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望むはただ平穏なる日々  作者: 素人Lv1
学院 編
20/90

20 学院地下迷宮

「ボクのコブシが真っ赤に燃える!お前を倒すと猛って吼える!」

 

 どこかで聞いたセリフだな?

 お前、もしかして転生者か?

 

 某ガン○ムファイターの決めゼリフに似たものを叫びながら、ミノタウロスに突っ込んで行く仲間バカ


「燃えろ鉄拳!唸れ豪腕!

 秘奥義インフェルノストラーイク!!」


 真っ赤な炎を纏った右腕がミノタウロスを貫く。

 腕を引き抜く反動を利用し、回転しながら飛び退く。

 右腕を水平に持ち上げ纏った炎を掌に集め、握り潰しながら振り払う。

 同時にミノタウロスが炎に包まれ倒れる。

 涼しい顔で振り返り決め顔を向けてくる(←ここまでがセットなのだろう)。

 

 勝ち誇ったようなドヤ顔のメリオラに仲間から温かい声が掛けられる。


「焦げ臭い」

 焼け焦げたミノタウロスの臭いに顔をしかめたアリシアが端的に。

 

「室内で炎術全力とか、ないわー」

 炎の熱で汗をかいているナタリアが迷惑そうに。


「無駄な動きが多すぎます。いつも思ってたんですが技名を叫ぶ必要有りますか?」  

 冷静に分析したマシウスが理解できないっといった風に。


 それぞれの見解を述べる。


「まぁ、演出としては、良い出来じゃないか」

 多少は評価してやらんと、また拗ねるな~っと俺が言うと、他の3人の意見に泣きそうな顔をしていたメリオラの顔がほころぶ。


「要らない演出だけどな」


「ウワーン、皆のばーかーー」


 泣きながら走り去っていく彼女を皆で見送る。



 

 フェルディール学院が他の学園より優れている点、その中の1つが『地下迷宮』の存在だ。


 学院の地下迷宮は本物を模して古代に作られたとされる偽者だが、地下50階の本格的な迷宮となっており、学生もパーティを組めば誰でも入ることが出来る。


 なぜモンスターが湧くのか?

 なぜ倒されたモンスターや冒険者が消えるのか?

 なぜアイテムが出現するのか?

 地下迷宮は古くから研究がされており、かつては複製が出来るまで解析されていたが、現在ではその技術のほとんどが失われ、真相の究明には至っていない。


 そんな地下迷宮の地下17階に俺達はいる。


 学院の地下迷宮は学生の安全の為に、緊急避難用の転移魔法の封入されたアイテムが渡される。

 緊急時に避難用アイテムを使用できるようにする為、地下迷宮の挑戦には4人以上のパーティである事が必須とされている。


 そんな地下迷宮への挑戦を持ちかけてきたのはアリシアだった。

 

 自身のスキルアップに余念の無い彼女は、学内にて実戦経験の積める地下迷宮に興味津々だったのだが、1人では迷宮に入れない、足手まといになる相手とはパーティを組みたくない。そんな思いが有り、これまで挑戦できずにいたが、我慢できなくなり俺を誘いパーティの結成に踏み切ったのだった。


 パーティメンバーの募集の張り紙に目を通し、自らも募集を出し、めぼしい人物には声を掛けた。


 その結果、出来上がったのがこのパーティだった。


 そのメンバーは

 実は凄腕魔法士だった小動物系少女『ナタリア・ラスベル』

 錬金術師の卵で地下迷宮の解明を志す天才少年『マシウス・セディアム』

 元気爆裂なハイテンションボクっ娘『メリオラ・エレオス』

 いつの間にかパーティリーダーとして登録されていた『俺』と『アリシア・レイアス』

 の5人だ。


 ナタリアとは入寮日から知り合いで、少し天然の入った暴走気味な少女だとは思っていたが、実は魔法科でもトップクラスの魔法士である事がしばらくしてから分かった。

 治療魔法、補助魔法が特に得意らしく「パーティにまずは必要な人材」っとアリシアに拉致されてきた。


 マシウスは13歳の天才少年だ。

 基本入学は15歳からの学院に複数の理事から推薦状を貰い入学してきた。

 「いずれはボクが地下迷宮の真相を解読して見せます」とパーティの募集に応募してきた。

 「足手まといは帰れ」とバッサリ切ったアリシアに、五連魔法で自分の有用性を示して見せた。


 メリオラは所謂イタイ子だ。

 どうイタイのかと言えば、厨二病を発症している。しかも末期だ。

 自分は特別な人間の生まれ変わりと信じて疑わない。

 授業の模擬戦でアリシアに完敗しても、自分が特別だと思っていたのは勘違いではなく、アリシアも特別な存在の生まれ変わりだと思ったらしく、以来アリシアを『心友』と呼び慕っている。

 ただ、炎術を組み込んだ独特の体術は貴重な戦力だ。


 アリシアは最近ますます面倒になっている。

 暇が有れば稽古、休日になれば修行と称し、俺と戦おうとする。

 どうやら『剣王』を目指しているらしく、俺から何か少しでも『剣皇』の技を盗もうとしている様だ。

 地下迷宮でも俺の戦い方を観察している。だが残念ながら俺の基本は『剣皇流』では無く『バートン流』だ。

 いずれ、きちんと話をつけなければならないか? 


 このパーティはイロイロと異常だ。

 普通ならば1日に進めるのは3~5階程度らしいのだが、2日目には15階に辿り着いていた。


「今日中に20階まで行こう」

 アリシアの意見に賛同したメリオラが張り切って17階のボスのミノタウロスを瞬殺した。


 


「ウワーン、皆のばーかーー」

 心無い仲間の言動に傷つき走り去ったメリオラを誰も追わない。


 なぜなら

「しばらく走ったらスッキリして帰ってくるでしょ」

「そうですね。そのうちなんで走っているのか分からなくなって戻って来るでしょう」


 なぜなら『馬鹿メリオラ』だからな。


 だが、心配事もある。

「でも、アイツ1人にして大丈夫か?」 

「大丈夫よ。なんのかんので実力は折り紙つきだから」

「じゃなくて、アイツ馬鹿メリオラだぞ、やらかすんじゃないか?」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「先に行っちゃおうか?」

「賛成だ」

「面倒ごとが起きる前に下に行きましょう」


 なんとも仲間思いの連中だ。

 哀れなメリオラに心中で合掌し、俺も先に進む事にした。


 しかし、俺達の予想を上回る速さで、問題児メリオラは帰ってきた。

 

「たーすーけーてー」


 砂埃を巻き上げながら、大量のモンスターを引き連れて。


「「何やってんだ(してるの)お前(あなた)!?」」



 ホント勘弁して下さい。

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