第38話 紅いドラゴン
ウオオオオオオンッ!!
「……聞き間違いじゃないな」
水晶で出来たダンジョンに響き渡る獣の咆哮。
音源まで距離があるのか、何重にもエコーして聞こえる。
「モンスターかな?」
「いや、まさか……」
固定化された鉱山にモンスターが出現するなど、聞いたことがない。
むしろモンスターがいないからこそ、特別なダンジョンになるのだ。
「近隣のダンジョンから侵入したのか?
いや、ありえない」
オリジナルマインは唯一無二の貴重なダンジョン。
24時間体制で監視されており、モンスターが侵入したなら検知されるはずだ。
「フェリナ! 中層にモンスターらしき反応はあるか?」
俺はフェリナと通信をつなぐ。
『こちらでも確認中です…………感あり! 中層B-77地点、ユウさんたちのいる場所から500メートルほど奥にモンスターがいます!
タイプは……アンノウン! オリジナルモンスターの可能性ありです!』
「馬鹿な!」
オリジナルモンスターは、ダンジョンのボスとしてしか出現しない。
コアが存在するオリジナルマインではありえない事。
「フェリナ、念のため監視所の連中と一緒に避難を!」
いまの俺達のランクなら、大抵のオリジナルモンスターに苦戦することは無いはずだが、このダンジョンは外に繋がっているのだ。
万が一、に備えておくことは必要だ。
『了解しました! おふたりとも気を付けて!』
フェリナもその事を分かっているのだろう。
即座に動いてくれる。
「ユウ……」
「全周警戒! 頼りにしてるぞ、相棒」
「うんっ!!」
モンスターの属性によっては、リーサのフレア・バーストが切り札になる。
スキルポイントでカバーできる分、むしろダンジョンの中の方が安全だ。
俺はどこか嬉しそうなリーサを連れ、慎重に奥へと向かうのだった。
*** ***
「マジか……ドラゴン?」
「で、でっかい!」
水晶の影から慎重に広間の様子をうかがう。
バキッ!
紅い鱗を持った巨大なドラゴンが、壁から生えている水晶を壊しては奥の方に運んでいる。
「アイツはなにをしているんだ?」
ダンジョンの壁を破壊するモンスターなど、見たことがない。
「むむぅ……このダンジョンの壁が綺麗だから集めてるんじゃ?」
「いやいや、カラスじゃあるまいし……」
ウオオオオオオンッ!
ゴオオオオオオオオッ!
紅いドラゴンは、雄叫びと共に炎のブレスを水晶の山に浴びせている。
「マズいな……」
ヤツの行動の意味はさっぱり分からないが、炎のブレスを吐いたことから属性は火だろう。
切り札になるはずのリーサのフレア・バーストが効かないかもしれない。
「あれ……この感じ?」
ちょうどドラゴンはこちらに背を向けている。
チャンスだ。
「一撃で倒す!」
Sランクダンジョンに出現するレベルのモンスターを、外に出すわけにはいかない!
■ステータス
HP :1500/1500
MP :300/300
攻撃力 :5400(+300)
防御力 :400(+300)
「”攻撃強化技15%”!」
「”増幅の腕輪+”」
攻撃力にスキルポイントを追加チャージし、バフスキルと固有装備を使う。
「行くぞっ!」
俺はダマスカスブレードを抜き放つと、ドラゴンの背中に向けてジャンプする。
「ユウ!? ちょっ!」
ヴィイインッ!
ダマスカスブレードが紅く輝く。
「食らえっ!」
必殺の間合い、絶対にかわせない。
最初のSランクダンジョンで戦ったドラゴンのように、俺の一撃が奴を真っ二つにすることを、ほとんど確信していたのだが……。
ガキイッ!!
「な!!」
渾身の力で振るった剣は、あっけなくドラゴンの鱗に弾かれる。
グルルルルル……!
それでも相当の衝撃を感じたのか、唸り声と共にこちらを振り向くドラゴン。
「リーサ! 逃げろっ!!」
防御力を極限まで高めれば、ドラゴンの攻撃を耐えることは可能だ。
まずはリーサを逃がし、攻撃をいなしながら隙を突いて……。
「ユウ、その子は!」
「心配するな、からなず後から行くから!」
俺はリーサにサムズアップを送り、スキルポイントを防御力にチャージする。
グオオオオオオオオオッ!
巨大なドラゴンは俺に向かって大きな顎を開き……。
「ドレイク君だよ!」
ぺろり
「……は?」
俺の頬を優しく舐めたのだった。
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