ゆるっと①【ロリ魔王降臨】
とってもふざけてる物語です。
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ほんと、ええ、お願いしますっ!!!
俺の名は『ゼノン』、 この魔王城で働く魔人だ。
一応【魔王軍幹部】ではあるがそっちの仕事はほとんどしていない。正直する必要がないからだ。
ここ数百年人間と戦争は行われていないようだし、もちろん俺がこの幹部に就いてからもそんな物騒なことはしていない。
それだけ世の中が平和なのだろう、いいことだ。
魔人の俺がこんなことを言っているのを人間が聞いたら不思議かもしれないが、別に魔物は戦争が好きなわけじゃない。
人間からしたら魔物は恐ろしく強く、野蛮な生物だと思われてるだろうがそんなことはない。
確かに魔物は強い生物で、好戦的なところはあるが一部が飛び抜けて強いだけで【魔物】という括りでみれば人間と対して変わらないし、もちろん痛みを感じることもあれば死ぬことだってあるんだ。
戦争なんかしたくない魔物のほうが多いだろう。
「っ…と。もうこんな時間か…。そろそろ起こしにいくか」
書類の整理をしていてチラッと時計を見ると8時になっていた。起こしにいくのでもちろん『朝の』だ。魔物は夜に活動し始める、とよく人間は勘違いしているが、それは夜に魔力が高まる種族だけだ。
そもそも人間であっても夜に活動しているだろうが…と、言いたいがここは魔王城なので人間などいない。
今いた【斬首の間】をでて魔王城の最上階へと向かうために、転移陣のある部屋を目指し歩く。
ちなみに【斬首の間】と呼ばれる部屋だが名前から想像がつくような物騒なことは行われていない。
なぜか初代魔王様がそう名付けられたらしい。
しばらく廊下を進み、【転移の間】へとたどり着く。ドアを開けると……。
「Zzz…Zzz……。むにゃ、友達はボール…」
ベットの上ででわけのわからない寝言を呟く魔人が一人。
とりあえず近くの棚の上に置いてあった花瓶を持ち、あのマヌケを起こしにいくことにする。
「起きろ、このタコ」
ゴシャンッ!!
「うごぁぁあっ!? 頭!頭が割れるように痛いィィィッッツ!!」
持っていた花瓶を降り下ろすとなにかがつぶれるような音と花瓶が割れる音が重なるように聞こえてきた。寝ていたマヌケの耳障りな叫び声も一緒に。
「心配するな、割れたのは花瓶だ」
「それで殴ったからっスよねぇ!?」
頭…というよりおでこの近くを押さえながら俺に抗議を入れてくるのは『ロドリザー』という名の魔人。種族は亜魔族。外見は緑色の少しぼさっとした髪型に黄色い魔導服を着ている。
そこら辺の人間とあまり変わらないが体の硬さが尋常じゃなく硬い。
さらに特殊技巧も持ち合わせているので非常に優秀な種族といえるだろう。
「どうせ怪我することないだろうが」
「怪我しなくても痛いものは痛いんですよっ!! 」
未だにおでこ付近を抑え涙目なロドリザー。
「知るか、それより貴様、仕事をサボるどころか堂々と寝てるとは…いい度胸してるな?」
「ち、違うんスよ! えっと、これはあれっス…」
「ほう? なんだ、言ってみろ」
仕事をサボる正当な理由があるなら聞いてやろうじゃないか。体調が悪くて寝ていたというなら仕方ないが、こいつはそんな繊細な体ではないはずだ。
「つ、つまりこういうことなんス!」
ロドリザーが何かを差し出してきた。
「……なんだこれは」
「え? 知らないんですか、ゼノンさん!『 任帝堂3DZ』っスよ!」
ロドリザーが差し出してきたものは今人間の王都で大人気の小型ゲーム機、任帝堂3DZだった。
人間の王都でしか販売されていないので魔人であるこいつがなぜこれを持っているのか不思議ではあるが、それよりも重要なことがある。
「そうじゃない、これがなんだというのだ」
俺の問いかけに対し、ロドリザーは「まぁまぁ、聞いてくださいよ」と答え、『説明』が始まった。
「先日、任帝堂の伝説的なゲーム、『ハイパーモリオブラジャーズ』を手に入れたんスよ。 いやー、これがなかなか難しくて難しくて。 『デッパ』を倒すのに時間がかかりましてねぇ…。あ、デッパっていうのはですね……え? そこはいい? 早くしろって?…はい、わかったっス。……まぁ、要するにですね、『このゲームが面白いから悪いんすよ』」
「没収だ」
「あぁっ!!そんな!」
「『そんな!』じゃないだろうが、夜更かししたのをゲームのせいにしやがって…全く」
「苦労して手にいれたのに…」と嘆くロドリザー。
まぁ、壊してしまうのは可哀想ではあるし、とりあえず2、3日したら返してやるか。
と、考えているとロドリザーがこんなことを呟いた。
「没収とかいってゼノンさんがやりたいただけじゃ…」
「今すぐマグマに貴様ごと叩き込んでもいいんだぞ?」
「い、いえっ!どうぞ持っていってくださいッッ
!」
以前、本当にマグマにぶち込んでやったことがあるためか、即座に土下座をするロドリザー。
全くこいつは…、本当に反省という言葉を知ってるのだろうか……。
「そ、そういえば、ゼノンさん、魔王様のところへ向かわれるんじゃないんスか?」
土下座の体制のまま、顔をあげて質問をしてくるロドリザー。こいつ、話をそらそうとしてるな?
