18話 凡人皇太子、“いつも通り”窮地に陥るも今回は雲行きが違う
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ブルゴーニュ嬢が結界を踏み越えて姿を消した直後、ハルトは全速力で結界の外へと足を踏み入れた。瞬時に切り替わる視界、空気感、そして強大な魔獣の気配に、息がつまる。
だが、間髪入れない判断のお陰でブルゴーニュ嬢との距離はさして離れていなかった。十数歩の駆け足で近寄って息を吐く。
「え、あ、は、ハルトヴィン殿下、こ、ここ、ワタクシ……!」
怯え切った様子のブルゴーニュ嬢は、表情を失ってただ真っ白な顔で震えていた。緊張と恐怖に体がついて来ていないのだろう。ハルトは「いいか」と念押しする。
「落ち着け。そんで、出来るだけ静かにしてろ。騒げば魔獣がかぎつけてくる。それでなくとも人間のにおいってのはあいつらにとっては異物だ。極力息を殺してくれ」
告げると、強張った顔でこくこくとブルゴーニュ嬢は頷いた。それから、ハルトは指輪を口元に近づけて告げる。
「二人とも、ブルゴーニュ嬢を発見した。ただ残念なことに、訓練場傍の結界の綻びから森に出ちまった。至急助けを頼みたい」
僅かな沈黙。返ってきたのは、ロレッタの声だ。
『……ハルトさん? まさかとは思いますが、フラン様に僅かでも危険が及ぶようなことはありませんよね?』
とても静かで伸び伸びとした問いに、ハルトは別の意味で背筋が寒くなる。
だが、ここで嘘をついてなぁなぁで済ませるような真似を、ハルトは良しとしない。
「悪いが、ロレッタ。僅かな危険じゃあ済まない。完全に命の危機だ。俺が死力を尽くしても、二人で犬死してもおかしくな」『分かりました、そこ動かないでください。すぐに向かいます』「いや違う助けを呼んでくれって言いた」
風を切るような大きな音が指輪の向こうから聞こえ、とっさにハルトは指輪を振った。通信が切れる。一応周囲を見まわすが、まだ何かの影は見えなかった。
『みんな大げさだなぁ。っていうかフランもハルト君も森に入っちゃったの? ふふ、二人ともやんちゃなんだから』
少しおかしげに言うのはアルフィーだ。それに、ハルトは半ギレで「いいか?」と言って聞かせる。
「王子であるお前が何で把握してないのかは知らんが、この王立学園はブリタニア王国でも若き貴族が集まる最重要機関の一つで、もっと言えばこの森はその若き貴族を守る防衛機関『魔怨の森』だ。フロストバード領に続く、伝承級の魔獣蔓延る天然の要塞だぞ」
『え、でも』
「ハルトヴィン殿下」
ブルゴーニュ嬢の声に、ハルトは視線を巡らせた。彼女の指さす先には巨大な人影。普通の冒険者なら二十人がかりでも倒せないとされる、トロールのそれだ。
無論、ハルト一人で倒せる相手ではない。“無理をすれば”多少は勝負になるかもしれないが、そのときハルトは肉体の一部かそれに近い代償を支払うことになる。
「悪い、しばらく指輪の通信は切るぞ」
指輪を振り、縮こまって息をひそめる。トロールのフゴフゴと荒い息を吐き話し言葉のような鳴き声を上げる様は、歪な人間のまねごとのようで気味が悪い。
無言でハルトの袖を引っ張るブルゴーニュ嬢に、ハルトはその辺の石を拾ってその表面に指でルーンをなぞる。
そして、力いっぱい明後日の方向に投げつけた。
「《キュイィィィィィイイイイイイイ》」
投げつけた先で鳴った《音》に、トロールは方向転換し向かっていく。その隙にハルトはブルゴーニュ嬢の手を取って、「行くぞ」と小声で告げて走り出した。
