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結局、ももちゃんは毛布を取り返しました。
幸せそうなももちゃんとは反対に、お母さんは不機嫌そうに叔母さんを睨みました。
「もうっ。また、はじめからやり直しだわ。」
お母さんは、ももちゃんが保育園にゆく前に毛布を卒業させようと考えていました。
保育園では、お母さんに甘えることは出来ません。
いつまでも、ボロボロの毛布を放さない、ももちゃんが、保育園でやってゆけるか心配なのです。
「もう、姉さんのやり方はせっかちなのよ。
そんな風に、大事なものを取り上げようとしても、良いことはないわよ。」
叔母さんの勝手な言い分に、お母さんは少し怒って言い返しました。
「じゃあ、あなたには、何か、いい方法があると言うの?」
お母さんの言葉に、おばさんは、少し、寂しそうに笑いました。
「姉さん…本当に忘れちゃったのね…私がももちゃん位の年の頃、姉さんが、私の毛布卒業をさせたのよ。」
えっ…(;゜∇゜)
皆は、叔母さんを見ました。
「おばちゃんも…モーフ好き?」
ももちゃんは、興味津々で叔母さんを見ました。
叔母さんは、ももちゃんを見て、大きく頷きました。
「ええ。大好きだわ。今でも…。私の毛布はね、
ももちゃんのお母さんが、熊ちゃんに変身させてくれたの。」
「熊ちゃんに?」
ももちゃんは、ビックリしたように聞きました。
「そうよ。今もおばちゃん、一緒に住んでいるわ。」
叔母さんの言葉に、ももちゃんは、感動したように目を見開きました。
どう言うことなのかな?
ミミちゃんは、不思議に思いました。
そんなミミちゃんに、叔母さんが声をかけました。
「ミミちゃん、毛布の熊ちゃんを作る、お手伝いをしてくれる?」
おばちゃんに言われて、ミミちゃんは頷きました。
何にしても、叔母さんがやることは、楽しいのです。
「いいよ。」
ミミちゃんの返事に、叔母さんは、ももちゃんを見ました。
「どう?ももちゃん、毛布を熊にしてみない?」
ももちゃんは、そう言われて、少し迷ってから頷きました。
「うん。いいよ。」
ミミちゃんも、ももちゃんも、楽しくなってきました。
叔母さんは、なにをするのでしょう?
2人の期待の視線を浴びながら、叔母さんは、ミミちゃんに言いました。
「ミミちゃん、画用紙ある?」
ミミちゃんは、頷いて、机から画用紙を持ってきました。
叔母さんは、2人に画用紙に好きな動物の絵を書くように言いました。
2人は、競うようにクマの絵を描きました。
叔母さんは、それをみて、「ヨシ」というと、ミミちゃん達の絵の外側に点線を書き始めました。
「一体、何を考えてるの?」
お母さんは、まだ、良くわかってないようです。
そこで、叔母さんが、話し始めました。
それは、お母さんが、ミミちゃんのような小学生の時でした。
夏休みの宿題が出来ずに悩んでいた8月の終わり、小さな叔母さんは、毛布の事で格闘していました。
ミミちゃんのお祖母ちゃん、お母さんのお母さんは、娘、2人の事で混乱していました。
そして、思い付いたように言ったのです。
「毛布でぬいぐるみを作ろう。」と。
「確かに、あったわね、そんな事。夏休みの最後の日、大変だったのよ。」
お母さんも…そんなこと、あったんだ。
ミミちゃんは、しっかりものの、お母さんにも弱点がある事に驚き、そして、なんだか、嬉しくなりました。
「そうね。あの作り方、まだ、覚えてる?」
叔母さんの質問を…お母さんは、少し不満そうな顔で否定しました。
「忘れたわ…だって、私、作らなかったもの。」
お母さんは、小さな頃を思い出して、嫌な気持ちになりました。
何故なら、ぬいぐるみは、布を切断してからすぐに、せっかちなお祖母ちゃんにミシンで縫われてしまったのです。
小学生のお母さんは、出来上がってゆく縫いぐるみを見ていただけで、
夏休みが終わって、先生に提出すると、先生は、こう、評価しました。
「考えたのは良いですが、自分で作れば、もっと良かったです。」
お母さんは、恥ずかしさと、少し、寂しい気持ちになった事を思い出しました。