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六話 獣人


「おー、確かにあの試合の…

どうやらミノタウロスを倒す力は有るみたいだが果たして俺たちを倒せるかねぇ?」



対戦相手の二人の内、体の小さい亜人が語りかける。





(黙れ。失せろ、

貴様になど興味は無い。




だがまあ…もう片方は見所がある。

頭部の一部にある獣人の証と生えた尾から獣人の中でも虎の獣人とわかる。


実力も本物だろう)


アバロルは二人を軽く観察し、手を握り締めた。魔力の巡りは上好。

これならばいける。






「御託はいい、さっさと来い」

敵に踏みより、言い放つ。



その間にネフィムは黙々と弓を構えた。





小さな亜人は顔を歪め、悪態をつく。


「ケッ!

…ゴメス、行け!」





「……」




小さい方がゴメスと呼ばれた獣人に命令する。

獣人は命令通りに動き出した。



真っ先に狙うはアバロルだった。その身体能力の高さを活かし、素早く駆け抜ける。

厄介な敵から排除する、という事だろう。



が、アバロルが狙いを定めたのは小さい方…亜人であった。

獣人に負けず劣らずの速さで獣人の通り際の攻撃を躱し、瞬く間に間合いは縮めた。

更に瞬時に作成した魔力剣で攻撃を繰り出す。




しかし、恐ろしいスピードで獣人が間に入り魔力剣を器用に受け止めた。






「……」






眼は黒い濁りを見せ、無表情が更にそれを不気味なモノと変化させた。






「死ねぇ!!」





アバロルと獣人が睨み合う中、小さい方がアバロルに向かって斧を振り下ろす。



小さいと言われた亜人だが、人並みの身長はある。肉体も鍛えられ、今までの戦いを制した証拠である。

…まあ獣人が居なければ尤も勝ち残れてはいないだろうが。と付け加えるアバロル。




確かにその一撃は十分に人を殺せるだろう。しかし、相手(アバロル)は人に非ず。

生まれたばかりで神と呼ぶにはまだ碌に動けない者とはいえ、嘗て名を轟かせた魔神の肉体と知識を体に持つ後継者である。




その刃は鎧に触れた瞬間、砕け散った。




当然だろう──




アバロルは心の中でそう告げる。









唖然ととした表情で亜人は後退する。傷一つ付かないのだ、誰だって少なからず恐怖を抱くだろう。


アバロルは視線を獣人から亜人に向ける。放たれた殺気が亜人を覆う。




後退しながらも面食らう亜人。

様子を伺っていたネフィムは遂に出来た隙を付き、矢を放つ。

風を切る音と共に狙いを定め放った矢は、少し傾きを見せながらも亜人の太ももに直撃する。






「ぎゃあ!」




亜人は呻き声を上げ、膝を着く。

獣人はソレを横目に見ると受け止めていた魔力剣を振り払う。

その高い身体能力を使い、俺を飛び越えてネフィムを狙う。

おそらくは主を狙う敵を優先し、更に弱い方から狙う為だろう。



させまいと魔力を込め、作り出した魔力剣を獣人目掛けて放つ。




しかし、見事な動作で軽々と躱す獣人。




が、躱した事で出来た隙を使い、ネフィムは弓で獣人の腹部を射た。



音もなく獣人を射た筈の矢は刺さったかに見えた。しかし、あまりに強固な皮膚と筋肉に敵わず、折れた。





「ッッ!!」




攻撃が通じないと判断したネフィムは直様、

標的を亜人に変える。



地に降り立ち、態勢を立て直した獣人は再びネフィムの元へ駆け出そうとするが追い付いたアバロルが立ちはだかる。






「「……」」









両者共に動かず…









「クッソタレエエエエエエ!!

殺してやる!!

グチャグチャにしてやる!!!」




その背後では憤怒した亜人が足を震えさせながら立ち上がる。









ーー悪足掻きを…

そこで寝ておけば楽に死ぬる筈だったのだがな。






眉を顰め、ネフィムに視線を送るアバロル。その意図に気付いたネフィムは弓を亜人に定め、再度構えた。



再び動こうとする獣人だが、アバロルは剣で切り裂かんと振るいそれを阻止する。

油断をすれば切られてしまう状況下の中、獣人は亜人を助ける為に動けずにいた。







「!?


お、おい…

やめろ!わ、悪かった!俺が煽った事は謝る!だからやめてくれ!」



ネフィムの構える姿を見つけた亜人は命乞いをする。





しかしネフィムは躊躇いも無く、矢を放った。





「やめ───」



無様に震え、立ち尽くしていた亜人の顔面を見事に貫き、その額からは血が垂れる。



壊れた玩具の様に音もなく倒れた亜人。







その様子を見た獣人は抵抗を辞め、構えを解く。


黒く濁っていた瞳に光が灯り、アバロルを見つめた。




獣人は口を開くとアバロルにたどたどしく呟いた。




『もう、終わり、だ。

俺、を…殺してくれ』





普段聞きなれない言語で語りかける獣人。魔神の知識でその言葉を理解したアバロルは頷き、魔力で光り輝く魔力剣でその首を裂いた。

ネフィムはその様子を駄々と見守る。






アバロルに獣人が見せた切られる前の一瞬の表情は怒りでもなく、悲しみでもなく、笑顔だった。










安らかな表情で転がる生首を少しの間、眺めるとアバロルは歓声を背にコロシアムの内部へ歩いて行った。






観客の歓声が響く中、歩くアバロルを慌てて追い掛けるネフィム。

堂々としたそのを頼もしく思うネフィム。獣人の首を切った時に感じたあの違う雰囲気は気のせいだと思い直し、より早く走り出した。



少し、書き方を変えてみました。

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