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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
王都の騒乱 編
41/90

41 グリフ家の朝

「なにしてんだ?」

 

 いつもの無表情で列に並ぶ侍女姿のアリシア。

 履き慣れないスカートに恥ずかしそうなメリオラ。

 どう見ても似合っていない執事服のヴァルヘイム。

 

 数日前にフェルディールで別れの言葉を交わした3人が目の前に居る。

  

 振り返れば微笑ましく笑う家族がいた。

「どういう事だ?返答しだいではそれ相応の対応を取らなきゃならんのだが?」

 

「長期休暇の間に更なるレベルアップを図ろうと思ったら良い師匠のところに弟子入りするのが一番だろ?私の知る限りで最も腕の良い人物を頼ってみたら『じゃあ、ウチのお祖父ちゃんに短期弟子入りしてみる?』て返事を貰えてな。『剣皇』の教えを受けられるのなら返事は考えるまでも無いだろ?」

 

 アリシアの返答に振り返れば笑顔で手を振る姉がいた。

 

「なら何でその事を言わない?一緒に来たら良いじゃないか?」

 こんなドッキリ企画立てる必要があるのか?

 

「その方が面白そうじゃない」

 姉がアッサリと言ってのけた。

 

 やっぱりな、だと思ったよ。

 

 

 居間で寛ぎながら積もり積もった話をしていると、

 

「ご歓談中に失礼致します。紅茶をお持ちしました」

 バートン達が紅茶を持ってやって来た。

 

「その使用人ごっこはいつまで続けるんだ?」

 いまだに使用人の格好のままのアリシア達に基本的な質問をぶつけてみる。 

 

「一応、今日1日はこのままの予定だが?」

 アリシアはいつもの無表情なのに何故か楽しそうだ。

 

「まぁ、こんな経験は、なかなか出来ないだろうからな」

 執事服を着崩したヴァルヘイムも楽しそうに笑って言う。

 

「バートン、この見習いに言葉遣いと服装をちゃんと指導してね」

 

「承りました。御二人共こちらへ」

 2人を引きずり退室していく。

 

 よし、嫌がらせ完了だ。

 

 

 

 半年ぶりの俺の部屋は何も変わっていなかった。

「こまめに掃除してくれていたんだな」

 塵や埃の1つも無い部屋に感動すら覚える。

 

「だってのに、お前等は」

 

 室内を物色しているヴァルヘイム。

「なんかこう、人には見せられないものとか無いのか?」

 無ぇよ、有っても教えないよ。

 

 壁に飾られた剣を手に取っては振っているアリシア。

「流石に質の良い物ばかりだな、子供用なのが残念だがな」

 大人用だったらどうする気だったんだよ?

 

 極めつけは、俺のベットで眠りこけるメリオラ。

「ボクもうお腹一杯だよ」

 お前はもうホントにお約束だな。ヨダレだけは拭けよ。

 

「一応、これでも王族の血も入ってる侯爵家なんだけど?」

 フリーダム過ぎないかお前等?

 

「母が元王女で、父は王都で要職に就いているのだったか?」

 アリシアは「信じられんな」と言わんばかりの視線だ。

 

「確かに普段のお前を見ていると貴族だって感じはしないからな」

 ヴァルヘイムが補足説明を入れてくれる。

 

「そこは俺もそう思ってるよ」

 敢えて貴族らしくしてない訳だしな。

 

「その上、祖父が剣皇か?」

 アリシアが羨ましそうに呟く。

 

 そんな会話をしていると

 

 コンコンコン

「失礼致します。御客様の部屋の準備が整いました」

 

 バートンが部屋の案内にやって来た。

 

 そんなバートンを見ながらヴァルヘイムが

「その上『銀閃のサーキス』が執事として仕えているってどんな家だよ」

 溜息混じりに呟いた。

 

「『銀閃』?」

 聞きなれない単語が聞こえたが。

 

「『銀閃のサーキス』Sランクの冒険者だよ。ミスラじゃ有名人だぞ?」

 

