドステーションに向かうのだった。
*** ***
「ふひぃ~、きゅうけ~」
床に座り込むとローファーを脱ぎ、んんっと伸びをするリーサ。
俺たちはエイドステーションを確保すると、休憩タイムを取っていた。
「オーブに込められたスキルポイントは、1000か」
手早く武器と防具の使用回数、スキルの使用回数にスキルポイントを割り振っていく。
「……腹が減ったの」
ぐうううううっ
「……食うなよ?」
盛大に腹の音を響かせるミアからレイドステーションのオーブをガードする。
「わわわ、分かっておるぞ?」
俺のツッコミに赤くなるミアだが、こっそりと垂れかけたよだれをぬぐったのを見逃す俺ではない。
「試合が終わったら、ごはんにしよ?」
「会場の近くに、超盛り天津丼を出す中華料理屋があるんだが。
1.5㎏の六甲山盛りを食いきれば、料金がタダになる」
俺は食いきれたことはないけどな。
だが、この提案はハラペコ魔王様にはひどく魅力的に聞こえたようで。
ぴくんとネコミミと尻尾が動く。
「な、なんじゃその魅力的な店は!?
リーサ! お主と余で10杯は食べるぞ!」
「さすがに食べ過ぎだよ!?」
……明石家が出禁となる店がまた一つ増えそうだった。
『ふふっ』
『現在の試合展開ですが、チーム・グリューンがリスポーン。
わたくしたちから距離をとったようです』
「ふむ」
チーム・グリューンは現在2位。
俺たちともう一度対戦するのは不利と判断して、他のチームを狩りに行ったのだろう。
『チーム・レイジと他の2チームが接触……あら?』
他の3チームの動向を説明しようとしたところで、フェリナが言いよどむ。
「どうした?」
彼女には珍しい反応だ。
『え!? チーム・パイロン、チーム・レッドがともに戦闘不能……チーム・レイジは真っすぐこっちに向かっているようです!』
「な、この短時間でか!?」
レイジたちがいくらBランクといっても、パイロンもレッドもCランクダンジョンバスター3人組のパーティ。
こんな一瞬でやられるはずがないのだが……。
「リーサ、ミア!
すまんが休憩は終わりだ」
「ふお?」
「何か起きたようじゃな?」
このエイドステーションはすり鉢状のフロアの底にあり、レイジたちのチームを迎え撃つには不利な地形だ。
『西に50メートルほど行ったところに、障害物の多い部屋があります。
そちらで迎え撃つのが良いかと』
「了解だ!」
さすがはフェリナ、迎撃に適した場所を既に探してくれていたようだ。
俺たちは回復魔法でHPを回復すると、手早く迎撃地点へ向かうのだった。