って、そういえば、そうだった。
「あぁ、そろそろ起床の時間だからな。 頼むぞ」
「うっス、リシェリーちゃんの部屋の前でいいんスよね?」
「魔王様と呼べ魔王様と」
俺がこの部屋に来た理由は二つある。
1つはこの魔王城には階段が備わっていない。
もう1つは、唯一の上の階への移動手段、『転移魔方陣』を使用するためだ。
外にでて飛ぶという手段もなくはないのだが、魔王城にはちょっとした結界が張ってあり、外からの侵入は難しくなっている。
『転移魔方陣』は書いてしまえば100年は使えるものだ。 だが魔方陣を書いた本人の任意がなければ使用ができない。
つまり魔王城の『転移魔方陣』に関してはこの魔方陣の製作者であるロドリザーの命令でしか働かないということだ。
「それじゃ、上へ参りまーす。足元にお気をつけ下さい」
「どこのエレベーターガールだ貴様は」
ロドリザーの命令によって、魔方陣が光だす。
そして―。
「到着でーす。またのご利用お待ちしております」
―そして一瞬にして最上階にある魔王様のお部屋の前へたどり着いた。
「あぁ、ありがとう。……それと、サボるんじゃないぞ」
「わかってますよ……。はぁ…俺の3DZぅ」
恨めしそうに俺の懐を見ながら魔方陣の光と共に消えていくロドリザー。
きちんと仕事をこなしてくれればとても有能な奴なんだがな…。
さて、と。
「魔王様、失礼いたします」
コンコンッ、とノックをして声をかけて入室する。
返事を待つのが礼儀なのだろうが、あいにく魔王様は夢の中に旅立っており、返事ができないので勝手に入らせてもらう。
部屋のなかはくまのぬいぐるみなどが飾ってある戸棚に花柄の大きなベットと机、といったなんとも魔王らしくないコーディネート具合だ。
…魔王といっても、年頃の『女の子』なのだから仕方ない。
【ムルガンド=リシェリー】これが俺の仕える魔王様の真名だ。
前王の娘であり10歳にして、魔王となった魔神である。
ベットの方へ向かうと、やはり魔王様は寝ておられたので起床させようと声をかける。
「魔王様、そろそろ起床してください」
「う~…あと3…」
すると意識が覚醒に向かっているのか俺の声に反応する魔王様。
3…? ふむ…、秒か分くらいなら待っても……。
「あと3機あればデッパを倒せたのにぃ……」
「起きろリシェリー」
「あひゅん!?」
配下にあるまじき言葉づかいに加え、チョップをくらわせる。もちろん手加減はしてるが。
突然の攻撃にビックリしたのか体を起こし声をあげた魔王様は「……ん~。ふぁ…あ~~……」と周りを見て、目をこすり眠そうにしながら背伸びをし、ゆっくりとあくびをした。
ここまで一連の動作をしてからようやく俺の存在に気づいたのか「あ、ゼノンお兄…ゼノン。おはようございますですよっ」と少しクセのある語尾と一緒に挨拶をしてきた。
「はい、おはようございます魔王様。 …ところで
昨晩は何をされておられたのですか?」
「ん~? えっとね、ロドリザーからもらった3ZSでゲームしてたのですよっ」
やはり、ロドリザーから3DZをもらい受けていたのか……。くそ、奴がなにか遊び道具を持っている時点で気づけばよかった……。
ロドリザーは昔から魔王様に遊び道具を与える。
別にそれ自体はかまわんのだが、どうも悪影響を与えるものばかりを魔王様に持ってくるのだ。
はぁ……。
「あのバカ……。なるほど、まさかとは思いますが、これで夜更かしをしておられたわけではありませんよね?」
「ちょ、ちょっと寝るのが遅れただけで……はぃ、ごめんなさいです……」
俺から怒りのオーラがもみえたのか、シュンッとなって素直に謝る魔王様。
こういうところは偉いな、と感じる…が、それはそれだ。
「全く……、ゲームをするなとは言いませんが節度をもってしてください」
「はぃ……」
消えそうな声で返事をする。
…反省もしているようだし、なにより一番を悪いのは俺に無断で3DZを魔王様に渡したロドリザーだ。
ここらでお説教は終わりにしよう。
「それよりも、朝の食事が用意されてますので、召し物を着替えて『鳳凰の間』へお行きください」
「はーい」
というわけで、魔王様がお着替えをするため一旦部屋の外にでる。
そして、胸の内ポケットに入れてあった物を取り出す。……さて、『コレ』をどうしてやるか。
…………。
……………。
中の鉄全部溶かしてしまおうか。
いや、それでは俺の魔力を無駄に消費することになるし…なにより勿体無いな、よし。いつかイベントをするときの景品にしてやろう。
☆☆☆☆
「ふぅ…今日も美味しかったですよっ、アギル」
「光栄です、リシェリー様」
朝食を終えて魔王様から賛美の言葉を貰っているのはアギルという魔物。