 銀閃の何某は初耳だが、サーキスの名前には聞き覚えが有る。

 

 振り返れば執事のバートレット・サーキスと目が合う。

「え?AAランクって言ってなかったか?」

 バートンに昔聞いた話を思いおこして聞いてみる。

 

「Aランクより上でしたっと申し上げたかと思います」

 しれっと言ってのける辺り、相変わらず油断ならない。 

 

 

 起きそうに無いメリオラを抱え部屋へと向かうアリシア達を見送り俺も今日は寝る事とした。

 

 去り際に「明日から朝稽古だからな」と言い残して行ったアリシアのやる気が恐ろしかった。

 

 

 

 翌朝

 

「おきてくだちゃい。ヒロたま。お・き・て」

 

 誰かが俺を起こそうと揺すっている。

 

「う~ん、朝か?」

 

「あちゃです。おきてくだちゃい」

 

「だが、断る!」

 まだ眠いのですよ。目が覚めてから暫くゴロゴロするのが至福なのですよ。

 

「むーう、よいちょっ!」

 

 何かがベットによじ登った気配がする。

 

「トウ♪」

 

 ボス!

 

「ぐふ!」

 

 何かが俺の上に降ってきた。

 そのまま馬乗りになり暴れ回る。

 

「はーい、おきてくだちゃい♪おきないとユリアーナたまにおこられまちゅよ?」

 

 なに?姉様に、だと。

 

 ガバ!

 

「おお!おきまちた」

「姉様に頼まれたのか?」

 

「いえ、そう言えばおきるとお母たまが」

 

「ロージー!娘の仕込み方がエグイぞ」

 部屋の隅で娘の仕事を見守る保護者にクレームを入れる。

 

「申し訳御座いません。「攻撃は初手から急所へ」が大旦那様の教えですので」

 

 まるで悪びれないネコミミ侍女に苦笑いをしながら、目の前の「私ちゃんと仕事できたでしょ?エライ?エライでしょ?褒めて、褒めて」とご褒美待ちのネコミミ少女の頭を乱暴に撫で回し、ベットから抜け出る。

 

 上機嫌で母親の元に駆け寄る少女に底知れぬものを感じる。

 

「よく出来ました、レミーア。ただボディープレスはもう少し高さが欲しいわね。今度また旦那様で練習しましょうね?」

「はーい♪」

 

 自分達が仕える侯爵家の次期当主を実験台にしていたとは、恐ろしい親子だ。

 

 

 コンコン

 

「アリシアだ、そろそろ朝稽古の時間だぞ。準備は良いか?」

 グリフ家での朝稽古を楽しみにしていたのか上機嫌のアリシアが入ってきた。

 

「あっ!メスブタさんだ。おはようごぢゃいます」

 

 礼儀正しく挨拶をするレミーアだが

「レミー、メスブタってなんだ?」

 問題はメスブタ発言だろう。

 

「お姉たま達が「あいつ等はヒロ様を狙うメスブタよ!」て言ってまちた」

 

 レミーアの「お姉さま」というのはグリフ家の「侍女」の事だろう。

 

 ロザリアを見れば、冷や汗を流しながら明後日の方向を向いている。

 

「ロージー」

「は、はい」

「リズの耳に入る前に何とかしておけよ」

「しょ、承知致しました」

 

 頭に疑問符を浮かべたレミーアと、今後の対策で頭が一杯なロザリアのネコミミ親子を残し、「メスブタ?私がメスブタ?」と呪文の様に呟くアリシアを連れて、中庭とも呼ばれる地獄へと向かい歩き始めた。

 

「アリシア?」

「ん?何だ?」

「死ぬなよ?」

「そんなにか!?」

 

 すでに物言わぬ屍と化したヴァルヘイムを見つけ、これから始まる地獄を思い浮かべ絶句する2人だった。

休暇編の開幕です


新キャラもチョイチョイでてきます

レミーアちゃんはロザリアさんの娘です

父親は誰?とかは聞かない方向でお願いします


感想、ご指摘等ありましたら

宜しくお願いします

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