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唐変木な隣人

作者: 黒の九

唐突ですが私の住んでるアパートのお隣さんは何処か変わっています。

何度か出かけ際、帰宅時に鉢合わせて挨拶やちょっとした会話をした事はありました。

見た感じは20代前半、私より幾らか年下に思います。

肌は白く、顔立ちも身なりも好青年な隣人。


でも偶に、部屋から不思議な音がします。


時間に規則性はないのだけれど、何かを叩く音が一週間に数回。私が家にいる時間が少ないから実際はもっとなのかと思う。


この叩く音、ある日は鈍い音だったり軽い音だったりとバラバラでした。


ただ、その音が不快なわけではありません。

音は微かに聴こえる程度で日常に支障をもたらす程ではないからです。


一度、隣人......彼は田所 俊さんと言います。その田所さんに尋ねたことがありました。


彼は頭をかきながら「すみません」とだけ言ってそそくさと中へ入っていってしまいました。


私は苦情ではなくて、その音の理由を聞きたかっただけなのですが何か秘め事なのかと思いそれ以上の詮索はしませんでした。



ある朝、会社に出かけようと玄関を開けたら見知らない女性が丁度田所さんの部屋の呼び鈴を鳴らしていました。


すごく美人でスーツを着た堂々たる佇まいに、女である私が見惚れていると田所さんが出てきました。


彼は私に気がつくと女性の手を取り部屋へと引っ込んでしまいました。


私は悪いことをしたと思いそのまま仕事へ向かいました。


次の日の朝、仕事に出かけようと外へ出ると田所さんが丁度帰宅するとところでした。

私は昨日の非を詫びました。

人はあまり他人にプライベートな事を見られたくないですから。


私が有りの侭に、彼女さんが綺麗で見惚れてましたと伝えたところ、彼は何故か慌てて、彼女じゃないと否定しました。


私は照れているのか、はたまた隠していたいのかと思いましたが話を聞いていると、美人の女性は実の姉でした。

確かにと、田所さんを見つめながら昨日の女性を思い出してみると似ています。


右の首にあるホクロの位置が一緒なんですねと言ったら彼は気を悪くしたのか顔を赤らめてそそくさと出かけてしまいました。


その晩、警察の方が訪ねてきました。

警察の方は可笑しなことを言ってきます。


隣人の田所さんを知らないか?と


私は正直に今朝、玄関先でお喋りをしましたよ。そう答えました。


警察の方は詳しい話を聞かせてほしいと言うので警察署の方へ私は付いていく事にしました。


-----


俺の隣に住む女がやばい。

俺が帰る時間と出る時間によく外に出てくるし、じっとこっちを見てくる時もある。

部屋からは何か大きな音で昼夜問わずに俺を苛む。


通ってる大学でも見かける事もあった。



俺の周りで女性が行方不明になる事が頻繁に起き始めたのはこの部屋に越してからだ。

最初は付き合っていた彼女だ。

ある日忽然と行くへを眩ました。学内の噂では借金取りから逃げたとか学費が払えなくなったとか勝手な事を言われてるが絶対に違う。


サークル仲間の先輩、バイト先の女の子とか仲の良い女性はみんな失踪した。


俺は隣の女......山河と言うらしい、奴がなにか関係している気がしていた。


アパートには友人を呼ばないようにして、学内でも女性は遠ざけた。

ある朝、姉が訪ねてきた。実家にも俺の周りで失踪事件が多発している事が伝わってたらしくて心配しに来てくれたらしい。


ただ、玄関を開けたら少し離れた所から凄い形相で姉を見る山河がいた。

その晩、姉が心配になったから実家へ帰る事にした。


実家に帰ると姉は居なかった。

結局朝まで帰ってこなかったが、今日が休日だから遊んでるのだろうとこの時までは思っていた。



次の日の朝、俺はバイトがあるから始発でアパートに帰ってきた。階段を上る足音を聴いてるのか何時ものように山河が外にいた。

山河が昨日の女は彼女かと聞いてきた。

俺が姉だと言ったら「だから右の首にあるホクロの位置が同じなのね」と俺の首を指差しながら不気味な笑顔で言った。


俺は恐怖した。俺の部屋は山河の左隣だから右の首にあるホクロの位置なんて見えるはずがない。


アパートへは戻らずに逃げ出していた。

あいつはヤバイ、人間じゃない。

確かな証拠は無いけど、近付いちゃ駄目だ。


俺はその日のうちにアパートを引き払い、家具は処分してもらう事にした。


------


警察の方の話を聞いて驚きました。

田所さんが連続失踪事件の容疑者だったのです。


ところが突然アパートを引き払い雲隠れしてしまったらしく、隣人である私に事情を知らないかと言うお話でした。


私は田所さんについてあまり知っている情報はありませんでしたが、とてもそんな事をする様には見えなかった事、前日にお姉さんが訪ねてきた事、今朝一度帰って来たのに私と喋ってすぐにアパートへ入らずに出かけた事をお話しました。



そこまで話し終えてから私は思い出しました。

なにかを叩く音がしていた事を。

警察の方が詳しく説明を求めて来たので私は有りの侭にお話しました。


硬いものを叩く音、鈍く重たい音。

色々な叩く音が部屋から薄く聴こえてきた事を。


その時でした、田所さんのアパートを調べていた警察の方からの電話があったようです。


内容は、室内には無数の血痕が付着した大小様々な凶器、浴槽からは田所さんのお姉さんの惨殺体が見つかったらしいのです。


警察の方にアパートは出た方が良いと助言を頂き私は警察署を辞去しました。


-------


気が付けば駅のホームに立っていた。

行き場を無くした俺は、近付いてくる電車に身を投げる。


-------


朝、ニュースで昨日の事件が騒がれていました。

仕事へ行く準備をしながら見ていると田所さんが駅で自殺したと報道しています。


私はそれを見て不謹慎ながら笑いが止まりませんでした。

犯人は私なのですから。

昨日の朝、私が田所さんのアパートに忍び込んでからお姉さんを浴槽で殺害したのです。


お姉さんが朝、田所さんを訪ねてから私はずっと出てくるのを待ちました。


それからは簡単です。

彼女は弟に容疑がかかっている事が真実か知りたがっていたのですから。

私が田所さんの秘密を知っていると言ったら部屋まで簡単について来てくれました。

あとは眠らせてから田所さんの部屋に運んで殺しました。

鍵は最初に殺した彼女さんから拝借しました。


私が今までの殺害に使ってきたコレクションは全て田所さんの部屋に置いてきました。

朝、彼が戻ってきた時は焦りましたよ。

私は部屋へ鉈を持っていく最中でしたから。

指紋も拭いてないし、今彼が部屋に入れば全ては水の泡です。

だから言いました。

お姉さんの右の首にホクロがあった事を、聡明な彼はすぐに私の発した言葉の意味を理解して慌てて逃げていきました。


あの時、彼の恐怖より怒りが強かったら私は鉈で彼を殺す事になっていたのでしょう。


まさか、ここまで上手くいくなんて田所さんには失礼ですが笑っちゃいます。


誤算は最後に殺したのが実の姉だった事です。

私は彼に近づく恋敵を排除できればよかっただけでした。


彼はきっと死の間際、私を思って逝ったのでしょう。

私は凄く幸せです。


仕事に行く時間になりました。

新しく気になる子ができたんで今日は大学の事務の傍調べ物をしないといけませんね。






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