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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
23/90

23 オークの集落

「向こうに複数の反応が有るな」

「それがオークの集落?」

「どうかな?ただ15体以上の反応が有るよ」

「分かってるメオ?森の中だからね。所構わず炎術使っちゃダメだからね?」

「大丈夫だって、森林火災になっちゃうもんね。任せてOK、OK」


 ホントかよ?お前の大丈夫程怪しいものは無いんだよ。


 


 俺がそれまで実力を隠していた理由を聞いてきたメリオラは 

「何か理由があるんだよね?力になるよ?」

 と目をキラキラさせながらにじり寄ってきた。


 きっと脳内で、仲間の悩みを解決する、頼りになる自分を想像してるんだな。


 下手な言い訳は、やたらと勘の良いこのボクっ娘には通用しない。


 そこで俺は

「実は俺、古の英雄の生まれ変わりなんだ。俺が力を使うと、それに反応して魔王が目覚めてしまうんだよ」


 適当な話で「そんな馬鹿なー」的に誤魔化す事にした。


 しかし

「そっか。それは危険な状況だね」

 なんでか信じられてしまった。


「馬鹿か?」「アナタ頭大丈夫ですか?」「え?今の冗談だよね?」

 そんな目で見てくる他の仲間達とは裏腹に、メリオラは

「やっぱり闇の魔王の復活のときは近いんだね。ウン、分かるよ。大丈夫、ボクに任せて!」


 ちょっと待て。

 何が分かったんだ?

 何が大丈夫なんだ?

 何をする気だ?


「ボクがキミを守ってあげるから」


 頼んでね~よ。


「いや、冗談だからな?ホントにただの冗談だぞ」


「良いんだ。ボクを危険な目に遭わせたくないんだろ?

 大丈夫だよ。どの道ボクは魔王とは戦わなくちゃいけないんだから」


 いや、確かに危険な目に遭わせたくないけど、誰より俺自身が遭いたくないんだよ。

 なんだよ、「魔王と戦わなくちゃいけない」て。

 どこに行きたいんだよお前は?


「メリオラ、よく聴け。冗談だ、冗談なんだよ」

「うんうん、分かってるよ。大丈夫、大丈夫」


 絶対分かってないよなお前?


 ちょっ、アリシアさん「あーお前もソッチ側なんだな」って目で見ない。

 マシウス君、君もゴミを見るような目で見ない。

 ナタリアさん、「あ、私も桃のシャーベットが良いなー」じゃない話に参加しろ。

 

「よしよし、キミが力を使わなくても良い様にボクがキミを守ってあげよう。

 あ、今日は疲れてるから明日からで良い?」


 誰でもいいから、コイツを止めろ。

 もしくは数十秒でいいから時間を巻き戻してくれ。



 そんな訳で、今日もメリオラは付いて来た。


「今日はギルドで依頼を受けなきゃいけないから」

 何とか追い払おうとするが

「じゃあ、ボクも行くよ。どうせ今日はギルドに顔を出すつもりだったし」

 なんとコイツもギルドに登録済みらしい。


「なら、私も一緒に行ってみたいなー。ギルドには登録しておきたいと思ってたし」

 ナタリアも付いて来るらしい。

 

 

 俺のギルドランクはDに上がっていた。

 メリオラのランクはCなのだそうだ。


「なに?C?Cだと?馬鹿なメリオラのくせに俺より上だと?」

「ホントにキミとは1回キッチリ話を付けなきゃいけないね」


 メリオラは学院入学の2年前から登録しているらしい。

 ギルド内にも知り合いが多く、何組かの冒険者達と挨拶を交わしている。

 その中にはギルドの支部長エルドラもいた。


 まだ昼前だというのに何本もの酒瓶を足元に転がし

「おう、メリオラじゃねぇか。久しぶりに顔出したじぇねぇか」

「そんなこと無いよ。5日前にも来たよ。飲んでたから覚えてないんでしょ?」

「あ?そんな事ぁ無ぇぞ。俺は毎日呑んでるぞ」


 まったく噛み合わない返答をし、ガハハハっと笑うその後ろに、無表情に有罪判決を告げるときを待つ副支部長マリアベルがいる事は、飲んだくれのドワーフ以外の皆が分かっていたが、誰も教えなかった。


 

 ナタリアのギルド登録が終わると、俺、メリオラ、ナタリアの3人のパーティ登録をする。

 パーティランクはC。パーティランクはメンバーの平均ランクの1つ上になるらしい。


 依頼の受諾処理も行ってもらう。相手はいつものリューネさんだ。

 

 パーティメンバーを確認したリューネさんの目に妖しい光が灯る。

「今日はアリシアさんは行かないんですか?」

「ああ、なんか用事が有るらしいんで」

「そうですか(あのオンナはいないのね。でも・・・・)」


 何かをブツブツ呟いているが、きっとこのメンバーで大丈夫か考えてくれてるんだろう。 


「はい、受諾処理しました。気を付けて下さいね」

 受諾済みの判の押された依頼票を返される。


 何かを考えていたのか、俺をジーっと見ていたリューネさんがチョイチョイと手招きをする。

「ん?」


「たぶんですけど、この依頼が成功したら、昇格試験依頼が出せれると思いますので頑張って下さい」

 おお~。俺もついにCランクに昇格か?

