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男女逆転世界でキャンプをしよう!  作者: くもくも
3章 R-15とキャンパーさん
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最終話 プロポーズとキャンパーさん

 ある日の夕食後、僕はキャンプ道具を並べている棚から、ちょっとおしゃれな紙袋を取り出した。

 袋の中には、白い小箱が5つ入っている。


 一週間ほど前に購入し、なんとなく出しそびれたままになっていたが、なんだかもう、我慢できなくなった。


 僕はそれを手に取ると、両手をパンパンと叩いて神に祈りをささげた。

 

 偉大なるキャンプの神よ、今日はキャンプしませんけど、どうぞよろしく!



 僕は袋を持ったままつかつかとリビングに戻り、机にその袋を置いてから、みんなに声をかけた。

 「はいみんな、ちょっと集合してくださーい」



 僕の声に最初に反応したのは、末っ子の雪だ。

 「亮にい、なにか知りませんけど、まず洗い物手伝って下さいよ。今日カレーだったんですから、お皿洗うの大変なんですよ?」


 それはすまない。

 僕はとぼとぼと雪の横に並び、雪が洗い終えたお皿を拭いては棚にしまった。


 誰も僕の声では集合しない。

 一応、僕がハーレムの主ではなかったのか。


 洗い物を終えると、雪は僕の服をつかみ、強引に体を引っ張ってキスをしてきた。

 「洗い物サボりは許しませんよ。珍しくこの家で二人っきりの作業なんですから」


 あまりのかわいさに、撫で撫でが止まらない。日々雪のデレ成分は多くなってきている気がするな。

 素晴らしいことだ。


 なんだかんだ、みんなの中で一番気が合うのがこの雪だと思う。

 軽口をたたきあい、それでも愛しく想いあえる関係だ。

 大切なキャンプ仲間であり、親友のようでもあり、それでいて天使のような可愛らしさで僕を誘惑してくる。



 「お兄ちゃん、なんかさっき呼んでた?」

 次に現れたのは、僕の妹の雫だ。


 手には、以前みんなにおそろいで渡したシェラカップが握られている。

 「なんか今日、部活で疲れちゃって、眠いよ。お兄ちゃん、前に買ったインスタントコーヒーって残ってる?」


 「まだ少し残ってるよ。また雫は勉強してるの? えらい! えらいけど、疲れてる日は無理しないようにね」

 カップを軽く洗って水を張り、そのままコンロの火にかける。

 沸騰したら火を止め、インスタントコーヒーの粉をスプーンで入れて混ぜるだけ。


 「あ、お兄ちゃんそれ牛乳も入れて。あと、一回ちゅーしてよ」

 あらあら、わがままなお嬢様ですこと。

 

 ブラックコーヒーだとお腹を壊しがちな雫のため、牛乳を少しだけ加え、カップを渡すついでにキスをした。

 「へへ、ありがとお兄ちゃん。だーいすき!」


 あらあら、かわいいお嬢様ですこと。


 みんなの中で僕が一番大切に想っている相手は、たぶんこの雫だろう。

 恋人というだけでなく、唯一の妹でもあり、長い間一緒に過ごしてきたためか、そばにいて一番落ち着く相手だ。



 「ごめん亮一、なんか呼んでた? お風呂入ってたからさあ」

 三人目に現れたのは、二女の葵だ。


 「ねえ亮一、今度あたし数字の小テストがあるんだけど。後で少し教えてくんない?」

 ギャルのくせに最近は勤勉だ。

 最近、同レベルだったはずの雫が急に成績が良くなってきたので、ちょっとプレッシャーを感じているらしい。


 「いいけど。お礼に明日の晩御飯はお素麺にして欲しいな。氷でキンキンに冷やしたやつ」

 「あー、いいけど、お腹壊さないようにね。ほら、あの、明日の夜はほら、あたしの番じゃん?」

 ちょっと説明はできない夜のローテーションの話をして、自分で顔を赤らめている。


 未だにこの純情っぷりよ。

 かわいすぎるので思わずキスしてしまう。


 みんなの中で一番、恋人としてトキメキを感じさせてくれるのが、この葵だ。

 同い年の女子高生ギャルと一つ屋根の下でラブラブ生活。控えめに言っても最高。

 一緒にいると、今が男女逆転した時代であることをすっかり忘れてしまう。



 「ただいまー。アイス買ってきたけど、みんな食べる? ていうか、みんななんで集まってるの? ボクがいないときに何かあった?」

 最後に集まったのが、長女の遥だ。

 呼んでも来ないと思ったら、そもそも外出していたらしい。


 「あれ? 亮一くん、この袋は何? あ、もしかしてボクたちへのプレゼントとか?」

 するりと僕にくっつきながら、遥は笑う。ニコニコしながら自然にキスをした。


 まあ、プレゼントなんだけど、先に言うなよもう。


 みんなの中で、一番最初にお嫁さんにしたいと思っている相手が、この遥だ。

 さすがは長女、何かと包容力があり、バブみを感じさせてくれる。

 人間として尊敬できる優しい人で、それでいて夜は困ってしまうくらい積極的。

 お嫁さんとしてこれ以上に大切な条件があるだろうか。いや、あるわけない、そんなの。



 「んん! 遥に先に言われちゃったけど、僕からみんなにプレゼントがあります! みんなおそろいだよ?」


 僕は袋から5つの小箱を取り出した。

 

 「お、ボク正解だね。プレゼントありがとうね」

 「へー、今日って何かの記念日だった? あたし全然思い当たること無いんだけど」

 「やるじゃんお兄ちゃん。かわいい妹に貢ぐ喜びに目覚めちゃったかな?」

 「どうせキャンプ道具でしょう? 私、今度はオイルランタンが良かったのに、これは小さいですね」


 みんなが思い思いにしゃべっているので収拾がつかない。

 僕はそれぞれに無言で小箱を渡し、残った一つを自分用に持った。


 ちょっと緊張するな、やっぱり。


 箱の中には、バイト代で買った安物の指輪が入っている。

 僕も高校生なので、あまり高価なものは手が出ず、宝石もないシンプルなリングだが、頑張って選んできた。

 全員のサイズはリサーチ済みなので、きちんと入るはず。入ってくれ。


 「何の日でもないけど、きちんとみんなに伝えてなかったと思ってさ。今日を、その、新しい記念日にしたいな、と」


 きちんとみんなを幸せにするって、里美さんにも約束したしな。


 四人の愛する彼女たちを見る。

 みんな、なんだかくすくす笑ってこちらを見ている。


 「じゃあ言うね。僕は、キャンプが大好きだけど、みんなのことは、たぶん、それよりもっと大好きです。みんなとこれからも、ずっと一緒にいたいです。遥、葵、雫、雪。僕と、結婚してください」


 ごめんよキャンプの神様。

 また次の週末もキャンプに行くから、プロポーズのときくらいは許して下さいね。


 みんなは、それぞれの小箱を開けて、また柔らかく笑った。


 きっと返事はオーケーだろうと信じているし、きっと明日からも、同じように幸せな毎日が待っている。


 幸せな家庭。愛するみんなとの暮らしと、できればたまには幸せなキャンプ。

 それだけあれば、僕の人生はバラ色だ。

 毎日たくさんの方に読んでいただけて幸せでした。本当にありがとうございました。

 最後ですので、ぜひご評価のお星さまをお願いいたします。


 次回作もぜひお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れさまでした。素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました。次回作も期待しています!
[一言] 完結おめでとうございます! また男女逆転モノお待ちしております!
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