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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院(2年目) 編
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64 残る謎

自動人形オートマータを作ろう計画』


 結論から言えば失敗だった。


 そりゃそうだ。今日の今日で『金属に意志を宿す』なんていう高難易度の構成魔法が成功する筈は無い。


 魔銃ベレッタの『魔力を圧縮し射出する』という構成魔法も、風の上位精霊エアルの指導の下で20日以上かかっている。

 自力で『金属に意志を宿す』なんて構成を組上げるのにどれだけの時間がかかるかなど想像もつかない。


 そんな本音をルーリドゥールに正直に話したところ

「そんなん当然やろ?そうそう簡単には出来へんから、製法が後世に伝わってないんやから」

 そんなあっけらかんとした答えが返ってきた。


「まぁ、アンタもやらなアカン事ぐらい有るやろうし、20~30年ぐらいはガマンしたるわ」

 流石に数千年を生きてきた天上竜は時間感覚が人とは違った。


「10年も経ったら俺の方が忘れちまうよ」

「それは大丈夫や。忘れんように時折様子を見に行くよって」


 いやーそれは止めてもらいたい。こんな爆弾娘に度々訪れられたら、俺の身が持たない。


「まぁ、今度は『ブッ飛ばしちゃうぜ2号君』が完成したら持って行くよって」

「そんな物騒な物は要らないよ」

「遠慮せんでええよ。なんなら竜の姿に戻ってバサー飛んでたるで?」

「止めてくれ!頼むから止めてくれ」


 巨大な天上竜がフェルディールに飛来なんかしたら、王国の軍隊が町を取り囲みかねない。

 ただでさえ先日魔物の大量発生なんていう事件があった後だ。

 多数の魔物が生息する『迷いの森』に近いフェルディールの町は同じ事が起きる可能性を考慮してか、軍の駐屯部隊が増強されるという噂もある。

 駐屯部隊が増強されると冒険者の仕事が減るという事もあって、フェルディールの冒険者ギルドは様々な噂が飛び交っている。



「ちょっと良いか?」

 そう声を掛けてきたのは、アリシアだった。


 ルーリドゥールのオリハルコンや自動人形オートマータの話に興味の無かった様でアリシア、ナタリア、メリオラは室内の意味不明な装置や、ガラクタを見ていたが、それにも飽きたらしく今はルシアリーヌの持ってきた戦戯盤に興じていた様だ。


「ん?何?」

「さっき話していた『意思を宿した金属』なんだが、私にも1つ心当たりが有る」

 意外と言ったら失礼だろうか、剣や剣術にしか興味の無いようなアリシアが、そんな事を知っているとは思わなかった。


「ほー?それは是非とも聞かせて欲しいわ」

 ルーリドゥールは身を乗り出し話の先を促す。


「ああ、『インテリジェンスソード』だ」 

「インテリジェンスソード?」

 アリシアの言葉にルーリドゥールは何かを考え込むように呟いた。


 『インテリジェンスソード』簡単に言えば人格を持った剣だ。

 一口にインテリジェンスソードと言っても様々な物がある、波長の合う者だけが意思の疎通が出来る物や、万人に聞こえる言葉を喋る物、中には使用者の体を支配してしまう物まである。


 確かに『意思を宿した金属』の代表格と思って良い存在だ。


「ウガー!」

 ゴン!


 妙な叫び声と共に何かを打ち付けた様な音がした。

 音の発信元を見れば、机の上に突っ伏したルーリドゥールの姿が有った。


「見落としたー。こない分かりやすい前例が有ったんに、全然思いつかんかったわー」

 突っ伏したまま頭を抱え呻いている。


「ハァ、ウダウダ言うててもしゃあないな。ここから挽回やな」

 膨大な人生経験は伊達ではないのだろう、アッサリと気分を入れ替えたルーリドゥールは、気にした様子の無いサッパリとした顔付きで起き上がった。


「まずは情報収集やな。インテリジェンスソード作成の歴史、作成者のそれまでの研究・実績からどんな技術が使われとんのか調べたる」

 光明が見えたのか、ルーリドゥールはやる気満々といった感じだ。


「でも、どうやって調べる?そんな情報の載っている文献なんて中々無いだろ?」


 インテリジェンスソード自体は何本も現存している。

 だが、その製法を記した物が有るという話は聞いたことが無い。

 そもそもが、それが分かっていないから『失われた技術』なのだろう。


「文献が無いんやったら、生き字引に聞いたらええやろ」

「生き字引?」

「そうや、居るやろ?イロイロ昔の事を知っとる奴が、この近くに」

「近く? ・・・ エルフか!」

「正解! 大森林のエルフの里には『始まりのエルフ』が何人か居る。知っとるかどうかは別として聞いてみる価値は有るやろ」


 『始まりのエルフ』それはエルフの祖先を指す言葉だ。エルフの祖といえば『純粋なるエルフ』即ちハイエルフという事になるが、『始まりのエルフ』といえばハイエルフの中でも最初の者達、いわゆる『第一世代』のハイエルフを指す。