「い、今のは何ですか」
「音と弱者のルーンだ。わざわざ刻まなくても、短時間ならこれで効く。トロールからすれば、俺たちよりよっぽど弱そうで目立つ獲物を見つけたってことになる訳だ」
十分トロールから距離を取ったのを確認して、二人はゆっくりと足を止めていった。ブルゴーニュ嬢はかなり体力がないらしく、土に手を突いてぜぇぜぇと息を吐いている。逃げるのですらあと何回も出来ないだろう。
となれば、少しでも助けが来るだけの時間を稼ぐこと、そして学園の結界内に戻る方法を考えることが、今の急務といったところか。ハルトは難しい顔で首をひねる。ひとまず、と“宝物庫”から袋を取り出し、その中の粉をいくらかばらまいた。
粉が空気の中に溶けていく。それは瞬間的にもやのようになって、ハルトたちを包み隠すように光を歪ませる。
「これで多少話す余裕が出来たろ。さて、ブルゴーニュ嬢。現状非常にヤバイのは理解してくれてると思うんだが、ここ魔怨の森について、何か知ってることはあるか」
「ご、ごめんなさい。ワタクシは、この森の政治的成り立ちくらいしか知らなくて、結界などの詳しい仕組みについては……」
「……ま、そうだよな。一応聞いてみただけだ、分かんなくても気にすんな」
どうする、と考える。結界の綻びは森の中からすれば固定されたものではなく、数秒の差でもある程度距離が出来るほど、綻びの座標は激しく移動を繰り返している。その上ハルトたちも移動してしまった。もう正攻法での復帰は不可能と考えるべきだろう。
となれば――何か知恵を絞って、死ぬような思いをして目的を達成して帰還することになるのだろう。いつも通りの死地で。慣れ親しんだ絶望の中で。
思わず、溜息を吐きたくなる。またいつもの流れだ、と辛うじて見出しかけた希望との落差に悲しくなった。期待などしなければいいものを。運命なんて、最初から信じなければいいと分かっているのに。
「どうせ俺が死ぬような思いして、要らん好感買ってそれがまたトラブルの種になんだよな。知ってる。知り尽くしてる」
クソ食らえだ、とブルゴーニュ嬢に聞こえないように吐き捨てる。どこへ行ったってハルトは同じだ。トラブル、解決と活躍、手を差し伸べた相手からの信奉、そしてまたトラブルと続く、安息のない日々。
逃げ出した祖国のことを思い出す。十を超える婚約者たち。二十を超えて数えるのをやめた従者たち。その輝きにまみれた眼。一方的な信仰心。対等な友人なんて今まで一人もいなかった。誰もが盲信に濁った目でハルトを見た。
今回も同じだ。派手なトラブルがなかったから油断していたが、何処に行ってもハルトはハルトという事だろう。クソ食らえな運命の手で『英雄』に仕立て上げられる凡人。それを、きっとどこかで誰かが眺めて嗤っているのだ。
「あの、ハルトヴィン殿下……」
不安そうな目で見てくるブルゴーニュ嬢を見る。もはや彼女がトラブルの種にしか見えないのは、これまで歩んだ歪んだ人生のためか。ハルトはひし形の石に見えるアーティファクトをブルゴーニュ嬢に投げ渡してから、もやを指さし一つ提案する。
「このもやは俺たちを隠してくれる。っつー訳で、俺はちょっと上空に跳び上がってここが森の中でもどの位置にあるのか見てくる。十秒としないはずだから、ま、息を殺して待っててくれ。あとその石があれば俺はブルゴーニュ嬢を見失わずに済むから、絶対肌身離すなよ」
「えっ、そんな」