 そんなことを思っていると、リューネさんの顔が近づいてくる。

「Cランクに昇格したら、お祝いをしましょう。どこかに食事にでも行きませんか?奢っちゃいますよ♪」

 そんな耳打ちをするとニッコリと笑いかけてくれた。


(惚れてまうやろ~!そんな笑顔で、そんな事言われたら、惚れてまうやろ~~!!)

 何とか平静を保つために、心の中で叫ぶ。


 こぼれそうになる笑みを何とか噛み殺し、カウンターを後にする。


 そんな俺を出迎えたのは

「早く、早く行こうよ」っとはしゃぐメリオラと、少しむくれたナタリアだった

「何?」

「別に」

 俺の質問に、不機嫌そうに答えプイっと顔をそむけ、以後黙り込んでしまった。


 あれ?エ○カ様?



 俺達の受けた依頼は

『オークの集落の調査     推奨 Cランク

 平原西の森に出来たと思われるオークの集落の調査


 最近平原西部にてオークの目撃情報が急増している

 西部の森の中にオークの集落が作られた可能性がある

 その集落の規模等の調査をお願いしたい


 報酬: 銀貨75枚(調査の度合いにより増減)

     追加報酬 金貨1枚:集落の壊滅(規模により増減)』


 というものだ。


 

 森に着くと、早速オークの1団を発見した。3体だ、まだこちらには気付いていない様だ。

 このまま後を付けて集落まで案内させよう、と考えていたところ。

 

「喰らえ、正義の爆炎」


 馬鹿がやらかした。



「お前、もうホントいい加減にしろよ。何しに来たか分かってる?」

「分かってるよ。オーク共を焼き払いに来たんでしょ?」

「違う!オークの集落の調査。ちょ・う・さ。分かるか?殲滅は状況を見て」

「えー。最初から殲滅のつもりでいたほうが楽じゃない?」

「あのなぁ、俺達の手に負えない規模だったら?上位種でもいたら?」

「オークキングぐらいボク等の敵じゃないさ」


「手下を捨て駒に逃げて、また新しい集落を作るぞ。

 今度はそこで人里に被害が出るかもしれない。その責任まで負えるか?

 集落を作るようなモンスターは後々の為に完全に潰さないとダメだ。

 下手に騒いで、逃がしちゃいけないんだ」

「ゴメン。気を付けるよ」


 コイツは馬鹿で問題児だが、ちゃんと話を聞き自分を省みる事ができる。

 

 ただ

「オーク発見!とつげ、ギュア」

 突撃しようとしたところを、俺に服をひぱられ妙な声をあげ、引っくり返る。

 

 メリオラの反省は長続きしない。

 

「お前には学習能力ってもんが無いのか?」

「ゲホ、ゲホ、ゴメン忘れてた。なんかこう、燃え盛る正義の火が」

「ナタリア、こいつの正義の火を消してやってくれ」

「フフ、もう2人とも馬鹿やってると見つかっちゃうよ?」 


 ちょっ、俺をコイツと一緒にすんな。



 その後そのオークの一団の後を付け集落が有ると思われる場所に向かう。


「ん?おかしい。向こうに有った反応が減ってる?」


 俺の【サーチ】で先程まで感じていた15以上の反応が今は9しかない。

 いや、更に減って8だ。


「嫌な感じだ。急ごう。場所は分かってる」

 

 隠密行動でオークの後を付けて来たが、場所が分かった以上もう案内は必要ない

 オークに駆け寄り瞬時に切り捨てる。


 周囲への警戒のため【サーチ】を起動しながら、今も反応の減っていく場所に向かう。

 

 

 俺達がその場所を視認出来る位置まで来たときには、反応は3になっていた。

 

 転がるオークの死体。

 その場から立ち去る3つの人影。


「オークじゃない」

 立ち去る人影のシルエットはオークのものでは無かった。

 人に近いスラリとした体型、長い髪、褐色の肌。

 

「ダークエルフ?」

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