紫色の毒々しい鬣と血で染まったかのような赤い体毛……、これを本人に言うとに怒られるので言いはしないが。
シェフ帽を被り白いエプロンを着るアギルさんはもちろん魔王城のコックだ。
どんな食材であれ極上の物へと仕立てる彼の噂は人間にすら広まっているほどの腕の持ち主である。
ちなみに自慢ではないが俺は魔王城ではかなり偉い方で、立場的には彼よりも上ではあるのだが、この城に住む魔物達のなかでもかなりの年長者であるアギルさんには頭があがらない。
「今日も素晴らしい出来映えでした、ありがとうございます、アギルさん」
「おう、当然だぜ!今日の肉はなんたって【殺戮の森】からとれた幻獣『ヒトゴロシ』の肉をつかってるからな」
「なんですか、そのあからさまに物騒な名称」
一体何があった森なんだろうか。
「あっひゃっひゃっひゃっ、んだその森」
この無駄にテンションの高い笑いかたをするのは『マルゲリータ』という魔物だ。
卵のような体に手足が生えているという、容姿だけは可愛い格好だがその中身は陽気なおっさんだ。
ちなみに、魔王軍の軍隊長だ。肩書きどうりその強さは本物である。
「マルゲリータ…なんでお前がいるんだ」
「おいおい、さっきからいただろうがよ」
いつも俺と魔王様しか朝食の時間にこの『鳳凰の間』に集まらないというのに、なぜか今日はマルゲリータが来ていた。
いや、別にダメだという訳じゃないが……。
「珍しいな、お前が来るとは」
「ああ、久しぶりにアギルさんの飯を食いたくなってな」
「もうないぞ」
「ええっ!? ずっと待ってたのに!!」
「冗談だ、ほれ」
いつの間に用意していたのか、マルゲリータの前に料理を置くアギルさん。
……あれって、卵料理?
「おほぉ、ありがてぇ!さんきゅーな。…んぐっ!んぐっ!……あむっ。……ふぅ、美味いっ!」
「「「…………」」」
「あれ?どうかしたのか?」
「いや……うん。なんでもない」
…なんというか。
『共食いじゃないのか……』
マルゲリータ以外の心が一致した気がした。
☆☆☆☆☆☆
「ねぇねぇ、アギル…」
「はい、なんでしょうか魔王様」
アギルさんの赤い体毛を引っ張り呼びつける魔王様。
「えーっとですね…、この前作ってくれたあの『ぷりん』という物をまた作って欲しいのですよっ…」
『ぷりん』、確か1週間ほど前にアギルさんが人間の知り合いから教えてもらって作ってくれたあのデザートか。
あれは病み付きになる美味しさだったな…。
「……申し訳ありません、『ぷりん』の材料となる物のなかで『カラメール』という食材が足りないため…以前作らせていただいたような『ぷりん』は出来ないですが…それでもよろしいですか?」
「材料が足りたい…ですか…。あっ!ならその材料を買いに行きましょう♪」
「「え″」」
俺とアギルさんとでなんとか魔王様をひき止めようと諭していると、魔王城の兵士がその場に割り込んできた。
「た、大変です!!」
ドタバタと息を切らしながら走ってきたその兵士の表情は青ざめている様子がみえた。
「どうした、なにがあった!」
魔王様が食事を終えたとはいえ、まだその場にいるというのにここまで慌てながら入ってくるということはそうとうな事が起きているようだ。
「み、南の領地を治める『ドラグア』様が人間達に戦争を仕掛けようとしているみたいです!!」
「なぁッ!?」
「あ、そうだ。それ伝えに来たんだったわ」
「はぁッ!?お、おまっ、お前!なんでそんな重要なことをっ!!」
「めんごめんご、流石に領主を俺が独断で殺るわけにはいかねぇからよ、一応魔王様の了承を得ようとな」
……?
なにいってるんだ、こいつ。
魔王様の了承なんか得なくともこいつには敵を殲滅する権限があったはずだが……。
「……で、どうします?魔王様。ドラグアはもう人間達の街の1つに乗り込もうとしてますぜ?」
かけている小さなサングラスをあげて問いかける。
……なるほど、そういうことか…………。
ドラグアは有能な領主だ。
恐らくその力を失うのが惜しいのだろう。
この魔王様なら、その命を奪うといった判断は出来ないだろう。
上からの命令ということにしておけば奴を生かしておいても他のやつからの非難は少ないとでも考えたのだろうな…。
……まあ、その判断は間違ってない。
間違ってない…が、タイミングが悪かった。
「…よしっ!お仕置きしようっ!」
「了解、『お仕置き』しにいきま―」
「さ、ゼノン!いきましょう!」
「―え」
「『カラメール』を買いに!」
残念だが、今の魔王様の頭には『ぷりん』の3文字しかない。
作中に出てくる任帝堂は某任〇堂とは全く関係ありません。またマルゲリータはピザではなく卵みたいな魔物です。