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前編

ご指摘いただいたこともあって、彼らの言い分を書いてみました。色々突っ込みどころは山ほどでしょうが、異世界、パラレル補正、ご都合主義で流していただけるようにお願いします。

「御子柴先輩」

掛けられた声に顔を上げる。英語が公用語のこの学園で、わざわざ日本語で話しかけてくるのも珍しい、と思って顔を上げると、3人の少年がそこに立っていた。



「今、お時間よろしいでしょうか?」

見知った――とはいえ、少なくとも私が一方的にだが――顔に、少し顔かたむけ、問うように相手を見上げる。

学園内の共用コーナー。学食とは別のフードコーナーとロビーを兼ね合わせた場所である。勇者だな、校則違反というほどではないが、ここでも一応英語でしゃべるよう指導されているはずだ。

「Give me your name」

タイの色で年下認定した、というのを装って、上から目線で訪ねる。むっとした表情の二人を制し、最初に話しかけてきた少年が、丁寧に頭を下げた。

流石、幼稚舎からこの学園にいる奴は違う。

『失礼いたしました、一年の二ノ宮 真と申します。彼らは同じクラスで一色 明、七尾 俊彦です』

流れるようなキングス。うん、お見事と微笑むと、一瞬惚けたような表情が返ってくる。

まぁ、慣れているからね。こういう反応。DNAって偉大だと思うよ、うん。

ちなみに、ねーちゃんたちの周囲はもっと凄いよ。




『場所を代えたほうがよろしくて?』

『お願いできれば助かります』

読んでいた本を片付けると、立ち上がる。おっと、いかん。

『友人と待ち合わせをしておりますの。連絡してもよろしいかしら?』

『はい』

学園の敷地内のみ有効のスマホを取り出して、莉沙紀にすばやくメールする。

しかし、うふふ、とうとう動いたか、こいつら。

『お待たせしました。日本語が話せる場所がよろしいのね?』

『はい、できれば余り人目のないところが…』

おやおや、困ったぼっちゃんたちだこと。

『余り、人気の無いところで殿方に囲まれるのも…』


どうしましょうと、頬に手を当てると「別にここでもいいじゃねぇか」と、後ろから声がする。それを他の二人が諌めた。そういえば、もう一人は中等部からの外部生だったっけ。少しは、この学園の風習が身についていらっしゃるようだ。


『では、個別の談話室に参りましょう』

そういって、スマホのアプリで談話室の空き状況を調べる。一つ一つの部屋が、特殊なアクリル樹脂で作られたその場所は、周りから見えてはいるものの、防音設備が整った、談話室、というより小さな会議や、学習室として使われることが多く、いつも満室の状態だった。予約は必然である。

『幸い、試験明けで満室は免れたようですわね』

ご都合主義とは、こういった時に働くものだとしみじみ感じた瞬間だった。







「それで、私に何の御用ですの?」

他の「談話室」と違って、この場所は自分たちで食べるものを持ってこなければならない。近くのティサーバーで淹れた紅茶を二ノ宮君が置いてくれる、さすが委員長、気遣いができる男だね。


そう、彼らがヒーロー側のライバルキャラともいえる人物。同じクラスの委員長に、隣の席の男の子、高等部に外部入学した少年の3人だ。ヒロインちゃんを含めて、皆同じクラスだったりする。

どんなコたちか興味がありましてね、役員特権を利用して、少し調べたわけですよ。勿論、個人情報は守らせていただきます。


日本語が話せる場所、というのは外部生の彼を慮ってのことだろう。いくら、それなりに話せることが入学の大前提とはいえ、日常レベルで話すのは、なかなかしんどいものが有る。

そういえば、小説内で上総が彼女を気にかけるきっかけとなるのが、独特の習慣を持つ学園に戸惑っているのを助けた事だったと記憶している。その当時、私たちにも外部生を気遣ってやれって良く言っていたから。

人の上に立つ者として、高等部生徒会長として当たり前の言葉だったが、後になってみれば、それが前振りだったと良く分かる。


小説内じゃ、書かれて居なかったから気付かなかったけど。



「単刀直入に申し上げます。八島先輩に彼女と別れるよう進言してはいただけませんか?」

「何故私が?」

「アンタがしっかり八島を捕まえておかなかったのが原因だろうが!」

「一色!」

二ノ宮君が後ろの少年を慌てて止める。外部入学の一色君は、試験場で彼女と隣りあわせで色々励ましてもらったことがきっかけで、想いを寄せることになった。小説内ではそう書かれていたと記憶している。

それ以前に、よく双倭うちに受かったよね。筆記試験の成績以上に厳しいことで有名なんだけど、面接試験。きっと、彼女と一緒に受かりたくて、頑張ったんだろうな。

でも、それとこれとは別問題です。




「今一度お尋ねします。何故私が上総さまと彼女の仲を裂かねばいけませんの?」

「だから…」

「ご婚約者ではなかったんですか?」

これ以上、一色君にしゃべらせては不味いと判断したのか、それまで黙っていた七尾君が口を開く。

「婚約はしておりませんわ。恋人でもございません」

え?と、三者三様に目を見開く姿に思わず笑ってしまう。

「あくまで、親同士の口約束にすぎません。…一応、両家の間では、高等部の卒業を待って正式発表する、という事になってはいましたが」

「だったら…」

「だからこそ、だ」

突然聞こえた第三者の声に、二ノ宮君たちが振り返ると、そこには黒澤君と莉沙紀、真田先輩に、一年生総代の水沼君が立っていた。




「一応ノックはしましたわよ?」

にっこり笑顔の莉沙紀が怖い…二ノ宮君たちは扉に背を向けていたから気が付かなかったのだけどね。部屋の外でタイミングを見計らっていたのは事実。ノックがあったかどうかは…謎って事で。



「莉沙紀?」

彼女にメールをしたのは私だから、黒澤君を連れてやってくることは想定済みだったけど、何故に真田先輩たちが?

一言に込めた問いかけを正確に理解してくれるのは、付き合いの長さか、彼女の勘のよさか。

「喬さんに連絡を取ったら、丁度三人いっしょでしたの…それで、一体貴方たちは華苗に何をさせたいのです?」

私の隣に座ると、後輩たちを見上げて莉沙紀は静かに問いかける。親しいものならすぐに分かる彼女の怒りに、黒澤君に視線を向けると、ゆるく首を振られた。

つまり、止めるつもりは無い、ということなんですね。



「八島先輩を諌めていただきたくお願いしていました」

意を決した様に二ノ宮君が答えた。なんていうか、色々聞きたいことはあるけれど、それを全て無理矢理引っ込めた、というか飲み込んだ顔ですね。ごめんなさい、でも持つべきものは友人ですね。

「諌める、ね」

くすり、と利沙紀は嘲う。

「それで、貴方方は彼女に何かおっしゃいましたか?」

「言いました」

「言ったっすよ。でも、聞く耳持たないっていうか…」

いや、多分彼女の訊きたい事はそういうことではないと思う。



「…お座りになったらいかがです?二ノ宮君たちも、皆も」

正直、見下ろされてって状況は好きじゃないんだよね。後輩たちは、扉の近くに(別の場所に座ろうとした一色君を水沼君が止めた)。上座下座の認識は、社会人になったとき役に立つから、覚えておいて損はないよ、と笑顔を向ける。言葉にはしませんが、はい。



「教えてやるよ。俺たちが、何故華苗をこれ以上、八島に関わらせたくないか、その理由をな」

話し方が、雑になっていますよ、真田先輩。


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