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第2話 俺のスキルポイントは52万です

「ええと、すいません……どういうことですか?」


『……アプリをご覧ください』

『申し遅れました、わたくし管理局事務官フェリナ・ノーツと申します』


 フェリナさんの言葉に従い、アプリを起動する。


 ======

 ■個人情報

 明石アカシ ユウ

 年齢:25歳 性別:男

 所属:東兵庫第25ギルド

 ランク:F

 スキルポイント残高:520,275(+520,000)

 スキルポイント獲得倍率:0.75

 口座残高:123,500円

 ======


「……は?」


 ふたたび目が点になる。


「ご、ごじゅうにまん……?」


 リーサも全く同じ表情をしている。


「え、Sランクの年収レベルじゃないか」


 確か昨年の世界ランク10位の年収が55万とかだったはず。

 ちなみに俺の200年分。


『250ポイントを振り込むつもりが、つい指が滑りまして』


 どんな滑り方だよ……とは思うが、このスキルポイントは返却した方がいいだろう。

 俺はそう申し出たのだけれど。


『いえ、お恥ずかしい事ですが……ノーツ家の娘として、この不始末を表ざたにせず処理したいのです。手数料も必要となりますし』


「た、確かに」


 スキルポイントは現金に準じる物なので、いちどに大量にやり取りした場合申告が必要になる。いわゆる手数料的な”税金”を納めるのだが、52万ポイントとなるとその金額は百万近くにもなる。

 もちろん俺にそんな金はない……フェリナさんにもなさそうだ。


 地図アプリに自宅からほど近い地下鉄の工事現場がマークされる。


『もちろん報酬は現金でお支払いします』


 提示された現金報酬は20万円。

 悪くない……どころか破格の報酬である。


 ただ、隠蔽の片棒を担ぐのはどうなんだろう?

 先日も誤給付された給付金を使いこんで逮捕された男が世間を騒がした。


『大丈夫です! 細かい所はわたくしの責任で何とか致しますので。

 ……助けて、頂けないでしょうか?』


 フェリナさんの声は必死で真剣で……何か事情があるのかもしれない。


「……わかりました」


「すまん、リーサ。

 少しだけ待っててくれるか?」


「はいっ。

 ユウならだいじょうぶ、気を付けてねっ!」


 小さな手を力いっぱい振って俺を見送るリーサ。

 それだけで元気100倍である。



 ***  ***


「アカシ ユウ様、お待ちしておりました」


「えっ」


 まさか、フェリナさん本人が待っているとは思わなかった。

 彼女は優雅な仕草で電子署名が施された名刺を渡してくる。


 スマホのアイコンより少し幼い印象だ。

 もしかしたら、10代かもしれない。


 さらさらと風になびく金髪と吸い込まれそうな碧眼は夕焼けの光を浴びてもなお鮮やかだ。


「このたびは大変なご迷惑を。

 恥ずかしながら、わたくしの実家は少々特殊でして」


 ここに来る途中で思い出したが、ノーツ家はダンジョンバスターの仲介業で財を成した新興財閥だ。

 その娘ともなれば色々難しい事情があるのだろう。


「こちらの地下鉄工事現場に出現したダンジョンに、Sレアの”スキルポイントガチャ”が出る確率が高いため……なにとぞ」


(なるほどね)


 ごくまれに、”ガチャ”と呼ばれるレアアイテムがダンジョン内に出現する。

 オーブの形をしたそれは、触れることで様々な効果を発揮する。


 大量にスキルポイントが入手できたり、例外的に”所有”出来るアイテムが出現したり。


 今フェリナさんが述べたのは前者のガチャだ。

 ガチャで獲得したスキルポイントで、”手数料”をカバーする算段だろう。


 ”ガチャ”の出現確率は本当にランダムで、様々な要素から出現予測の精度を高める研究がいろいろな企業で行われていると聞くが……。

 フェリナさんのノーツ財閥でもそれを行っていて、その情報を俺に提供してくれるという事は。


 マジに本気で、本当に困っているのだろう。


「”モニター”させて頂きますので、よろしくお願いします」


 軽自動車の運転席に納まるフェリナさん。


 ここまで来たら、さすがに詐欺ということは無いだろう。

 俺はフェンスをくぐり、地下鉄工事の現場に降りていく。


 目的の物がほどなく見えてきた。

 直径10センチくらいの魔法陣。

 ”ダンジョン”の目印だ。


『振り込んだスキルポイントは、自由に使って構いませんので』


「ありがとうございます」


 それはありがたい。

 使った分だけ返せば問題ないという事だ。


 通常の”スキルポイントガチャ”で出てくるポイントは最低5,000ほど。

 俺は2,000ポイントをステータスに割り振った。



 ======

 ■個人情報

 明石アカシ ユウ

 年齢:25歳 性別:男

 所属:東兵庫第25ギルド

 ランク:F

 スキルポイント残高:518,275(-2,000)

 スキルポイント獲得倍率:0.75

 口座残高:123,500円


 ■ステータス

 HP  :200/200

 MP  :100/100

 攻撃力 :200(+10)

 防御力 :200(+10)

 素早さ :100

 魔力  :100

 運の良さ:100


 ■装備/スキル

 武器:ブロードソード(10×30回)

 防具:皮の鎧(10×30回)

 特殊スキル:ヒールLV1(10×30回)、ファイアLV1(10×10回)

 ======


(や、やべぇ……!)


 普段俺が使うスキルポイントの、10倍以上を割り振ったのだ。

 Aランク……とはいかないが、Cランクに迫るステータスと装備。


(いつもこうだと最高なんだけどな)


 そう思いながら俺は魔法陣に手を触れる。


 この魔法陣はダンジョンからモンスターが溢れ出ないようにする”蓋”であり、コイツが開発されるまで、モンスターとの戦いは大変だったと聞く。

 ()()()、コイツが間に合っていれば……とは多くのダンバスが抱く想いだ。


『あっ……すっすすすすす、すいません!

 言い忘れてたことがございましたっ!』


 やけに慌てたフェリナさんの声がスマホから聞こえる。


「え?」


 何だろう。

 魔法陣は既に回転し始めており、ダンジョンへの転移も間近だ。


『こ、このダンジョンは……Sランクでしたっ!』


「…………はあああああああっ!?」


 ばしゅん


 今さら叫んでももう遅い。

 俺はなすすべなくSランクダンジョンに送り込まれた。



ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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