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第13話 ノーツ家の思惑

「お義父さま。

 フェリナ、参りました」


 フェリナのオフィスの1つ上のフロア。

 薄暗い会議室に浮かぶホログラムに向かって一礼する。


「……来たか」


 所有する鉱山マインにおけるスキルポイントの発掘状況に全世界のダンジョン発生状況……膨大な情報が流れる画面を眺めていた中年男性がこちらに向き直る。


 ダンジョンバスターギルドの運営からダンジョン退治依頼の斡旋、スキルポイントバンクに装備品の開発、果ては各種アプリの運営まで。

 およそダンジョンバスターの活動にかかわるあらゆる事業を行っているノーツ財閥のトップ、マクライド・ノーツである。


「今日はどのようなご用件でしょう?」


 多忙を極めるマクライドが、娘とはいえ自分などにまとまった時間を割くのは珍しい。


 飛び級で卒業した某有名大学の卒業式を除けば、家族の時間をとった記憶はほとんどない。その卒業式すら、有力者との顔つなぎを目的とした”ビジネス”の一環だったのだろう。


「お前に運営させているダンジョンバスターギルドだが……」


 家族の会話は何もなく、いきなり本題に入るマクライド。


「っっ!」


 その言葉に思わず首をすくめるフェリナ。

 マクライドの経営手腕は大量の事業を試し、その中で生き残った事業のみを成長させていくスタイルだ。

 短期間で結果を出さない事業はすぐに潰される。


 いきなり自分にギルドを経営しろと言ってきた時は何事かと思ったが、これも義父のテストの一つだとしたら。


(少々、のんびりしすぎたかもしれません……!)


 次々とダンジョンをクリアするユウと、可愛らしいリーサ。

 ふたりの”家族”の形が心地よくて、ユウたち以外のダンジョンバスターを加入させることをためらっていたのだ。


「面白いな……実に興味深い」


「え……?」


 義父から思っても見なかった言葉が掛けられる。


「ラボから報告は聞いてるぞ。

 スキルポイント獲得倍率の異常値……確かに”ユニーク”としての報告例はいくつかあるが」


 そうなのだ。

 ユウの”ユニーク”は相当珍しいケースとはいえ、過去に事例がなかったわけではない。


「獲得倍率が”可変”となると前代未聞だ。

 それに、Dランクダンジョンで”アイテムガチャ”を出現させた、だと?」


「アイテムガチャが出る確率は1万分の1、さらに彼が手に入れたアイテムはSSレア……入手確率はさらに1万分の1」


「これをお前は、ただ”運がいい”だけだと思うのか?」


「……いえ」


 既にそこまで把握しているなんて。

 義父は相当ユウに興味を抱いているようだ。


「それにコイツの娘である獣人か……。

 これもなかなか面白い”素材”だ。

 ”アレ”の可能性もあるしな」


「な……リーサちゃんとユウさんは素材なんかじゃありません!」


 わたくしの大切なギルドメンバーで……お友達。

 せっかくできた自分の居場所。

 それを実験動物のように言われるのは我慢ならなかった。


「……フェリナ」


 娘の様子に、僅かに嘆息するマクライド。


「お前をあの薄汚い難民キャンプから拾ってやったのは何故だと思っている?」


「くっ……」


 そんなこと、言われなくても分かっている。


 欧州の片隅、今だ宗教的な価値観が色濃く残る田舎に産まれ落ちたフェリナ。

 尖った耳を持つエルフ。

 当然フェリナは忌子として疎まれ、難民キャンプに捨てられた。


 そこから彼女を拾い上げたのがマクライドだった。

 慈悲の心ではなく、”差別をしない”新進気鋭の青年実業家をアピールするため。


(ですが……)


 いくら打算だったとしても、あの地獄から自分を救いあげてくれたのはこの義父なのだ。なんとか彼の気を引こうと勉強も頑張ったし、若手ギルドマスターとして頭角を現してきている。


 まあ、まれに……そこそこたまにドジってしまうのは改善したいのだけれど。


「お前のギルドはこのままでいい。

 ノーツ家のために励め」


 ヴンッ


 言いたいことを言い終えたのか、映像を切るマクライド。

 薄暗い会議室にポツンと一人残されてしまう。


「…………はぁ」


 大きくため息をつくフェリナ。

 ユウとリーサはまだオフィスにいるだろうか。


 ふたりの暖かさに。

 無性に触れたくなったフェリナなのだった。



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