第12話 レア装備をゲット
「せいっ!」
ザンッ!
グオオオオンッ!?
チタンソードの一撃が、オーガーに大ダメージを与える。
「リーサ!」
「任せて!」
合図に合わせて、後衛からボウガンを撃っていたリーサが俺の肩を踏み台にして飛び上がる。
たんっ!
ダンジョンの天井すれすれまで飛んだリーサは、天井を蹴りオーガーの背後を取る。
「とどめっ☆」
「ファイア+!!」
ゴオオオッ!
炎の渦がオーガーを飲み込み、チリも残さず灰にした。
「よしっ!」
「ないすぅ!」
鮮やかなコンビネーション攻撃に、二人でハイタッチ。
「踏み台にしちゃってごめんね?
ふきふき」
チェインメイルの肩に少し足跡が付いているくらいなのだが、乾いた布で汚れを拭いてくれるリーサ。
なにこの子、天使か?
ああ、天使だったわ。
そんな当たり前の事実にいまさらながらに頷いていると、フェリナからスマホに通信が入る。
『ふふっ、もうDランクダンジョンは楽勝ですね。
依頼No:D167210の……あらっ?』
「どうした、フェリナ?」
いつもの報酬タイム……そう思っていたらフェリナの様子が変だ。
『この反応は……。
!! ユウさん、リーサちゃん、”ガチャ”が出現します!!』
「な!?」
以前Sランクダンジョンで遭遇した”スキルポイントガチャ”。
Dランクダンジョンで出現する事は本当にまれで、年に1度か2度報告されればよい方だ。
「どのタイプだ?
ま、まさか?」
”スキルポイントガチャ”だった場合、せっかくの俺の”ユニーク”が上書きされる危険もあるのでは?
思わず身構えてしまう。
『いえ……これは、”アイテムガチャ”ですね!』
「!?」
ある意味もっとレアなガチャの出現に、思わず息をのむ。
「ユウ、アイテムガチャって?」
「あ、ああ……そうだな」
リーサにはちゃんと説明してやった方がいいだろう。
「俺たちが使っている武器や鎧などの装備。
これはスキルポイントで”購入”しているから、ダンジョンをクリアしたら消えるのは知ってるな?」
「ふむふむ」
スキルポイントをダンジョンという異世界内で結晶化させているから……というような細かい理屈については俺も詳しくないが、ダンジョンを出れば装備は消え、別のダンジョンに潜る際には再度購入が必要だ。
「だがごくまれに、ダンジョンをクリアしても消えず、”固有装備”として使えるアイテムが出ることがあるんだ」
「!! そ、それって、このトンファーを現実世界でも持ち歩けるってこと!?」
「出てくる装備は殆どが”アクセサリー”だけどな」
20年のダンバスの歴史の中で、武器が防具が”固有装備”となった例はないそうだ。
……まあ、現実でグレートソードなんて持たされたら、銃刀法違反になると思う。
「な~んだ、ちょっとがっかり」
「そんなことないぞ。
アイテムにもよるが、各ステータスを固定で上昇させたり、一部スキルの使用回数が無制限になったりするぞ」
「ふお!?」
「それに」
俺は自分のスマホからいくつかのスクショを探し、リーサのスマホに送る。
「あ、カワイイ!」
「”固有装備”は、現実世界ではペンダントやネックレス、指輪になったりするんだ。
普段から身に着けていても違和感ないだろ?」
「うん!」
ダンジョン内で手に入れたアイテムを現実世界に持ち出せる。
まったく原理は分からないけど、実際に出来るのだから仕方ない。
キラキラキラ
話している間に、目の前に緑色のオーブが出現する。
”アイテムガチャ”だ。
「じゃ、回すぞ?」
「わくわく!」
目を輝かせるリーサの前で、オーブにタッチする。
パアアアアアアアッ!
オーブは輝きを増し……!
パシュン!
俺の手の中に落ちてきたのは、2つの腕輪。
「これは……基礎能力強化系のアイテムか?」
『”鑑定”してみないと、確かなことは言えないですが……ユウさんたち、わたくしのオフィスに来れますか?』
「ん、大丈夫!」
幸い今日は土曜日だ。
時間はまだたっぷりある。
「1時間ほどで行けると思うから、待っててくれ」
『承知しました!』
俺たちはダンジョンから出ると最寄りの駅に急ぎ……フェリナのオフィスがある大阪駅近辺に移動するのだった。
*** ***
「ま、まさか……現実での姿が”コレ”だとは」
「やった~♡
ユウとペアリングだ~♪」
耳と尻尾をぶんぶん振ってキラキラの指輪に歓声を上げるリーサは、この世の終わりかと思うくらいかわいいが……。
「ちゃんと左手薬指に付けてねっ!」
「ぐはっ!?」
問題は、腕輪が現実世界で変化したアイテムが、”結婚指輪”にしか見えない事だ。
(く、くっ……せめてドクロの指輪とかなら誤魔化せたのに!)
まあその場合は学校に着けていけないだろうから、リーサは悲しむだろうが。
「っていうか! 小学校に指輪なんかつけて行ったら校則違反だろ?」
「え、結構つけてる子いるよ?」
「……は?」
至極常識的だったはずの俺のツッコミは、新世代の若者文化に粉砕される。
「ほらほら~、ユウ。
ちゃんとつけて♡」
こうまで言われたら断れない。
「く、くうっ」
俺は覚悟を決めると自分の指輪を左手薬指にはめる。
「まあ! サイズぴったりですね」
”固有装備”なんだから当たり前だろ!
「どうどう? フェリナお姉ちゃん!
お揃い!」
「ええ、とってもかわいいわ」
「やた~!」
ふにゃふにゃとフェリナに甘えるリーサ。
フェリナはこっちを見てニヤニヤしている。
このギルドマスター、楽しんでやがる!
ただでさえ俺とリーサは顔が似ていないのだ。
本当に娘さんですか?
と職質された時のために、身分証と扶養家族証明書は常に持ち歩いている。
この上プラチナペアリングまでしていたら何を言われるか……。
「ふふっ……ユウとペアリング。
本当に、夢だったぁ……」
「…………」
まあ、そんな心配もリーサの笑顔の前ではすべて吹き飛んでしまうわけで。
「ひ、人前では手袋付けるからな」
「ふお? ユウの中二病が再発?」
「……ほっとけ」
「ふっ……ぷくくくくっ」
俺たちの親子漫才に、ついにテーブルに突っ伏して笑いだしたフェリナ。
くそ、もう帰るぞ……そう言おうとした瞬間、フェリナのPCから通知音が響く。
メッセージアプリの通知だろうか?
「……!」
メッセージを見た途端、フェリナの笑顔がこわばったように見えた。
「すみませんユウさん、リーサちゃん。
急に”上”との会議が入ってしまって……この部屋は使って大丈夫ですから」
慌てて身支度を整え、オフィスを出ていこうとする。
「フェリナ、もし困ったことがあれば相談してくれな?」
「……ふふっ、はい」
フェリナはにっこりと笑顔を浮かべると、ドアの向こうに消えてしまった。
「フェリナお姉ちゃん、おしごと?」
「そうみたいだ」
「……ちょっと困ってた?」
「ああ」
ノーツ家の娘として。
頼りになるギルドマスターのもう一つの顔に、なにか彼女の助けになれないかと考える俺なのだった。