 『始まりのエルフ』は精霊王との契約により老いる事の無い存在となった。そしてその血を継いだエルフ達は老い難い存在となった。


 なぜ精霊王がそんな契約を結んだのかは誰も知らない。知っている筈の『始まりのエルフ』も精霊達も、その事を語るのは禁とされているらしい。


 そんな『始まりのエルフ』は、まさしく神話の時代からの生き証人だ。


「たしかに、可能性としては十分だろうな。もしかしたら製法自体知っているかもな」

「かもしれん。けど、教えてはくれんやろなー」

 実体験済みなのだろう、そこまでの期待はしていないようだ。


 思い立ったが吉日。ルーリドゥールの思考はまさにそんな感じなのだろう。

 すぐにでもエルフの国『グレイトアーク』に行くつもりなのか、準備をし始めた。


 こころなしかウキウキとしている様も見えるルーリドゥールは、次々と正体不明の物体を鞄の中に詰め込んでいく。当然その鞄も中は亜空間にでもつながっているのだろう、既に机の後ろに有った山の様なガラクタ(にしか見えない物)が半分以下になっている。




「さて、ウチはもう出掛けるけど、アンタ等はどうする?もし、エルフの里に行きたいんやったら、連れてったてもええけど?」

 一通りの準備を終えたルーリドゥールが俺達に声を掛けた。


 そこに関しては、彼女の準備を見ながら皆と相談はしていた。

 エルフの国『グレイトアーク』は、人間にとっては最も辿り着き難い秘境中の秘境といえる場所だ。

 『人生の中で一度は行ってみたい場所』の上位に入ることは間違いないだろう。

 グレイトアークを目指し大森林で遭難する者は後を絶たない。


 だが

「今回は止めておく」

 行ってみたいとは思うが、この機会を逃したら次は無い。という感じでもないし、遠出する準備もしていない。次の機会にということで構わないだろう。


「そう?まぁ、好きにしたらええ。ウチは暫く向こうに居るつもりやから」

「え?ああ、そうなのか。『暫く』てどの位だ?」

「んー、まぁ3~4年ぐらいやろな、あっという間や」

「そっか、3,4年か。って長い! どこが、あっという間だ!?」

 本当にコイツの時間感覚はどうなってるんだ?


「んー、イマイチやな。40点」

「何の点数だ?何の?」

 別にノリツッコミのつもりじゃないぞ。ホントだよ。


「フフ、まぁええよ。それよりコレ持って行き」

 そう言って渡されたのは頑丈そうな皮袋だった。


「これは?」

「その袋は、この袋と対になっとる」

 ルーリドゥールの手には渡された物とそっくりな袋が有った。


「この袋の中は拡張空間になっとる。入り口は2つ。ココとソコや」

 自分の持つ袋の入り口と俺の持つ袋の入り口とを指差して言う。


 亜空間(拡張空間)に2つの入り口を作って、それぞれを別の袋の入り口に固定化した訳だ。


 俺は近くに落ちていたガラクタ(らしき物)を袋の中に入れた。

「こっちから入れた品物が」


「こっちの袋から取り出せる」

 ルーリドゥールは、俺が入れたのと同じ形のガラクタを取り出した。


 試しに俺の持つ袋の中を確認したが、入れたガラクタは無くなっていた。

 これはもう簡易的な転移装置だな。


「問題は相手が品物を入れても分からないところやな」

「ああ、それは問題だな」

 お知らせ機能が無いと確認するまで放置される事になる。


「まぁ、なんか面白い物が有ったら送るよって、こまめに確認してや♪」

 そう言って笑ったルーリドゥールは何かを袋の中に入れた。


「いや、自爆する『ブッ飛んじゃうぜ1号君』は要らないから」

 



 俺達は「バサーと飛んで町まで送ったろか?」というルーリドゥールの提案を断り、来た時のポータルから逆転移し学院地下迷宮へと戻った。


 そしてマシウスが重大なことに気付いた。


「あ! 迷宮の事を何も聞けませんでしたね・・・」

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