3 女神との戦争
『女神との戦争』
なんとなく最終決戦的なタイトルだったが、すでに勝敗は決していた。
結論から言えば
「圧勝だな!」
93戦75勝18敗
圧勝だった。
2割弱は負けているので完勝とまでは言えないが、まぁ圧倒的な勝利なのは間違いない。
なぜなら、俺の残ポイントは元の450倍以上の8179Pになっていたからだ。
トランプは、ポーカー、ブラックジャックから7並べ、ババ抜き
ボードゲームは、人○ゲームにモ○ポリー
テレビゲームは、ぷ○ぷよ、テ○リス、み○ゴルさらには○拳
フリースロー、PK、ストラックアウト、オセロに将棋にチェス
挙句にはパチンコ、スロット、ジェ○ガや黒ひげ○機一髪まで多岐にわたる戦いを繰り広げた。
最大の勝因は女神が脳筋だったことだろう。
『脳筋ちがーう』
負け犬の遠吠えを聞き流しながら勝負を振り返る。
やばかったのは直感系の勝負、特に『ババ抜き』だろう。
10戦して3勝7敗。とにかくババを引かない。
「どんなイカサマだ」と聞けば、『触ったら嫌な感じがするんだよ』だとか。
もうチートじゃん。ムキになって連戦したのも悪かった。
『黒○げ』も2連敗で無理だと悟った。
逆に簡単に勝てたのは知恵を使うゲームだろう。
『ポーカー』では使用済みのカードを考えず不可能な手を狙う。
『ぷ○ぷよ』では連鎖を考えずひたすら同じ色を並べる。
『脳筋じゃないんだよ?大事なことなんでもう1回言うよ。脳筋じゃない!』
女神様が駄々をこねていらっしゃるのでフォローしとくか。
「分かってるよ」
俺の言葉に目をキラキラさせて見上げてくる。寝転んで駄々をこねた姿勢のままで。
一見美人さんなだけに残念だ。
「勝因は女神様が脳筋なこと(だけ)じゃない」
『否定して欲しいのは勝因じゃないー』
勝負を楽しむことが最優先な女神様はハイリスク・ハイリターンな勝負がお好みらしく、勝算の低い高得点に賭ける傾向が強かったので、最後に『All・Or・Nothing』を認めさせ6連勝させてもらった。
それができていなければ、良くて300Pといった所か。
『あーあ、もういいんだよ。大分楽しんだから、良しとするよ』
何かを色々諦めたらしく女神様が起き上がった。
『さあ、ポイント割り振ろうか、君にとってはこっちがメインなんだよ』
8000Pも有れば、あれもこれもつけ放題だな。
『どうする?勇者か魔王か着けちゃおうか?かなりお勧めなんだよ』
「勇者?魔王?何それ?成れるの?」
『ギフトブックの最後の方に特殊ギフト・セットギフトっていうのがあるんだよ』
ギフトブックを読み進めていくと使用ポイントが跳ね上がっていく。
精霊の加護
弱:100P 中:150P 強:200P
特殊魔術適性
空間属性:150P 時間属性:150P 竜語魔術:200P 創造魔術:400P
・
・
・
勇者:2000P
勇者(強):2500P
魔王:2000P
魔王(強):2500P
・
・
在るな勇者も魔王もあとは、大賢者・英雄・龍皇・星守・etc
「勇者とか魔王とか何が違うんだ?」
『勇者と魔王は基礎能力的には肉体・魔力共に魔王の方が断然上なんだけど、勇者の方が精神・レア運・仲間運が良くて一瞬の爆発力は凄いんだよ』
「勇者か魔王を選んでひっそりと静かに暮らせるのか?」
『無理だね。選んだらそう成る為に必要とされる世界に転生するから、勇者と魔王はセットだから必ず敵対することになるし』
うわ~嫌だ~。勇者になっても魔王になっても心休まる日は少なそうだ。というか、大賢者も英雄もそれが必要な世界ってやばそうだ。
よし決めた。
「俺は勇者にも魔王にも成りません」
『じゃあ、何に成るの?』
「むしろ何にも成りません」
『はあ?』
「俺が望むのは、心安らかな平穏なる日々です。
その為に必要なのは、大切にしてくれる家族と可愛くて優しい幼馴染と
苦労せずに生きていける程度はお金のある家、それとイケメンでハイスペックな体
このぐらいが有ればあとは何も要りません」
『結構いろいろ要るし、何て言うか、サイテーだよ
はぁー、じゃあ、王様にでも成っちゃう?』
「馬鹿か?王族なんて生まれたときから公人なんだぞ
プライベートな時間なんてまるで無いじゃないか」
『あーもう面倒くさい、じゃあ、もうこれで』
選択されていたのは
勝ち組 弱:50P
魅了 弱:50P
人間関係 弱:50P
『『勝ち組』で生まれついての勝ち組。弱だから『ちょっと裕福』ぐらい
『魅了』で出会った瞬間から好印象。弱だから『結構カッコイイかも』ぐらい
『人間関係』なんでもないことで好感度が上がる。弱だから『ちょっとは上がる』ぐらい
こんな感じでどうなんだよ?』
「お~、いい感じだ。良過ぎず、悪過ぎず。
そんな感じで、俺自身の能力UPもお願いします」
『じゃあ、コレとコレとコレ』
全能力補正Lv3:300P
成長促進 弱:50P
容姿端麗Lv2:10P
「全能力補正Lv3?世界トップクラスだっけ?