我ながら意地が悪い、と思いながら、ハルトはブルゴーニュ嬢の抗議に聞く耳持たず「グレイプニル」と近くの木の頂点近くに魔法の紐を括り付けた。そして、「縮め」と命令し一気に飛び上がる。
深い緑が背後に吹き飛んでいき、ガラリと景色が一変した。見渡す限りの樹々の海、青の空、そして点在する分厚い雲。
「学園は完全に魔法で隠されてやがんな。一旦森の外に出るのが現実的か」
となると、次はブルゴーニュ嬢を背負って跳び上がって――と考えていると、視界の真ん中にありながら見過ごしていた存在が迫っていることに気付く。
それすなわち、雲。
もっと言うなら、巨大なクジラめいた姿で大口を開けてハルトに泳いでくる、雲の怪物。
「――嘘だろッ!」
グレイプニル! と森へと魔法の紐を伸ばし、急速に迫りくる雲クジラから逃げる。だが、このままでは地面と激突しておしまいだ。だから、少々ブルゴーニュ嬢から離れてしまうが地面へと斜めに紐を伸ばした。
ハルトは顔の前で腕を交差させ、身を固くしながら森の枝葉に突っ込んでいった。大量の枝を体で折りつつも勢いは殺しきれず、そのまま木の下で弧を描くように紐でスイングを決める。そのままグレイプニルが外れ、地面の上を土龍にはねられた様な勢いで転がった。
「ぐっ、がっ、ぐぇっ」
最後には太めの樹の幹に背中を強打し、激しく咳き込む。しかしその中でも上を窺って、雲クジラが来ていないことを確認していた。
「……じょうく、ゲホッ、上空を行かない限りは獲物じゃねぇってか。なるほど分かりやすい、フロストバード以外にもすげぇ国防装置持ってんじゃんかブリタニア」
どっちだったか、と位置探知のアーティファクトでブルゴーニュ嬢の場所を把握する。息を整えてから駆け足気味に近づいて、咄嗟に物陰に隠れた。
茂みの下に身を隠したブルゴーニュ嬢の上で、老人の顔をした大獅子マンティコアが牙をむき出しにうろついている。
「こんな化け物も居んのかよ、この森……!」
先ほどのトロールと似たり寄ったりの強さを誇る化け物だ。特に、尻尾の針の含まれる毒は致死性である。肌をかすめただけで死に至るとさえ言われているのだから、ハルトなどは手の施しようがない。
ブルゴーニュ嬢もその脅威を理解しているのだろう。茂みの下で顔を真っ青にしながら、声もなくボロボロと涙を流していた。ハルトもこれには反省せざるを得ない。まさかあのもやがあってなお、こんなに早く魔獣に捕捉されるとは思っていなかったのだ。
こんな危機的状況で八つ当たりなど、状況が見えていないガキにも程がある。
故に、ハルトは冷静な目でマンティコアを観察する。凡人並みの観察眼でも、窮地続きの日々は良くも悪くもハルトに危機に対する鈍さを与えた。
そして、一つのある気付き。
「……ブルゴーニュ嬢が補足されたんじゃねぇのか? マンティコア以外にも、何か気配が」
そこまでハルトが言った瞬間、マンティコアに対し突撃する影があった。それは一つ目の牛ゴルゴン。体に似合わぬ巨大な頭を体全体で押すようにして突き進み、ブルゴーニュ嬢の居る茂みごとマンティコアに激突していく。
「グレイプニル!」
それを、間一髪でハルトは救出した。紐をブルゴーニュ嬢に巻き付けて一本釣りだ。「ぴぃぃいいいい!」と情けない声を上げていたが、“石化していないのを見るに”、どうやら無事助けられたというところか。
「無事みたいだな、よかった」
「よ、よく、よくな」
「あー、うん、悪かった。怖かったなうん。それに関しては完全に俺が悪かった。もう極力離れたりしないから安心してくれ」
