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第一話 駄目神『マリ』

『やめよう、逆走』


ラジオからはそんなCMが聞こえてきた。

この後あんな事に巻き込まれるとは知らず

俺は左耳から右耳へ聞き流していた。




俺の名前は 山上(やまかみ) (ただし)

歳は今日で29になる。

独身で童貞。

絵にかいたような非リア充。

今は仕事でトラックの運転手として名古屋から東京へ荷物を運んでいる。

積み荷は確か精密機械。

積み荷が積み荷なので慎重に、だが出来るだけ早く届ける。

そろそろ東京の目的地に着く。

それをカーナビの合成音声が報せる。


『1km先 左方向、高速出口です』


出口はだいぶ前から把握してるので今さら左に寄る必要はない。

大型のトラックに乗っている運転手なら誰でもやっていること。


「今日はいつもより疲れが溜まってるな」


この独り言は自らへの労いの言葉だ。


誕生日だがこれほど疲れていると晩飯はコンビニ弁当を買い

申し訳程度の小さなケーキで誕生日を祝うことになるだろう。

まぁ、この歳にもなれば誕生日はそこまで嬉しくもないが

疲れている体は糖分を欲していた。


そんなことを考えながら高速の出口に向かいハンドルを切っていると。

どこからかクラクションが聞こえてきた。

都会ではよくある光景というか、よく聞く音だ。

皆それぞれ急いでいるから必然的に事故やヒヤリハットも増える。

しかし今回のクラクションは一時的なものではなく

連鎖的にクラクションが鳴っている

まるで輪唱のように鳴り響くクラクションは段々とこちらに近づいてくる。

高速道路の出口特有の円弧型の道路が終わり、もうすぐ料金所が見えてくるというところで

それは起きた。


『キイイイイィィィィィィ』


まるで悲鳴のような甲高いスキール音が周囲にこだまする。

その後


『ガッシァン』


と腹に響くような重い音とガラスの割れる軽い音が合わさり

スキール音を追いかけた。

しかし、正がその音を聞くことは無かった。




目を覚ました正はトラックの運転席に居た。

辺りは見渡す限り草原で山頂付近に雪の残る大きな山が

草原を囲うようにそびえたっていた。


「何処だここ...」


握ったままのハンドルから手を離し

運転席で一人呟いた。


「ルエン半島です」

正の隣から鈴を転がすような綺麗な声がした。

驚いた正が首だけを動かし顔を左に向けると

そこには美しい女性が座っていた。

正は一瞬の後、マシンガンのように質問を連射した。


「ルエン半島ってだこ?

 てか君誰、俺事故ったよね?

 俺なんで生きてんの?

 もしかしてここ天国?」


その女性は一気に投げかけられた質問に一瞬困惑の表情を浮かべたが

すぐに苦笑いに移行し質問に答えてくれた。


「ルエン半島は異世界です。

 私はマリ、見習い神様です。

 正さんは死んでませんし、ここは天国ではありません。」


質問に答えた彼女はばつの悪そうな顔で正を見たり

地面を見たり、明らかに視線が泳いでいた。

そんなマリに対して正が


「目が泳いでますけど、大丈夫ですか?」


と少し悪意を混ぜて気遣うと


「実は...正さんを異世界に飛ばしちゃったの私なんです!」


と声高らかに宣言した。

それはまるで高校球児の選手宣誓の様なはきはきとした口調だった。

余りの迫力に気圧された正は先ほどのマシンガン質問攻めより

気持ち声の大きさを落として丁寧に聞き返した。


「マリさんが俺を異世界に飛ばした?

 どういう事か詳しく教えて頂けますか?」


するとマリはブンブンと頭を上下に振り


「それはもう1から10まで、いや100まで

 きっちり、みっちり、ばっちり説明させて頂きます。」


と答えた。

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