あんまり目立ちたくないんだけど?
Lv1とかLv2なんかで良いんじゃないか?」
『Lv2だと強めの魔物が多い世界では簡単にバッサリ逝っちゃうよ?』
「当然Lv3だな。あとは転生する世界って選べないのか?」
『選べるよ。ちょっと高いけど1000Pなんだよ』
「なら、『剣と魔法の比較的安全で美人が多い世界』をお願いします」
『・・・君は、もうアレだね。言っても無駄なんだね』
当然だろ?何か問題でも?
『あとオススメだと、『前世の記憶引継ぎ』とか?』
前世の記憶引継ぎか~、テンプレだな。
たしかに中世並みの世界に現代の知識で行ければ有利だな。
ん?有利か?・・・問題有り有りだな。
「却下だ。記憶は引き継がない」
『お~、一応現地の文明への影響とか考えているんだね。誉めてあげるんだよ』
「いや、エアコン無しで夏を乗り切る自信が無い。
そして、コタツ無しで越冬できる気がしない。
知らなければ我慢できるかもしれないが、文明の利器を知っている状態では・・・」
『声が小さくなっていくのは、情けなさを自覚できているからなんだね』
「ほっとけ!あとは?ほかにオススメは?もう要るものは無いか?俺の平穏な日々を阻むものは?」
『んー、平穏に生きたいなら十分過ぎるぐらいだよ。コレで良いなら、そろそろ転生に移ろうか』
ギフトブックの内容を確認し
「よし、じゃあ、まぁいろいろ有ったが、いい人生に生まれ変われそうだ。一応だけど、ありがとう」
『ふふ、どういたしましてなんだよ。楽しい暇つぶしになったよ。
ミリー!。転生門に送ってあげて欲しいんだよ』
「はーい。転生門はこっちですよー」
いきなり出てきた新顔に驚く、どこから沸いた?
手を振る女神に見送られながらミリーとやらに付いて行く。
あれが女神ぽいものだとすると、部下のこいつは天使か?
>サイド 女神
なかなか楽しい暇つぶしが出来たよ。
しかし、6000P以上残して転生とは勿体無い。
ふむ、勇者と魔王は同時に着かんが、勇者と英雄は?
おお、同時取得可か。英雄と龍皇の同時取得もいけるな。
しかし補正項目のほとんどがダブるんで意味が無いな。
「何してるんですかー?」
「ん、ミリーか。ちゃんと送ってきた?」
「バッチリです。あとはギフトブック待ちでーす」
「そうか。しかし、勿体ないんだよ。ポイントが余りまくっているんだよ」
「本当ですねー。あ、記憶引継がないんですかー?」
「要らないと言われたんだよ」
「勇者も英雄も取らないんですねー」
「有名に成りたくないらしいんだよ」
「勿体無いですねー。これだけ有れば『勇者』『竜語魔術』『創造魔術』『精霊の加護』
『限界突破』『神具召喚』『前世の記憶引継ぎ』『ギフトの効果倍増』『不老』
まだ色々着けられますよー」
「あ、こら勝手にいじったらダメなんだよ」
勝手にチェック項目をいじるミリーに文句を言っている。
『あー、すんません。早くギフトブック送って欲しいんっすけど』
担当官から催促の連絡が来た。急いでチェック項目を元に戻していく。
しかし、ある項目が目に止まり、悪戯な笑みが浮かぶ。
「あー、このぐらいは着けてあげるんだよ。サービスだね」
ギフトブックをミリーに渡し転生門に持って行かせると。
誰も居なくなった部屋で満面の笑顔で呟く。
「まぁ、君は喜ばないんだろうけどね」
この時、いくつかの不幸が重なった。
・女神の『ドジ属性』は高かった。
・ミリーや転生門の担当者は女神が『全知全能』を外している事を知らなかった。
・『彼』が平穏な日々を望んでいることを女神しか知らなかった。
その結果、彼のギフトが決定した。
勝ち組 弱:50P
魅了 弱:50P
人間関係 弱:50P
全能力補正Lv3:300P
成長促進 弱:50P
容姿端麗Lv2:10P
転生先指定:1000P
限界突破:500P(直し忘れ)
前世の記憶引継ぎ:500P(直し忘れ)
ギフトの効果倍増:2000P(直し忘れ)
波乱万丈:0P
女神の悪戯と祝福:0P
どこかで
『いらねえ事しやがったな、あのクソ女神!!』
誰かの叫び声が聞こえた気がした。