滂沱の涙でたどたどしく抗議してくるブルゴーニュ嬢に、ハルトは全面降伏だ。両手を上げて「今は逃げ出すのは得策じゃない、身を隠せ」と違う茂みに共に体を突っ込む。それから草葉の隙間より、マンティコアに角を深々と突き刺す、大首の据わらない牛を指さした。
「あの牛はゴルゴンっていって、あのデカい頭の大半を占める目にしばらく見られると石になる。無闇に距離を取らない方がいいんだ」
「よ、よく、知ってます、のね」
「まぁ、アレにも殺されかけたことあるしな」
当時は片足を石化されて砕かれた。そんな出来事ばかりの中で、よく今五体満足で居られるものだ。
眺めていると実際にゴルゴンはマンティコアの尻尾を真っ先に石化させ、後は巨大な頭と角で蹂躙していた。「これ以上は見なくていいぞ、惨いだけだから」と告げると、ブルゴーニュ嬢は「そうさせてもらいます……」と青い顔で顔をそむける。
ゴルゴンが牛の癖にマンティコアを貪り食っているのを見るに、しばらくはこちらに見向きもしないだろう。そう考え、ハルトはブルゴーニュ嬢の手を引っ張った。「今の内に離れようぜ」と茂みから出る。
「は、はい。……ところであの、ハルトヴィン殿下」
「何だ?」
「この音は、一体」
ハルトはその問いに眉をひそめ、耳に意識を集中させた。上。空を見上げ、影を発見して、ブルゴーニュ嬢の手を強く引いた。
「走れッ! 見つかったら終わりだ!」
走り出しながら、ハルトはその辺の石を掴んで片手でルーンを描いてゴルゴンの方向に投げつけた。『音』と『弱者』が気弱な悲鳴を響かせる。
「なっ、なに、どうしましたのよ……!」
「ドラゴンだッ! ブルゴーニュ嬢が聞いたのはドラゴンの飛行音だ!」
「だっ、だとしても、ワタクシたちなんかよりずっとゴルゴンの方が食いでがありますし、大丈夫なのでは……!?」
「ドラゴンってのは肉以上に魔力を喰らう生態なんだよ! 要するに、魔法慣れした人間のがよっぽどその辺の魔獣より飯として相応しい!」
ブルゴーニュ嬢が息をのむ。ハルトは説明がてら頭上を見上げ、舌を打った。
ダメだ、完全に補足されている。逃げるだけジリ貧だ。
「どうする」
足を運びながら、対抗策を考える。複数の選択肢。その全てが大きすぎる代償をハルトに求める。その中で模索できる勝利の可能性はどれほどか。
「考えろ」
命。どこに至ってもなお、やはりハルトは死にたくなかった。だから、代償を払って脅威を遠ざける。そうやって身を削り、削り、削り切った先に何がある。
「何かがある。じゃなきゃ、生きてたって仕方がない」
そうだろ。そう自分に言い聞かせて、立ち止まった。ブルゴーニュ嬢が目を白黒させる。「いいんだ」と笑いかけ、ドラゴンの着陸を待った。
獲物の諦念を見抜いたか、ドラゴンは悠然と森の木々をへし折りながら現れた。その、肉体の隅々に行き渡る力強さと、輝く鱗の繊細な美しさ。ハルトは、何を差し出すか最後まで吟味し、その引き換えがドラゴンキラーの栄誉か、と鼻で笑った。
どこに行っても、何をしても、トラブルが舞い込んできて、身を削って解決して、栄誉を受け、それがきっかけでトラブルが大きくなって。
「飽き飽きだよな、本当」
ドラゴンの巨躯が地に足を付けた。ハルトは“宝物庫”に手を突っ込み、武器を探す。
「いっつも誰かを助けて、感謝されて、嬉しくないなんて言わねぇよ。甲斐があったなって思う。どうせ俺には見捨てられないし、見捨てなくて良かったって思うし」
ドラゴンは大口を開けて、火を吐き出そうとする。ドラゴンブレス。この世の破壊の権化。だが、古龍からすれば現代の龍のドラゴンブレスなど、原初のそれとは比べ物にならないという。
