7 平穏とも呼べる日
「あなたのおねえさんよ」
はぁ?何だね?背伸びをしたい年頃なんだね、きっと。
(いいかい、お嬢ちゃん。『おねえさん』ってのはもっと大人の
そう、例えば憧れの年上女性なんかを指す言葉なんだよ)
まだ寝ぼけているのか、俺のCPUが妙な答えを弾きだす。
ん?んん?
もしかして、生物学的・法律上の『お姉さん』か?
だとしたら、今日まで何処にいた?
初めて見るんだが?
「楽しみだったのはわかるけど、父上達へのあいさつより先に会いにくるのはどうなんだろうね?」
「ならレイはそっちに行けば良いいんじゃない?」
「そんな事をしたら、ユリアはいつまでも、ここでヒロと遊ぶんだろ?」
「そうよ。そのために来たんだから」
おいおい、挨拶も無く、勝手に姉弟の会話(?)に割り込むなよな、ニイちゃん。
まぁ、『兄ちゃん』なんだろうけどさ。
「初めまして、僕はレイナード。君とユリアーナのお兄さんだよ」
やっぱりか、まぁ、そうだろうな。なんとなくそんな気はしていたよ。
まぁ宜しくなっとばかりに、片手を上げて
「だぁ!」
と返す。
「あーあ、わたしには、返事しなかったのに!」
むくれる姉を
「ちゃんと、あいさつしなかったんだろ?」
窘める兄
「ちゃんとしたわよ?見てなさいよ、もう1回するから」
Take2
「初めまして、わたしは、ユリアーナよ。よろしくね、ヒロ」
スカートを軽く摘まんで、お辞儀をする。
(さっきと全然違うじゃねぇか)
俺の心中など何処吹く風で、何かを求めてジーっと見つめてくる。
しょうがねぇなぁ。
「あ~い!」
返事をしてやる。
「あーもうカワイイ!やっぱりこの子、もらっていきましょうよ、レイ」
突然抱きつかれ、ブンブン振り回される。
「それは、僕らには決められないんじゃないかな?」
「でもお祖父様にお願いしたらどうにかなるんじゃない?」
(子猫じゃねぇんだ。ホイホイ貰われてたまるかよ!)
なんか頭痛の種が増えていく気がする。
その後、
「そろそろ、父上達の所に行かないと」
と、なかなか俺を放さない姉を兄が連れて行く。
静かに一礼して二人を見送ったバートンが
「暫くしますと、皆様で御出でになるでしょうね。また騒がしくなりそうです
皆様、ヒロ様とお遊びしたいのですよ。許して差し上げて下さい」
一言謝ると俺にも一礼して、扉を閉めた。
いや、まぁ愛されているのは嬉しいんだけどさ。
その夜は、俺を放そうとしない姉を膝の上に乗せて笑う祖父と
それを嬉しそうに眺める兄を後ろから抱きしめる母と
自分だけ手持ち無沙汰でウロウロする父、っと皆で過ごした。
「ウロウロするな。落ち着かんか」
「なら代わって下さいよ。
なあ、ユリア、パパにもヒロを貸してくれよ?」
「イヤ。プニプニできもちいいんだから」
「あらあら、じゃあレイちゃんを貸してあげましょうか?」
「いえ、えんりょします。父上は硬くて痛いですから」
(あ~、確かに父は堅くてイタイっぽいな)
「なーんーでーだーー!!」
「うるさい。黙れ」
「そうよ。ヒロがビックリするじゃない」
騒がしい喧騒に包まれながら夜は過ぎていく。
(まぁ、偶にならこんな日も良いな)
騒がしくも、暖かく、穏やかな、心地良い場所。
優しさと愛情に包まれた、ある意味では平穏な日々。
望んだ世界がココには在る。
いつまでも続けば良い。続いて欲しい。
そう願いながら、今日も眠りにつく。
>サイド ???
目の前で繰り広げられる家族の団欒を楽しそうに眺めながら。
「そうだね、こんな日が『いつまでも』続くと良いね。
それが『君にとっては』なのが残念なんだよ」
後半は少し寂しそうな声で呟く。
背後に現れた人影に、振り向きもせずに聞く。
「『確定』したんだね?」
「はい」
「そう。やっぱり『生まれる』んだね?」
「はい、ご想像の通りです」
「そう。ありがとう。下がって良いよ」
「汝望むるは、平穏なる日々っか。
ままならないね、人生は
『だからこそ』でもあるんだろうけどね
羨ましいんだよ」
明りが消え、闇の中に声だけが流れる。
「敵か味方かは選んだ道次第なんだよ」
「相手は『魔王』だよ」
ここで、一区切りのつもりです
次とその次は時間が飛んで
説明メインです
明日は投稿できるか