第14話 ユウとリーサの秘密
「ふむ」
「う~ん」
俺とリーサはノートPCに表示された数字を見て唸る。
彼女と”調査”を始めて2か月余り。
狩ったダンジョンはD~Fランクを中心に50以上。
ダンバスの仕事は順調だ。
ランクもCに上げ、余ったスキルポイントを売却して貯金も増えた。
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■個人情報
明石 優
年齢:25歳 性別:男
所属:F・ノーツギルド
ランク:C
スキルポイント残高:13,500
スキルポイント獲得倍率:の@も*%
口座残高:3,910,800円
称号:ドラゴンスレイヤー
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今月など、ダンバス西日本ランクの末席にランクインして、注目ダンジョンバスターとして表彰されたほどだ。
「とりあえず、”文字の変化パターン”は大体つかめたよ」
リーサがカタカタとキーボードを叩くと、スキルポイント獲得倍率文字の変化履歴がずらりと表示される。
あ(も@%
ぐ%ん+%
ゆ?ふ#%
げ*ぴ@%
の&い=%
……
(……あれ?)
一見すれば、何の意味もない文字の羅列。
だが、これに似たものをどこかで見たことがある気がする……どこだっただろう。
「フェリナお姉ちゃんに頼んで、世界じゅうのあらゆる言語とぶつけてみたりしたんだけど、まだなにも……って、ユウ? なにしてるの?」
不思議そうな顔で俺を見るリーサ。
それはそうだろう。
さっきから俺はPCの画面を横から見たり、上から見たり……最後には逆立ちして見ているのだ。
「もう、逆さまにしてほしければするのに」
父の奇行に苦笑いのリーサ。
PCを操作しようとするのだが……。
「リーサ、ストップ!!
そのまま、270度だけ回転させてくれ!」
「ふ、ふお?」
頭の中で何かがひらめいた。
俺は逆立ちをやめると、押し入れの中を漁り出す。
確か……この辺りに。
「ユウってば、どうしたんだろ?」
首を傾げつつもデータを画像化し、加工してくれるリーサ。
「おおっ! これはリーサの入学式!
ぶかぶかの制服を着たリーサ、可愛かったなぁ……今も超かわいいけど」
「あっ、これは七五三の時!
そうだ、小学校の卒業式に向けて着物を仕立てないとな!」
「あうっ……ユウ、はずかしいよぅ」
「……はっ!?」
いかんいかん。
リーサの記録全集(15巻、続々続刊中)の魔の手にハマっていた!
俺は丁重にアルバムたちをどかすと、その奥にある金庫を取り出す。
「あれ? そんなのあったっけ?」
リーサが知らないのも無理はない。
なにしろ、リーサが生まれてからは開けたことが無いのだ。
カチャ
7桁の暗証番号を入れ、金庫の扉を開く。
「あ、それって……」
そこに入っていたのは、古ぼけた分厚い本と……少し汚れたマント。
本は《《ドラゴンの皮》》で丁重にカバーされており、地球のどの国とも違う文字がエンボス加工で埋め込まれている。
「もしかして、わたしの……?」
「ああ、形見……だ」
「……っっ!」
リーサはその目を大きく見開いた。
*** ***
「すこし、思い出した……かも」
震える手で、本の表紙を撫でるリーサ。
……少し俺とリーサの事を語った方が良いだろう。
20年間に突如発生したダンジョン……のちに”ブレイク・インパクト”と呼ばれるダンジョンの同時発生は、世界中を大混乱に陥れた。
最初のダンジョンバスターが出現するまでの数日間、人類は防戦一方だったらしい。
それはここ日本でも例外ではなく……幼かった俺は当時住んでいた街ごとモンスターの奔流に飲まれた。
だが、次に目覚めた時、俺は見知らぬ建物の中にいることに気付く。
中世ヨーロッパによく似た世界。
だがその世界には魔法があって……すぐに俺は、”異世界転生”したのだと気づいた。
俺の母親はラノベ作家で、絵本代わりにそういうお話を読んでいたんだ。
俺が転生したのはとある宮廷魔導士の家。
そこに仕える助手の息子としてだった。
宮廷魔導士には可愛い一人娘がいた。
銀色の狐耳と尻尾を持ち、輝くエメラルドグリーンの瞳を持った少女。
リーサ・レンフィード。
すぐに仲良くなった俺たちは、一緒に成長していった。
だが俺たちが15歳になった日、王国が魔王に襲われる。
数年に渡る血みどろの戦いの末、俺たちは魔王を討ち果たすことが出来たのだけれど……。
リーサは命に関わる深い傷を負い、俺が異世界に居られる期限も迫っていた。
リーサから形見としてマントと、彼女の魔法知識の全てが詰まった魔導書を受け取った俺は、この世界に戻った。
15歳の姿で帰還した俺は、生活のためにダンジョンバスターを始め……なんとか生活できるようになったとき、リーサが赤ん坊の姿で俺の前に現れたのだ。
*** ***
「えへへ、ろまんちっくだよね♪」
小さい時の事を思い出しているのか、うっとりとした表情を浮かべるリーサ。
「まったく……」
人の苦労も知らないで。
ダンジョンが出現してから”異世界転生”した人間は何人もおり、異世界から帰還した俺の処遇はなんとかなった。
だが、異世界で結ばれた恋人が娘として転生してくる、というケースは初めてだったため、当時の政権まで巻き込んでの大騒動に発展してしまった。
幸いなことに同様の例が相次いだことから、リーサは俺の娘として戸籍が与えられ今に至る。
「…………」
ああ、向こうの世界でリーサと別れた時の事を思い出してしまった。
ぎゅっ……
「もう、離さないからな……」
俺はリーサを引き寄せ、思いっきり抱きしめる。
「えへへ……。
やっぱりわたしのヒーローは違うなぁ」
うっとりしていたリーサだが、次の瞬間いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「……向こうではあれだけ情熱的にわたしの処女を奪っておいて。
こちらでは理想の娘に育て上げようなんて……さすがユウ、変態さんですね?」
「う”う”う”っ!?」
あえて昔の口調に戻したリーサに、思いっきりうろたえてしまう。
「ふっふっふのふ、実は発育の良いリーサちゃんのゆーわくに、いつまで耐えきれるでしょう?」
リーサは制服姿のままだ。
タイツに包まれたすらりとした脚が目に入る。
「だああああっ!
いまは魔導書の話だろ、リーサ!」
「は~いっ☆」
尋常じゃなくかわいい笑みを浮かべるリーサ。
はぁ……やはり俺はこの子に一生勝てそうにないのだった。