ハルトはそれを聞いて、どうせ俺が食らったらどっちも同じく即死させるのだろうと言った。それはその通りよな、とあの古龍は笑っていた。
曰く、無力なお前には頂とそれ以外の違いなど無いにも等しかろう、と。
「まったくだ。無力な俺が、誰かを助けられるのだけでも身の丈に合わねぇ幸せってもんだよな」
武器を抜く。ドラゴンの喉奥の光が強くなる。
「でもよ」
ハルトは、代償をささげる準備を整えながら、愚痴るように言った。
「だとすれば俺のことは、誰が助けてくれるんだろうな」
居ねぇよな、知ってる。誰にも聞こえないように呟きながら、ハルトは――
「残念でしたぁ! フラン様の前で活躍するのは私ですッ!」
背後からの声に、ハルトはぴたりと止まった。その瞬間、前に真っ白な人影が躍り出て、巨大な杭のようなものをドラゴンに突き刺した。
数拍おいて理解したそれは――氷塊。
一抱えもある巨大な氷の塊が、ドラゴンの大きく空いた口より喉元へと突き刺さる。
「えっ、あ、は……?」
ハルトの戸惑いの声に、ふふん、と白い影は振り返った。ロレッタ。氷の精を思わせる少女はこの場に似合わない快活さでもって笑っている。
「イケメンだからって、ちょっと活躍してフラン様のハートを射止めようなんて百年早いんですよ! あなたが立てたフラグは私の総取りです。ざまぁないですね!」
「い、いや、お前――じゃなかった! マズイ、今すぐここから逃げるぞ! お前が突き破ったドラゴンブレスのエネルギーが、爆発す」「大丈夫、だそうですよ」
ロレッタの手の上で、青と白の入り混じる小鳥が愛らしげに鳴いた。彼女はにんまりと笑って、くるりとハルトとブルゴーニュ嬢の前で胸を張る。
「ではでは皆さま、ここに一つ盛大に景色を彩ってご覧に入れましょう。是非ご一緒にカウントダウンを」
言いながら、ロレッタは大きく手を掲げた。そこには、指が三本立てられている。
「三」
直後、ドラゴンの喉元の光が強くなった。目を奪われるも、爆発しないまま全身に満ち始める。何だ、と思った。ハルトの目が巡る。
「二」
ドラゴンの全身に、鱗の隙間を縫って光が漏れ出ているのだと分かった。光が肉を透過する。だとしても、こんなに美しく映えるものだろうかと疑問を抱き、理解した。
「一」
氷。ドラゴンの表皮にひびが入るようにして、局所的に氷が割り込んでいるのだ。それが光を体の外に漏らしている。
「ゼロ」
そして、ドラゴンが爆ぜた。
その光景をどう表現すればいいだろう。爆発の氷漬けとでもいえば良いのか。ドラゴンの体を破って広がるエネルギーが、棘のように凍り付いて固まる。それはあるいは、氷のバラが咲くような姿だった。茎をのばし、棘が凍り、そして美しい氷の花が咲くのだ。
「名付けて、『花火さえ凍り付く』。お気に召していただけましたら、盛大な拍手をお願いします」
満足げに礼をして目を閉じるロレッタに、ブルゴーニュ嬢はわなわなと震えていた。こんな状況でもいつもの調子を崩さないロレッタに、形容しがたい感情の渦が荒れ狂っているのだろう。
だが一方で、ハルトの内面は不思議な程に凪いでいた。
「……」
手を、叩く。力強く、手が赤くなるほど、痺れてしまうほど強く。
ロレッタは拍手に目を開け、一瞬奇妙そうな顔をして「今世でこんな拍手貰ったのそういえば初めてですね」と少し恥ずかしげに微笑んだ。
その笑顔に、ハルトは運命を見出した。
大嫌いだった、憎んですらいた運命を、初めて、希望の中に。